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8.オルタ・ビスタ王都支店

ブクマ・評価ありがとうございます。

 土地を手に入れた俺たちはとりあえず秘密基地を土地に置く、これで当面(と言ってもほんの数日)の寝床は確保をした、リジルは貴族だけどもうこの基地に慣れてるから問題は無い。そして3日後には以前までに回収していた木材、石材、鉄などを使って地上3階地下1階の家を建て、クレイモアで作った鍛冶設備ももちろん地下に設置した。

 

 テニスコートほどの広さがあるリビングは2階、居住は3階で5畳くらいの小部屋を12部屋用意した、1階は店舗用の大きな扉の左横に住居部である2階につながる階段を用意した。


「お~! でっかいの出来たなあぁ」

「まぁまぁでしょ、ホントならもっとやれたんだよ?」

「いやいやいやいや……これで十分だ、ここに何人来てくれるかなぁ……まだ俺ら受験すらしてないのにな、クランとかの拠点にしてもよさそうな大きさだよな、それで?これをこのあとどうするつもりだ? 店なんて言っても学園もあるし店番できないだろ」

「開けるときにだけコソっと営業するくらいで、俺が作ったりしてリジルが売ったり」

「めんどくせぇな、誰か雇わないのか?」

「いきなり子供に雇われてくれる人なんていないでしょ、まずは実績からだよ」


 ◇ ◇


 ――王都に来て1か月がたち受験の1週間前の頃


「はいはいは~い、剣の調整はこっちですよ」

「防具の調整受付はこっちだ、おっとそのスケイルメイルを直すんなら同じ素材の鱗を持ってきてくれよ」


 居住層、大通りから数本外れたところにあるこの通りにしては大きな店、本来であれば人通りの少ないその往来にはたくさんの人が訪れていた。


「剣や防具、その修理や調整は『オルタ・ビスタ王都支店』でいかがでしょうか?!」


 武器や防具、その他冒険雑貨を高品質で補修、販売する『オルタ・ビスタ王都支店』そこには連日様々な客が押し寄せていた。

 気まぐれで営業するその店は冒険から帰って来た冒険者が飲みに行く前にフラッと営業中かどうか見に来るスポットになっていた、そして営業中となるとその噂が広まり冒険者が押しかけてくる。


「今日の販売は薬品の日か……お! ポーションあるじゃないか3本くれ」

「はいよ、銀貨1枚と小銀貨5枚だ」

「ほらよ、これがあると品質がいいから安心して冒険が出来るよ、毎日営業してもらえると俺たちも助かるんだがな」

「ならおっさんが店番するか?」

「はっはっは、そりゃ無理だな、んじゃまたくるぜ」


 作る時間はほとんどかからないから在庫は問題ないけど売る時間は学園に入ったらもっと無くなる、修理に関しては俺がやらないといけないけど販売はそろそろ考えないといけないな。


「じゃ俺は魔物避け1袋」

「はいよ、小銀貨3枚だ」

「こっちはマナポーション1本たのむ」

「はいよ、銀貨2枚だ」

「修理お待ちの方、剣とスケイルメイル終わりましたよー」

「剣はこっちだ、やっぱり腕がいいなオルタ・ビスタなんて伝説の名工の名前見たときはどうかと思ったが名前負けしてないな」

「スケイルメイルは俺だな、オルタ・ビスタっていうとアレだろ?詩人が歌う初代王の叙事詩」

「そうそれそれ、パーティメンバーだったんだよな、その中で物づくりを一手に担ったってやつだ」

「ちょっとどいてくれ、俺も買い物したいんだからよ」

「ん? 悪い悪い、それじゃまたな」

「よし、やっと俺の番だな、ここはミスリルの剣も直せるのか?」

「はい、材料さえあれば問題ないです……あれ? この剣に付与されてる魔法陣間違ってません? サーキットもいびつだし」

「そうなのか? でもちゃんと斬撃は飛ばせるんだがな、とりあえず調整してくれ、ミスリルはこれで頼む」

「了解です、5分待っててくださいね」


 そこそこいい素材なのでちゃんと地下の工房で作業するため奥に走っていると後ろから何か聞こえた。


「5分って……ミスリル素材なのにそんなすぐ終わるわけが……」


 ガチャ、また誰か入って来たみたいだ、リジルが応対してくれるだろう。

 

 ◇ ◇

 

「はい、出来ましたよ、斬撃を飛ばす魔法陣は効率の悪い回路になっていたので書き直しました、サーキットの方も魔力循環と吸収の効率が悪くなっていたので調整しました」


 明らかに先程よりも明るく輝くミスリルの剣をお客さんに渡した。


「な……なんだこれは」

「どうしましたか?」

「これはどうなってるんだ?」

「あれ?不具合ありましたか?」

「いや……そうじゃないこれは国王からA級冒険者になったときに頂いた物だ50年ほど前にドワーフから献上された一振りと聞いていたが」


 いじくっちゃまずかったかな?


「国宝になるぞ、これは……しかも5分でこれか」

「あら? A級冒険者『キマイラ・スレイヤー』のクルエルじゃないの」

「あ? あぁカシアか」


 話しかけてきたのは商業ギルドのカシアさんだった。


「この剣を見てみろ、貴族に取り込まれない手段を用意した方がいいぞ」

「……そうね、さすがペルーダ・スレイヤーのジン様ね、まぁ元々そのつもりで来たんだけど」

「ペルーダ? それってクレイモアの赤月で出てきたバケモノのことだろ? なんでこいつが?」

「この子がそのペルーダを一刀両断したのよ」

「な!?」

「それでね、今日は商業ギルドお抱えにするか、商業ギルドの人間をここに派遣してすこしでも貴族の影響を減らした方が良いと思って来たの」

「ああそうだぞジン、俺がさっき話を聞いたんだけどなギルドに関わってさえいれば貴族の影響は間違いなく減る、なんせ手を出せばギルドが相手をしてくれなくなるんだからな」


 A級の人、まだ固まってるけどいいのかな。


「う~ん、なら派遣がいいかなぁ、薬品は常時販売して装備の修理はいったん預かってやれそうなときに作業って感じで」

「俺もそれでいいと思う、それでいいんだろ?カシア」

「ええ問題ないわ、少し若い子だけど読み書き接客は問題ない子を2人派遣するわ、いまはギルドに住んでるんだけどここって住込みは大丈夫? それなら家事とかもやってもらえるんだけど」

「どうだろ? 部屋ならたくさん空いてるけど」

「どんな奴なんだ?」

「狐人族の双子の姉妹ね、あなたたちより4つ年上よ、誘拐されて奴隷に落とされた犯罪奴隷をギルドで社会復帰支援として雇っているの」

「奴隷か、それってどうなの?リジル」

「本人が犯罪をしたわけじゃなければ見受け金を返済できれば一般人に戻れるからな、まじめに働くと思うぜ」

「じゃあいいんじゃない?家事もしてもらえるんなら学園と冒険で家を空けることが多い俺たちは助かるよ」


 そしてやっとA級の人が復活した。


「護衛が必要じゃないか?」

「確かにそうね、貴族は何もしてこなくても悪党はいるものね、店番二人が女の子だし」

「だから借金奴隷あたりを雇うのがいいと思うんだが、さすがに誘拐されるような犯罪奴隷だと役に立たないからな」

「また奴隷か」

「あぁ奴隷だな、それが一番安全だ」

「契約には守秘義務や雇い主の害になることを禁じる魔法が使われるからね、なんなら同行してあげるけどどうする?」

「俺はいいぞ、王都の奴隷法は人道的だ」

「なら、とりあえず見に行ってみようか」


 ◇ ◇

 

 ということで奴隷商に着くとカシアさんが従業員に声をかけ、しばらくするとふっくらとした白髪のおじさんが出てきた。


「これはこれはカシア様お久しぶりでございます、それにクルエル様ですね」

「ええお久しぶり」

「ああ」

「後ろのお二人は……最近噂のオルタ・ビスタの?」

「ええそうよ、その件で今日はここに来たのよ」


 その流れでかくかくしかじかと要件を伝えてくれるカシアさん。


「ということなのよ、だからまずはウチの子2人は出向することになるけど契約上の問題は無い?」

「そうですね、実務面の作業はほとんど同じなので問題ありません、それで護衛が出来る犯罪奴隷ですね」

「ああそうだ、最低でもごろつき数人は排除できないと意味がないからな、魔魂値1000以上の奴がいいだろうな」

「工房兼商店の護衛ですね……亜人種でもいいんですか?」


 ようやく話がこっちに来た。


「狐人も雇う予定ですしね、獣人でも全く問題ないですよ」

「獣人ではないのです」

「それじゃドワーフ? 森人?」

「ロギです」

「ロギ?何それ?リジルは知ってる?」

「う~ん……どこかで聞いたことがある気がするんだけどな」

「おっさん、ロギなんているのか? 珍しいな」

「ええ、観賞というか見世物用の哀願奴隷として従事していましたがその家が資金繰りの悪化から手放しましてね」

「あの子爵家ね、それにしてもロギなんて……エルフよりも珍しいじゃないの火精霊と人の亜人じゃないの」

「その通りです、値は張りますが火魔法が使え魔魂値は1730になります、ロギが宿る建物には火事が起きなくなるのでさらに有用です」

「店主、それはあまりにも高くなるんじゃないのか?」

「おそらく大丈夫だと思いますよ? オルタ・ビスタの土地を借りようとしたときに1年分を即金その場で支払えそうだったという情報が入っておりますので」

「……ったく、奴隷商は本当にどこに耳があるかわからんな、それでいくらなのだ?」

「金貨30枚でございます」


 焼き鳥30万本、もう良く分からない単位になってきた日本のお金だとたぶん3000万円くらいだな、前世からもお金を持ったことも無かったから金銭感覚ってやつが分からない……。


「ジンいいんじゃないか? まだペルーダの支払い終わってないんだろ?」


 そう、ペルーダの素材は一か月に金貨2枚、それを3年かけて振り込まれることになっているのだ、なのであと1年間と1回の13回は金貨が振り込まれる、つまり24枚。


「そうだね、ロギっていうのは良く分からないけど強い人なら安心だからね」

「お前らその金額マジで払えるのか?」

「全然余裕だぜ、なぁ」

「うん、個人資産だけじゃなくて共同資産もあるから全然余裕だよね」

「は……はぁ……お前らはやっぱり桁違いだな、ロギ、買うといいさ」

「私もいいと思うわよ、どうせお店の売り上げもこれでまた上がるでしょうからね」

「では一旦面談をお願いします、これはジン様とリジル様だけです」

「わかってるわ」


 応接間に通され、しばらくすると小さい女の子が入って来た。


「ジン様、リジル様、こちらがロギ族のテンカでございます」

「え~と、俺たちは商売をしていて、これから学園に入学する予定です、それで俺たちがいないとこに店が襲われないように護衛をしてもらいたいんだけど、お願いできるかな?」

「ん」

「いい……のかな?」

「たぶんそうだろうな、これがロギ……か」


 火の魔素に満ち溢れている、体格はだいぶ小さいけど強いことはよく分かる。


「それじゃ、これからお願いしていいかな?」

「ん、月の力を感じる、こっちからお願いしたい」

「月?」

「ん、月」

「……まぁいいや、それじゃこれでいいですか? え~と……」

「あぁまだ名乗っていませんでしたね私はジョンといいます」

「ジョンさん、面談はこれで大丈夫ですか?」

「そうですね、当商会ではお互いに問題ないと判断した場合以外には奴隷を売らないと決めております、ですが問題ないようですのでさっそくお引き渡しの準備をさせて頂きますね」


 こうしてオルタ・ビスタ王都支店は一気に2人の従業員と護衛を雇うことになったのだった。


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