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「ひみつ・・・けっしゃ、めておだすと?」
渡された名刺の内容が状況をさらに混乱させた。
「はいぃ、私は日本支部の支部長を任されております若竹と申します。立ち話もなんですから、そちらのテーブルの方でお話しましょう」
若竹に促され、テーブルで対面に座る。
「いや、驚かれたでしょう?」
「正直、理解が追い付いていません」
「そうでしょう、そうでしょうとも。それが普通です。では説明しましょう」
そう言って、若竹は書類を取りだしテーブルに並べ始める。
「うん、全部揃ってますね。うっうん、あなたはこちらの改造人間手術同意書のサインし改造 美女男に改造されました」
「・・・え?」
若竹の言葉の意味を脳内で反芻しテーブル上の改造人間手術同意書書類を見れば、確かに自分の筆跡でサインが書いてある。
混乱する様を見て若竹が口を開く。
「覚えておられますか?。私があなたとお会いするのは二度目なんですよ。もっとも前回はあなたが改造される前ですけど」
そう、若竹に言われて混乱する記憶を思いだそうとした。
確か、務めていた会社が倒産したのだ。
業界でも中堅で安泰と思われていた会社だったが、社長の息子が株取引で大損失を出したのだ。
そして、失業手続きをした夜に。
「失業して自棄になって居酒屋で大量に呑んで・・・その後バーに」
初めて入るバーだった。何故その店を選んだのかは覚えていない。それほど泥酔していたのだ。
若竹がバーでの話を始めた。
「そう、あなたはそのバーで私の隣に座っていました。酔って色々と話てくださいましてねぇ。仕事に対する熱意、いやぁお若いのにご立派で。私も酔ったのかあなたに質問したんですよ『やりがいのある仕事をお探しですか?』とね」
若竹の説明でおぼろ気な記憶の中から、その言葉を思い出した。
「・・・思い出しました。私は『仕事をくれるなら、ついていきます』と」
若竹はウンウンと頷くと。
「はい、その言葉を聞いて私はそのままあなたと此処に来て契約書類を書いていただきました」
「・・・な!」
テーブル上の書類を全て確認する。
その内容は、要約すれば『自身の権利は全て秘密結社 メテオ・ダストに委譲します』という物だった。
書類を見て固まる姿を見た若竹が口を開こうとした時、先に。
「私の、この体は何ができるんですか?」
と質問された。
若竹は少々驚いた。今までにも似たような状況はあったが、ほとんどの者が『元の体に戻せ』と激昂する。
「こんな体にした以上は、目的があると判断しました。それを教えてください」
そう言って、真っ直ぐな姿勢で若竹の目を見る姿に若竹は『自分の勘も満更でもない』と内心で笑ったのだった。