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9.白狼学園入学試験(前編)

ブクマ・評価ありがとうございます!

「「今日は入試ですね、頑張って来てください」」


 揃った声で送り出してくれるのは狐人のオーロとプラータ、オーロは左目が金、右目が銀のオッドアイ、プラータはその逆だ、そして――


「ん、頑張って」


 ぶっきらぼうな感じだが頼りになるテンカ、護衛として買った奴隷ではあるがいろいろと手伝ってくれるし、鍛冶にも興味があるみたいだ、裁縫はやろうとしたら生地が燃えたので出来そうになく、がっくりと例のポーズをとっていた。


「おっしゃジン行くか」

「うん、みんなもお店よろしくね」

「「行ってらっしゃいませ、ご主人様」」

「ん、行ってらー」


 入試は貴族も平民も関係なく同じ場所で受けることが出来る、その内容は武術か魔法で模擬戦の試験を受けた後に筆記試験、面接は無し。

 

「受験者ですか? 身分証明書を提示してください」


 白狼学園の校門にいる受付の人に冒険者証を渡す。


「リジル・アール・クレイモア様と、ジン君……はい確かに受け付けました、お二人とも既にEランクの冒険者なのですね……、あ! もう大丈夫ですこの奥の白狼のエンブレムの下から建物に入ってください」

「ああ了解した」

「ありがとうございます」


 奥に進むと大きな扉の上に白狼のエンブレム、つまりは建物の入り口があったので中に入ると広い玄関ホールにはすでに数千人もの受験生が集まっていた、分かりやすく貴族が数人集まって偉そうにしているグループや、女子が集まるグループ、獣人があつまるグループ、もちろん一人で試験開始を待つ子など各自それぞれだ。


「ジン、面白そうなのいるか?」

「これといって……あ? 何あれ……大きな斧が歩いてる」

「はぁ? 斧?」


 そう斧だ、ラブリュスとかいう左右対称の両刃の斧、柄は140cmはありそうで刃まで入れると200cmほど、人込みの中で斧が歩いているのだ。


「確かに……斧だな」


 それ(・・)が斧が人込みを抜けるとようやく状況が分かった、ケット・シー身長80cm程度の猫が大きな斧を担いで歩いていたのだ。


 女子がカワイイとか小さいとか言ってるのが聞こえるが、そのケット・シーはこっちに気が付くとテトテトと歩いて来た。


「お前がオルタ・ビスタの店主か、昨日オイラの斧を調整させてもらったんだけどすこぶる調子がよくってな感謝する」

「うん、昨日はたぶん僕が修理の仕方を教えた人が修理したんだね、振ってみた?」

「ああ丸太で試し切りしたがスパッといった、いつもより手ごたえも軽かった気がするニ……な」

「そうなんだ、だったらこの後の実技試験のとき……ごにょごにょ」

「ニャ! 本当か! じゃあまた後でだニャ!」


 斧が走って控室(ロビーホール)の前の方に行った、背が低いから前の方に行かないと係の人が見えないからだと思う、そして興奮したりするとニャ口調になるようだ。


「テンカが修理したなら……たぶんあれだよな? 驚くだろうな」

「うん、それにね……あの子たぶん強いよ? 物理攻撃ならこの数千人のなかでも断トツだよ」

「まじか、だったらチームに誘うのもいいかもな」

「そうだね、あ! 門が閉まった、始まるのかな?」


 門が閉まると控室前方に係の人、たぶん先生だろう人と白狼騎士団の隊員が出てきた、ちなみに受験生の最前列に斧がいる……あ、名前聞き忘れた。


「よく集まってくれた、私は実技試験の監督をする白狼騎士団副団長のベアーだ、実技は我々の団員が、筆記はこの学園の教員が担当する」


 そしてざわつく控室(ロビーホール)白狼なのに熊、そして名前もそのまんまベアー。


「熊だ」

「熊だな」

「ち……熊かよ

「おでこに月みたいな白いのがあるな」

「大きい熊さんですね」

「獣人が副隊長か」

「白狼に熊……」


「静かにしたまえ、この国の法の序文を忘れたのか? 『(なんじ)人であると同時に獣、汝獣であると同時に樹木、汝樹木であると同時に精霊、汝精霊であると同時に人』……だ、種族はどうでもいいだろう」


 一部貴族の子は納得いかない顔をしているが試験に響くのを恐れてか何も言わない。


「さぁ修練場にいくぞ、今年の白狼学園志望は3791人、今日来ている団員は100人しかいない、午後の筆記試験に間に合わなくなるぞ?」


 その一声で控室は静まり返り、修練場にぞろぞろと移動する。

 

 ――着いた人から随時白狼騎士団の団員と模擬戦を開始していたようで既に数百人かは受け終わっているらしい、さっきの斧は波に飲まれて上手く進めることが出来なかったのか、まだ模擬戦はしていないようだ。

 

 行列に押されてようやく修練場に到着した俺たち、そこでは回復魔術師はどう能力を見せればいいのか? という問答がされていた、確かに回復も大事な技能であるがこの場では試しようがない。


「あらぁ、でしたらどのように試験すればいいのでしょうかぁ?」

「ぐぬ……もう少し待っていてくれ」

「ですがそれはだれかが手傷を負わないといけませんよね、だれもそうならなかった場合はどうするのですかぁ?」

「その時は冒険者ギルドにでも出向いて怪我人を見つける」


 体の起伏が大きな受験生は一時待機らしい。


「じゃ、次は私ね!」


 そして次は体の起伏が乏しい受験生が修練場に歩を進めドヤっと仁王立ちをした。


「君は攻撃魔法が使えるということだな? では相手になろう」


 白狼騎士団の団員がそういいながら構える。


「あ……ごめんな、もう終わったぜ? 試験官の人もさ、もういいだろ?」

「な……なんだお前は、体が動かないぞ」

「あぁん? そんなことも分からないのか、アタシはジャマー……妨害術士だよ」

「……そうか、妨害術士ジュジュ、実技は合格だ」

「おぅそうかそうか、あんがとなー」


 そういうと試験官への拘束魔法は解け、ため息を吐きながら立ち上がった。


「恐ろしいな……騎士が動けなくなる拘束力とは末恐ろしいが味方であれば頼もしいな」


 熊の人がそう呟いていた、だがまだこれで試験が終わるわけでは無い、そんなとき個人的注目度ランク断トツ一位の斧の猫が修練場にようやく出てきたのだ。


「次はオイラの番だニャ! 指名してもいいかニャ? オイラはランパートさんでお願いしたいニャ! うニャ―」


 身の丈の倍以上もある大戦斧を構えるケット・シー、その名は百獣の王から賜った『シンバ』その小さな体に大きな力を宿し数多の獣を統べる猫獣人である、それは体の大小? 武具の大小……? そんなものは関係ない――そしてこの試験では攻撃力対防御力、それが見ることが出来る……その予定であった。


 獣人は人よりも力が強い、樹人は人よりも体力が多い、魚人は人よりも素早く動くことが出来る……その常識から強さを測るのはどうしようもない摂理なのだ。

 

「なぁオイラはランパートさんと模擬戦がしたいんだニャ!」

「無理だ、ランパードさんは現在北方の調査任務中だ、北方では前回の赤月で出現した魔物がまだ残っているのだ、代わり私、ベアーが相手をしよう」

「ニャ? 副隊長ニャ?! 願ったりニャ」

「ふ……では相手をしてやろう、当ててみるが良い、当たらなければどうということは無いのだ」

「フニャニャ!?ごり押し盾タイプじゃないのかニャ!?」

「あぁそうだ、私は白狼騎士団の瞬熊(しゅんゆう)、素早さと持久力がなくては入団のできない白狼騎士団の副隊長、『瞬熊』は私の事だ」


「ふニャーそうかニャ、だったらこちらも獲物を使わせてもらうニャ、死なないでほしいニャ」


 そう言いながら本人の意志とは関係なく淡く赤い光に包まれるラブリュスがひときわ大きく見えた。


ベアー副隊長さんの装備はバスターソード


回復魔術(裂傷、欠損)は同じような治療をこなした回数で回復力が変化します


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