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92. 空駆けるロマン

 本当に社長と社員の温度差が凄い。あれほど受付のお姉さんが頑なに喋らなかった毛玉の存在も、社長に聞いたら何の気なしに答えてくれた。曰わく第二ステージのキーキャラクターらしい。


「イザナミから社員さん達が困ってるって聞いたけど、案外スパッと進むんだね」

「逆だ。あの毛玉が出てくる方が困った方なんだよ」


 その返答に私達は混乱の状態異常に掛かった。比喩なんだけどさ。社長の話では、第二ステージと呼んでいるラスボスを倒した後の展開。それは既に出来上がっているんだそう。なんでも大掛かりなものの為、面倒だから先に作ってしまったらしい。流石運営だ。そもそもこのゲームを作っているのは殆どAI達らしいんだけどね。頑張れ運営。

 それで何が困るのかというと、先着一名のラスボステイムが行われたことで第二ステージで登場するモンスター達が浮き足立ち、先走ろうとする者達が現れているんだとか。あの毛玉が例だね。あの子先走っちゃったのか。あの子が逃げ出したのはそれがバレて怒られたかららしいけど、それでも笑顔だったあの子って凄い。

 受付のお姉さんが頑なに喋らないのはその為かもね。きっとAI達の自由さがバレたくないんだろう。もう遅いよ。


「内容を教えてー?」

「それは楽しみを奪うことになるからな」


 可愛らしく直球で言い放ったムラマサの質問も尤もな感じで言い返され、これ以上聞いても第二ステージの事は教えてくれないだろう。確かにどんな感じかワクワクするから聞くつもりは無いけどね。


「あの子達が私達と同じ様に喋れるかだけは教えてくれませんか?」


 ユイナはよっぽどあの毛玉が気に入ったみたいだね。確かに可愛かったけど、変な言葉を喋られるとコミュニケーションが取りにくいのが難点。それも含めて可愛いけど。


「図書館行けばいいだろうよ。……、探すの大変だろうがな」

「え、どういう意味? そんないっぱい本があんの?」


 ムラマサはまだ図書館に行ったことが無いみたい。あそこは無法地帯だからね。まともな本を探すのが一番大変と言うね、あれのラインナップを楽しみに行けるなら普通の図書館より数倍楽しいと思うけどね。


「社長はどの本がおすすめですの?」


 サクラが地雷を踏みに行った。でも確かに気になる。こんな社長がおすすめの本となると何かな? 意外とボディビルの写真集かな、あれを本と言っていいのか分かんないけど。


「そりゃ、こんなプレイヤーは嫌だ、だろ」

「おお! あれ面白いよね!」

「だろ? あれはAIネットワークを元にしている部分もあるからな、リアリティじゃ負けねーぜ」


 私の同意に社長もどこか嬉しそう。あれ今どれくらいあるんだろう? 前見たときは十巻くらいあったけど。それにAIネットワークか、あんな迷惑なプレイヤーも居るんだね。もっとモンスター達と触れ合った方が良いかな?


 コーヒーのおかわりを貰って、後はフライドポテトも注文。ヨーナ達が終わるまでまだ時間が掛かるだろうし、もう少し此処で暇つぶし。ムラマサはカレーを注文してがっつり食べるみたい。


「ねぇ社長、ゴーレムコロシアムで誰も相手してくれなくて寂しいよ」

「強さは孤独だぜ?」


 なんか格好いい事言う社長が恨めしい。それ私が言いたい、今度どっかで言ってみよう。それより問題はゴーレムコロシアムなのだ。皆私との戦いは避けてるみたいで、Mリーグを攻略して以降Pリーグで声が掛からなくなってしまった。

 そっとフライドポテトを私の口元に差し出すユイナの行動が余計に心にくる。悲しすぎる。ポテト美味しい。


「皆、アオイさんとは戦いたくないって言うそうですわね」

「何でサクラが知ってるの!?」


 何でもMリーグでの戦いの様子を見て、掲示板で話題になっているらしい。あんな可愛い幼女と戦うなんてとんでもない! との書き込みが多数寄せられる程の大反響だそう。

 運営からプレイヤーの姿は映さないという条件にホームページに載せたいと連絡があった時、確かにフィナの可愛さを皆に知らしめてやる! なんて思ってはいたさ。なのにこんな事になるなんて。


「ゴーレム、変態紳士に大人気!」


 ムラマサの言葉が虚しい。


「フィナが汚されちゃう!」

「バカ親ですわね」

「アイドルなんてそんなものですよ?」


 ユイナが素直すぎる。ムラマサは大笑いしてるけど、ムラマサだってある意味同じな筈なのに。闘技場で優勝したし、本人だってちょっと姉御っぽい格好良さがあるけど美人さんだ。


「ムラマサは何かないの?」

「あたしはラブラブ感出したりしてるからね、余計なちょっかいは来ないかなー」

「だからブッコロコールなんて遊びが生まれたんですわね」


 ちょっとサクラの言ってることが分からない。ムラマサとお兄ちゃんが上手くいってそうなのはちょっぴり嬉しいけど、その物騒なのは何なんだろうか? 

 サクラの説明によると、コールと書かれたレスの後にブッコロと書き続ける遊びらしい。もしかしてこのゲームの掲示板住人って特殊なのかな? もしかしてAI混ざってないよね? 視線を逸らす社長が怪しい。


「そうだそうだ、ゴーレムコロシアムで手持ち三体での勝負が出来るようになるからな。」


 あからさまに話題を変えて益々怪しいけど、ここは話に乗っておこう。手持ち三体か、それなら私とやろうって人も出てくるかもしれないね。でも、そうなると誰を出そうか?


「フィナ、タツノ、マオで確定ですわね」

「属性選り取り見取りだね。どう? マオにエッチな格好してもらえば相手してもらえるかもよ?」


 ムラマサのその言葉で思わずあの水着を思い出して顔が熱くなるのを感じる。あれはダメだよ、痴女の中の痴女だよ。魅了一直線だよ。


「社長、何であの水着作ったの?」

「あれか? 発掘大作戦の報酬で、魅了の状態異常を与える装備をって事で何時の間にかああなった。一応装備する時には注意表示もでるんだぜ?」


 トヤマさんがあれを着るのか。……、お兄ちゃんの部屋に無造作に置かれていたエッチなDVD思い出した。ゲーム借りようと部屋に行ったら床中に散らばっていたもんだから思わず変な声出ちゃったよ。変な声って言っても嬌声じゃないよ? まったく、ひどい奴だ。


「あれはアオイさんが見た時の反応を見るためですわ」


 こいつきっと共犯だ、ひどい奴らだ。私の心を弄ぶなんて。サクラの足を踏んづけとこう。喜ばないでね? ってか何で私がそんな事考えてたのが分かったんだろう?


「愛故ですわ」


 踏もうかと思ったけど止めておこう。何か今日のサクラはぶっ飛んでる。また徹夜でもしたのかな?


「どんな水着何ですか?」

「アイドルが踏み込んじゃいけない領域だよ」


 ユイナには好奇心は猫をも殺すってしっかり教えないと。あ、猫で思い出したけど、獣人の村ではどんな称号が貰えるんだろう? 他の所も気になるね。エルフの村に行った時は何も言われなかったから、きっと踏破した報酬みたいな物なんだろう。

 社長に聞くと、エルフの村では調合で役立つもの、スライムの村ではスライムの武器化、獣人の村では走力が強化されるものみたい。調合と武器化はトヤマさん、スラミには嬉しいのだね。


「走力ってちょっと地味じゃない? 何かグレード下がってない?」


 ムラマサがそう言うのも分かるかな。リザードマンの村では水中行動可能って言うのも地味だけど、根の国に行くのにも役に立つやつだし、MPの節約にもなる。


「甘いな、あの称号を得ると……、空も水上も走れるようになる!」

「「「な、なんだってぇ!?」」」


 突然の叫びにキョロキョロするユイナにはちょっと申し訳なく思う。でも、その効果はロマンがあるね! 魔法でも出来そうだけど、MPの節約になるしね、ヨーナが辿り着いたら早速行ってみよう!


「アオイちゃんは太極図で出来るでしょ?」


 ユイナにはまだロマンが解らないみたい。試練を乗り越えて使えるようになるって言うのが良いんだよね。


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― 新着の感想 ―
[一言] 誰も、負けるのがわかっている戦いに挑んだりはしない 負けるかもしれない くらいのレベル差、挑めるのはそこまでだから、追いつくのを待つか、きっぱり、諦めるかするしか無いと思う オ…
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