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4.赤月

実は主人公以外の名前が出たのはこの回が初めてです。


ブクマ、レビュー、評価をお待ちしています!

 借りた家の区画にやって来た。


「ではまず、この家と家具を回収!」


 ストレージ(収納魔法)に元からあった家を入れ、更地になった目の前の空間に土魔法を発動して成型する、とりあえずはここをまっさらにならしていく。


「お次は昨日拾ってきた石で下地作りだ、地震とかはない地域みたいだけどとりあえず気になるから基礎の杭として石というか岩を埋め込んでおこうかな」


 あとの建具はトレント材で敷地ギリギリくらいの大きさで壁と屋根を組み上げた、トレントは火というか熱に強いからいろいろしやすいからね。

 そのあとはコンロというか釜と炉を用意、これで食べ物は大丈夫で炉は鍛冶をする予定なんだけど、どこかで見せてもらいたいな。

「思ったよりも早く建物の用意は終わっちゃったな、狩りにいってもGPはもらえないし……あれ?」


 気が付くと街の中央広場の方が騒々しい気がする、そして東地区と中央広場の境にある冒険者ギルドの近くまで来ると騒ぎの原因がわかって来た、魔物の氾濫が周囲様々な方角で発生し街に進んできているらしい。


「まったくよぉ、今回の満月は若干赤いような気がしちゃいたが、いきなりこんなのが来るのか? 【連月】はまだ先だろ?【星読み】様の予言はどうなってんだよ」

「でも一昨日の赤っぽい月は4の月だけが満月だっただろ? だからこれは噂に聞く【連月】じゃないからただの【赤月】だろ? 星読み様の予言が外れたわけじゃない、やってやろうじゃねぇか」

「でもこんな規模のスタンビードは久しぶりだな、領主様の剣技が見れるんじゃないか?」

「あぁそうだな! なんだっけ? スキルの上位の能力だろ? 確かにこの世の物じゃねぇような剣術だったよな」

「こんな時に死にたくねぇよせっかく来月には子供が生まれそうなのによう……強制招集のランクいくつだよオイ!?」

「わかんねぇがこれはどうなんだろうな? 昇進保証とか最低保証はある程度くれるって噂らしいぞ」

「ん? その保証ってなんだ?」

「なんだてめぇそんなことも知らねえで冒険者やってたのかよ、昇進保証は普段よりGPが多くもらえる、最低保証は参加しただけで最低でもある程度の金が貰える制度だな、だが門から出た後は終息宣言まで街に戻ってはいけないってことだな、参加だけして何もしない奴対策だって話だぜ」


 なるほど、そんな噂を聞きながらギルドに入ろうとするとギルドマスターと名乗る人が扉をバっと開いてそのまま入り口の前に立ち、大声で話し始めた。


「冒険者の諸君、既に噂で聞き及んでいるとは思うが氾濫が発生した、今回は強力な魔物は見つかっていないが広範囲に大量の魔物が発生した、そのため今回は大勢に参加してもらう必要があるため現時刻から終息、もしくはある程度安全になるくらいに間引けたと領主様が判断するまでの間、【L】以上の冒険者には特別な事情がない限り強制参加してもらうことになる、弱いからと言って侮るなよ? 数は多いから死角から不意の攻撃がある可能性も格段に上がるんだからな、魔魂値500以上あるやつは出来るかぎり広めに活動してくれるとありがたいな、褒賞については少なくとも昇進保証については2倍は保証する、最低保証のほうはとりあえず銀貨5枚以上とする! では解散だ! 稼いで来い!」


 家で炉を作ってから武器とか作ろうと思ってたのに……そう考えていると、西の領主邸のほうから兵士と共に立派な装飾の施された両手剣を携えた40歳くらいの人、たぶん領主? と、その後ろから若い子というか、おそらく同い年くらいの子がたくさんの兵に囲まれながら東の門へと行軍していった。 ……後で見に行こう。

 

「とにかく俺も行ってみるか、依頼のランクと関係なくGP貰えるチャンスだしね、採集だけだとつまんないし……ってそうだ【スクロール】を使っておくか」


 【スクロール】は古代文字で書かれた知識の塊、これを読む(見る)と魔力で書かれた文字が体に流れ込んできて魂に宿るなんて言われてる、原理は分からないけど実際できてしまうんだから仕方がない、まずは【クリーン】……おぉぉ頭がキーンとする、かき氷の時みたいだな、この痛みが引く瞬間に使い方がパッと閃くように魂に刻み込まれる、つぎは【サーチ】……ぐぬぅぅ! こっちの方が痛みが強いな、連続だからか? それともこれの方が上位の能力だったのか? ……ふぅ、よし!【サーチ】があればつまんない採集も効率は格段に上がるはず、【サーチ】そのもののレベルが上がれば広範囲になるらしいし、魔物探しにも使えそうだ、本当に便利だよな、これが金貨1枚で手に入るんだから、お買い得だね。

 

 さて、討伐前の魔魂は……

 

 ジン:Lランク

 魂階:21

 階位:18

 魔魂値:174

 冒GP:0

 

 前と比べて5上がったか、今回はたくさん討伐していいからあげるぞー!

 

 一人呑気に気合を入れ、氾濫の対策へと歩みを進めた。

 

 ◇ ◇

 

 街の外に出ると上位の冒険者は西のほうへ、中堅は南北と門に、ルーキーは東門の周辺で魔物を待ち構える、その視線の先には領主一行が、方形とかいう陣形で構えていてその中央に領主がいるみたいだ。

 

 そうして待っていると遠くから土煙が舞いあがりその煙が大きく見えるようになるとともに獣の声やドドドっというような足音が聞えてきた、見た感じ飛んでいる魔物は少ないみたい、その群れの一角が領主軍に届いたのと同時に戦いが始まった。


 ここいらでは普段は見かけないゴブリンやウルフ、ウェアラビット、飛んでるのはヴァルチャーで、もっと奥にはオークかな? でっかい鳥もいるな、オークをタイマンで倒せるようになると中級冒険者として認められるんだそうで、一つの目標にしている人はたくさんいるみたい。

 

 ……って考えてないで俺も討伐しなきゃね、サッっと背後を取ってドスっと……ではなく首を強めにドン、サッっと背後を取って首を強めにドン、ドンドンドン、ドドンがドン。 もちろん素材は全部ストレージに即時回収。 ゴブリンとかウェアラビット程度なら体術だけで十分だ、空にいるヴァルチャーには……周りの人が見て無いことを確認してから大きさをかなり絞って【火の息吹】『種』級を発動する! これは口の中に、ぽん!っと発生した火種をヒュっと飛ばすだけ、これはバレないほうがいいスキルだしね。

 

 そんな感じで沢山倒していたらいつの間にか領主軍のところまで来ていた、その最前線では領主らしき人が一人でオークを倒し、小さい子は兵と一緒になりオークやモア、ウッシといった魔物を流れるように討伐している、なかなかやるな、そう思って観察を続ける……やっぱりあの人が領主さんだな、あれは【剣術】で間違いない、よし。

 

 グラム・アール・クレイモア:クレイモア領領主、クレイモア伯爵

 魂階:12

 階位:104

 魔魂値:1955

 

 この街に来て初めて階位100越えを見た、冒険者の街をまとめる領主らしくちゃんと鍛えてるんだな、あとはもう一人。

 

 リジル・アール・クレイモア:クレイモア領領主、クレイモア伯爵次男

 魂階:14

 階位:37

 魔魂値:500

 

 強さ的にはオークとかは格上だけどうまく仲間と立ち回ってるみたいだ、同い年ぐらいだけど大分魔物を倒して来たんだろうな、階位がだいぶ上がってるし数値上の強さは俺の3倍もあるもんね……と見てたらいつの間にかすぐ近く、というか同じオークを狩りそうになるような状態になってあっちがびっくりしていた、おっといけない、人がいないところの方が経験値稼ぎやすいから移動だ移動


 しばらくはそのまま討伐を続けていたが、東や南北の魔物はだいぶ数が減って来たので領主軍や冒険者のほとんどは西に移動し、夕方になるころにはほとんどの魔物を無事に討伐することに成功したそのときだ。

 

 ◇ ◇

 

 領主グラム目線

 

 森の奥の方から大型の魔物が突如姿を現し街に向かって歩き始めたことに街を囲う壁の上で監視を続けていた兵士が気が付き、領主軍に伝えるため赤い狼煙を1本あげた、強さが計り知れない脅威を示す赤の狼煙がだ。

 

 瞬時にその危険を理解し部下に指示を出す。


「皆の者、大型の魔物が現れた、我々が対処するが我々が敗北したときや相手が我らに目もくれず街に向かってしまった際の対処をしてほしい」


 街の事を第一に考えた指示を終え、大物を迎え撃つために準備する、自分が敵の真正面に立つ度量のある偉大な領主であるグラムだが、姿を現し始めた巨体に思わずたじろいでしまった。

 

 蛇に亀の甲羅が付いた四足歩行で緑色の皮膚から生える体毛が金色に輝くマンモスを一回り大きくしたようなその魔物は伝承にしるされるその名は『ペルーダ』である、あの竜種のドラゴンと同格の魔物なのである。

 

「第三隊隊長よ命令だ、リジルを連れて街に戻れ、そして一時的に街の者への命令権を与える、我らが壊滅した場合その身を賭して時間稼ぎをし、街の住民を避難させよ」

「御意」

「な?! お……お父様!?」

「早く行け」

「な! 俺も! お父様ぁあぁぁぁ?!」


 リジルを抱え込み街へと退却を始める第三隊、こういう時のための訓練が多めになされていたこともあり迅速な撤退を遂行する結果として、リジルの声はすぐに聞こえなくなった。

 

「さて、第一隊隊長バスターよ、あの体は貫くことは出来そうか?」

「まず出来ないでしょう」

「さて、第二隊隊長ブリゼベよ、あの体躯の突進を食い止めることは出来そうか?」

「数秒送らせることで手一杯かと存じます」

「ふむ、正しく実力差を測ることが出来ておるな」


 死地に向かおうというのに頼もしい、この状況でも期待するように働いてくれる……リジルが大成する姿を見ることは出来そうにないが、良き仲間を持つことが出来たな。

 

 ……ご先祖様より受け継ぎしクレイモアを天に掲げ突撃の合図として目の前に迫るペルーダに剣を向けようとしたその時だった。


 年端も行かぬ我が息子リジルと同じような年齢の少年が我らの目の前に現れたのは。


「う~ん28421かぁ……これはさすがにある程度本気出さないとだめだよな、はぁ……村を出たばっかりなのに、けど人の命の方が大事だよなぁ……はぁ」


 ペルーダも少年が現れた瞬間に突進を止め少年を探るような目で見ている、だが当の少年は危機感もなく何か別の事を考えているような状態だ……なにがどうなっているのだ? ……少年がこちらに向き我々に声を上げた。


「え~と、領主軍の皆さん? たくさんいるから無理かもしれないですけど、今から見ること秘密にしてくださいね? あ……あと森がまずいことになるかもしれないので、後処理お願いします! たぶん火事になっちゃうので」


 何のことだかわからないが先頭にいる私がとりあえず頷いておく、ペルーダを退けることが出来るのであれば私の威厳などどうでも良い、街を守ることが出来るのであればそれが第一、それが私の矜持なのだ。


「たしかこの魔物は水に強いんだよな、ならやっぱり火でやってみるか」


 いったいこの小僧は何をしでかすのだ。


「龍化、魔化、魔心強化……開放……」


 一言言う度に少年がいろんな光に包まれていく……背中に竜の翼が見えたような気さえする。


「火の息吹(ブレス)『芽』を収束……」


 両手の人差し指と親指で円を描きそれを口の前に置き、スゥっと息を吸い込む。


「アトミックレーザー!」


 口から青い炎!? と言うにはあまりにも細い光線のようなものが放射され左から右へと薙ぎ払う、するとペルーダの体は頭部と甲羅部分とが一瞬のうちに両断され、街の壊滅の危機となるはずだった魔物はあっけなく倒れた。


「まぁこんなもんかな、あ! 皆さん! 今の秘密ですからね? あ~お腹減った、今日は熊さんに作ってもらおうっと」


 少年はそう軽口を叩くと街へと戻って行った……脅威は去った……のか?

 だぁぁ森が燃えている! 後処理ってこのことか! あの小僧め!


「第一第二隊は直ちに消火活動にあたれ!」

「御意!」


 小僧……とはいえ実質助けてもらった形になるアレに感謝をしつつ、ペルーダのいたその場所を見て回る。


「……む? ペルーダのドロップか? 何だこの石は」


 ◇ ◇

 

 少し時を戻した、領主の息子リジル目線

 

 お父様の命令によって俺は街へと強制的に退却させられた、なぜかその途中に同い年くらいの黒髪の少年があの魔物の方に向かって走っていた。

 

 退却したとはいえ俺はこのクレイモア領の領主の息子だ、この街の行く末を見届けなくてはならない、せめてあの魔物との闘いは見させてほしいと懇願し、西の壁上に来ている、そしていざお父様から突進の合図が行われそうなそのとき……あの少年がお父様と尋常ではない力を持つ魔物の間に入っていた。

 

 その少年は特におびえる様子もなく軍の方に向きかえり、お父様に何かを話した後、集中した様子を見せた後、手を口元に出して首を振った、突如湧き出た青いなにかが魔物に交差する、そして次の瞬間には魔物の首は地面に落ちていた……あ! 森が燃えてるぅ! あ、おいお前、第三隊隊長ぉぉ! 青い狼煙をあげろ、作戦終了だ。

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