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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、誰よりも優しくてカッコイイ人だろう
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風の勇者 フロウ

「カ、カルカトスさん!」


 そう声をかけられ、声のする方へ顔を向けると、そこには驚いた事に


「君は……フロウさんだったよね」


 近代の風の勇者その人だ。


 真っ白の肌に、柔らかい緑の髪は肩甲骨の辺りまで伸びている。


 身長こそ低いことは無いが、強いて言うなら私とミランの間だと言ったところか?


 緑色の目はいつか知った『エメラルド』と言う宝石をはめ込んだかのように輝き、腰にさしている聖剣とおぼしき剣の柄にも同じ気配を感じた。


 そんな彼女か私にどんなようだろうか?単身だし。


「あのっ!……私!ファンなんです!あ、握手……お願いしますっ!」


 真っ白の頬を今度は真っ赤に染め、下を向き、手をこちらへ向ける……傍から見ればプロポーズにすら見える構図だ。


 だが、私としても彼女は実は週間冒険者から手に入れた情報からではあるが、1目置いている。


 そんな未来の英雄とも言える彼女に握手を求められるのは表情に出さないように努力するが……嬉しい。


「こちらこそ、是非」


 そう言って握手に応じる。


 自分の知らない間になかなか有名人になっていたらしい。


 なんというか……夢に近づいていると、自覚が持てるものだ。


「あっ、ありがとうございます!」


 嬉しそうに顔を上げ、両手で握り、少し力が加わる。


「私の事、よく知ってましたね」


 マイナーな方だと自負している。


「そりゃあ!もちろんですよ!世界初の進めば進むほど難易度の上がる巨大なダンジョン、ネルカートの迷宮を単身で進み、つい最近には1人で30層の守護者を倒し、また新しく守護者を見つけた……すごいことですよ!」


 私がいかなる人間かをスラスラと並べ、その度に繋いだ手を上下にブンブンと振る。


 年齢は私とそう変わらない16歳、生まれた歳は同じだし、彼女の方が少し早く生まれている。


 というか、もうすぐ私も誕生日か……


「……あ、す、すいません!つい夢中になっちゃって……そ、その」


 オロオロとした様子であっちこっちを向いている。


「ははっ、ありがとう、私も君のことは知ってるよ……風の勇者さん?」


「!ご存知でしたか!」


「まぁね、同じギルドにいる訳だし……なんというか、嬉しいからね」


「嬉しい?」


「私の……強敵が現れたんだから」


 そう、獰猛な笑みを仮面の奥で浮かべると


「……流石の空気ですね……ふふっ、でも私だって負けはしません……なぜなら、勇者だから」


 人差し指を立て、決め台詞をひとつ放たれた。


「……なるほどね……あ、そうそう、私たちは同い年なんだ……敬語なんて使わないでくれよ」


「あ、そうですね……なら、私も普通に話すわ、よろしくねカルカトスさん」


「えぇ、よろしくお願いします、フロウさん」


「……ふふっ、私たちのパーティーと大会でぶつかることがあったら……ふふっ、負けませんよ?」


「ははっ、全員まとめてかかってくるといいさ……今までもそうしてきたらかね」


 そう言うと驚いたような顔をした後納得したように


「……えぇ、もちろんですよ」


 フフフと不敵に笑い合い


「そうだ、魔術文(メール)交換しませんか?」


「あ、いいね、そうしようか」


 ギルドカードを合わせて、魔術文を送れるようにする。


「ふふっ、ありがとうございますね」


「えぇ、それでは」


「えぇ、またお食事にでも行きましょうね」


 手を振り、そんなお誘いを受けて宿へ帰る。

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