アルトリートの提案
「……あ、来てくれたかい、カルカトス」
「はい、何かありましたか?アルトリートさん」
「うん、昨日シルフィールさんから聞きましたが……この森を出るそうですね」
「はい」
「……なら、1つあなたにプレゼントがあります」
「……プレゼント?」
「はい、あなたは精霊が心を読めることを知っていますか?」
「……はい、本の中には心を読んで願いを叶えるなんてことが書かれていましたから」
「それです、今から街に出るあなた……いつも通り精霊と会話をしても構いはしません……ですが、そうなると、何も知らない人からすれば虚空に向かってひたすら声をかけている頭のおかしい男にしかなりません」
「……た、確かにそうですね」
「そこで、彼らにはもう教えておきましたが『読心術』というスキルがありまして、それの使い方を教えていました
今後は、心の中で思うだけで会話がある程度は成り立つ事でしょう」
『こういうことですか?』
そう、心の中で質問をする。
「はい、そんな感じです、どうかな?これなら難は無いと思うよ」
「……えぇ、重ね重ね、ありがとうございます」
「うん……あとは君が約束を未来永劫守ってくれればそれだけで十分だよ」
「……はい、しっかりと守りますとも」
「……なら安心だ、さぁ、もう遅いし……明日には出るつもりだね?」
『読心術』で読まれたのだろう。
「はい、もう15歳にもなりましたし、やっと冒険者登録ができる歳になりました」
「うん、なら、またここに戻ってきた時にいいお酒を用意してとくよ」
「お酒……ですか」
「まだ、飲んだことないだろう?」
「ま、まぁ、そうですね」
「なら、楽しみにしておくといいよ、人里のお酒なんかよりも何倍も美味いからね」
そう熱く語るアルトリートさんをみて、微笑みながら。
「……楽しみにしてます」
そう言っておく。
そのあとはいつもの寝床に戻って、星を眺め……
「明日が……俺の旅立ちの日だ」
その日は楽しみすぎてなかなか寝付けなかった。




