6.リジル・アール・クレイモア
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「なぁなぁジン、俺もお前と一緒に遊ぶっていうか修行するようになってそろそろ2年だけどさ、俺らもそこそこ冒険者のランク高くなってきたよな、しかもいろんなスキルも覚えさせてもらってさ」
「ん~、けど俺の【宿り木】は効果あるけど、リジルの【共栄】はもっとパーティの人数いないと効果ないしさ、あとベンガル様に貰ったスクロールのほとんどは学校に入ってから使うんだろ? たしか学校じゃクラスとは別にその中で団体行動を勉強するための……クランの勉強? としてのなんだっけか……バディだったか、アレのときになれば3人……ていうか5人以上で組めるはずだったよな、学校入ったらやっと俺のスキルに効果出てくるのかな?」
「やっとじゃないでしょ、【剣術】だけでもすごい事らしいのに、俺たちはいろいろスキル持ってるだろ? 【共栄】は俺らだけじゃ意味ないしなぁ」
「それはしょうがないよ、だけどそろそろ入学試験だよね、たしか試験は筆記、武芸、魔術だったっけ、筆記と武芸だけじゃ一番いいクラスには入れないでしょ? 魔術はリジルだめだめじゃん、ちょっと前に作った【土魔術(種)】とか【火魔術(種)】とかのスクロール読んで見たほうがいいと思うよ?」
「あ~、まぁそうなんだけどな? あれ読むとメチャクソ頭痛くなるじゃんよ……でもお前と同じクラスに慣れないほうが損なんだよなぁ……、あぁ分かった両方俺にくれ、これから仲間になるやつに負けたくないからな」
そんな無駄口を挟みながら冒険者ギルドの依頼を受けて街の周囲にいる魔物を日々狩っているのが今の日常だ、今日でランクアップして一端と呼ばれる段階から一人前と呼ばれるランクに上がる予定なのだ。
「なぁジン、集落は見つかったか?」
「うん、何個か見つけたけどジェネラルがいるのは1個だけだったよ」
「ん? 見つけたのか? ならなんでいかないんだ?」
「ん~……キングもいたよ? 行ったらまた怒られないかなぁ」
「……あぁ……そういうことか、いいんじゃねぇか行っちまってもさ、ジェネラルを倒しに行ったら予期せずキングが出てきたってことで」
以前自分のランクに見合わない魔物を討伐したことでリジルは領主様にこっぴどく怒られていた、5段重ねのアイスクリームのごとくたんこぶが出来るくらいに。
「ん~まぁいいか、いっちゃうか……んじゃ南に5キロのところに集落あるよ、ゴブ100ちょいとホブ15とジェネラル3キング1ってところかな」
「なんだそりゃ、それくらいなら余裕だな」
そう言いながら見るリジルのギルドカード。
リジル・アール・クレイモア
ジン:Fランク
魂階:14
階位:69
魔魂値:1066
「ゴブリンキング相手じゃ魔魂的にはまだまだだけどさ、キングだから支配者系のスキルは持ってると思うんだよね、キングはわからないけど他のゴブリンは最低でも倍くらい強くなってるんじゃないかな」
「そんくらいなら大丈夫だろ」
「倒すだけなら余裕なんだけどね、ただやっぱりリジルは魔法をもっと使った方がいいと思うよ? 近接しかできないのは効率悪いでしょ、ほら、行くよ……狩った数少ないほうが剥ぎ取りね」
「おっしゃぁ!」
◇ ◇
……魔石取りめんどくさい、だけどね。
「おいジンお前も剥ぎ取りちゃんとやれよ」
「やだ、リジルより狩ったしね……だから言ったじゃん、土魔術覚えておいた方がいいってさ」
「ぐぬ……いやぁだってよ? ホブが弓使ってくるとは思わないだろ?」
「何回も言ったでしょ、ホブからは魔法も武器も使ってくるってさ、リジルが聞いてないだけだよ、俺の言ったことが間違いだったことがあった?」
「ぐぬ……ぬ……ねぇな」
「じゃ、よろしくー」
「ぐあぁぁ! ジン、次は勝つからなぁぁああ!」
ゴブリンの集落をつぶした俺たちは、討伐勝負の結果キングとジェネラル2匹を倒した俺の勝利になった、狩り勝負の内容はより大物を多く倒した方の勝ち、負けたほうがゴブリンの核玉……もとい、魔石を剥ぐのを一人でやるっていう、まぁそれだけなんだけどね。
リジルは殲滅速度だとかなり早いんだけど、遠隔攻撃が飛んでくると不器用な感じの防御になるんだよね、だから土魔法で簡単な物理遠隔攻撃を弾けるようになればだいぶ火力(DPS)もあがると思うんだけどぁ……。
「おいジン! 剥ぎ取り終わったぞ、キングが持ってた剣もあるけどよ、今回はソコソコな稼ぎになるんじゃねぇか?」
「そうだね、キングは何年振りだっけ? ロード程じゃないけどっていうかキングはゴブリン族の順列2位だよね、いい値段になるでしょ、でもこの程度の剣じゃリジルには微妙だしね、リジルは重い剣じゃなくて軽い剣で切り裂くようが動きが合ってるのは間違いないよね、リジルに合ってる武器は王都に行ったら作るよ、あと……なんだっけ、クラン? のメンバーは学校の同級生から誘うんでしょ? 楽しみだなぁ」
「ジンはそうなんだろうけどな、都合よくクラスメイトに将来の仲間になれるようなのが集まるのか?」
「んー……わかんない」
「はぁ!? そんなんでいいのか?」
「んー……だってこの王国の凄い人たちが集まる学校なんでしょ? そこの一番上のクラスに入る人達だったら凄そうじゃない?」
「まぁ俺がそのクラスに入れれば……の話だけどな」
「それは大丈夫だよ、俺が教えたし武術だったらこの剣の街クレイモアでも既にリジルはトップクラスだしね」
「そんな持ち上げんなよ、父上に比べたらまだまだだぜ」
「……う~ん、学校に出発する日にさ……模擬戦してみてよ、オジサンと」
「なんだそりゃ、コテンパンにされて来いってか? けど学校に行く前に手合わせするのもいいか」
「それなんだけどね、たぶんリジルは2……ね? こんなのどうかな?」
「そうか! なんか手持無沙汰な感じがあったんだよな!」
「じゃ、それで頑張ってみよー」
◇ ◇
リジル目線
「ふぅ……よし、父上! 手合わせお願いします!」
「あぁ来い! お前から模擬戦の申し込みだなんてはじめてだな」
父上は大剣をいつも通り斜に構える、俺は細身のショートソードとダガーの2本両手に持っている、初めて聞いた使い方だけどかなりしっくりときていた、通常とは違い正対して左手の剣を父上に向け右手の剣を上段に構える。
二天一流とか言うらしい、短刀を相手に構えロングソードを上段で構える有名な構えだ、そんな見たことも無い構えを始めて見たクレイモア伯爵はたじろいでいた、剣を両手で――それぞれの手で扱うことなんて考えたことも無いのだ。
手合わせの合図と同時に父上が上段から大剣クレイモアを振り下ろしてくる、これを避けたら父上に成長を見せられない大剣に対しショートソードを斜めに構えて受け流す姿勢を始めると同時にそのショートソードをダガーで支え、押しつぶされないようにダガーで支えて受け流した――そうすると父上は驚いたような表情をしているように見えた。
「ほう……大剣使いのような大物を使っている奴ら以外には受けられたことは無いのだがな、それはスキルか?」
「今は試合中です、終わったら話します」
目を見開く父上……少し笑ったあと真剣な表情をする。
「いいだろう、お前は剣術を本当の意味で使えるな? ここからは私も使うぞ」
この後は攻撃をいなすこともほとんどできない、刃をつぶし大剣が俺を襲い何度も吹っ飛ばされた、一矢報いるくらいはしなきゃな……俺は嫡男じゃない、いつか代替わりしたときには俺は貴族じゃなくなる、俺は俺で成り上がってやるそれを伝える一打を。
あとは理屈じゃない、ジンが教えてくれた両手にそれぞれ剣を持つ理論を丁寧に……ひたすら丁寧に、ただ実直に――それが最善だと、この2年でジンが教えてくれたことはすべてこれの成長になったし嘘じゃなかった、それを信じて俺は両手を振るう!
後で気が付いたんだ自分のステータスに【二刀流】が新しく刻み込まれていたことに。
手合わせの結果? 覚えてないんだ、だけど父上は何か嬉しそうな顔をしてたな。
よし……じゃぁいくぞ! 王都へ!