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90. やっぱり後悔

 待ちに待った土曜日。一日中ゲームで遊んでいられる貴重なこの日、私達はある人達の期待を背負い三組に別れてそれぞれ大陸を探索する事になった。勿論隠れ里を探すためだ。

 第四大陸にはスラミとムラマサ、ユイナが。第二大陸にはヨーナとトヤマさん、クイネさん。第一大陸には私とサクラ、そして助っ人として呼んだジョン。それぞれ好みや能力を考慮して組み合わせを決めたんだけど、ユイナとヨーナが苦労しそうな予感。


 第四大陸に行くスラミ達には、移動が楽になるように空飛ぶ島を移動用に貸し出し、精霊達にも力を貸してあげるように今日は空飛ぶ島で待機して貰う事にした。この三人はまだ【精霊馴染み】の称号を手に入れてないからね、それでも第四大陸に行くことを熱望するスラミには脱帽だ。


 そもそもこんな事になったのは攻略の為ではない。謀ったかのようにタイミング良く届いたクエストメールの所為だ。昨日届いた隠れ里をすべて見つけて欲しいと言うメール、それについてログハウスのリビングでサクラ、ヨーナと共に話していたら二人の人物が食い付いた。言わずもがな、師匠ともちだ。そんな二人の期待を背負い、私達はクエストも兼ねて楽をする事なくこうして三組に別れて探しに行くことにしたって訳だ。


「で、何で俺を呼んだんだ? 確かに隠れ里には行くのは良いんだけどよ」

「昨日の内に大まかな場所までは調べたんだよね、それでリザードマンの所に行くにはジョンがぴったりだったの」


 私はエルフの村へ転移で行ったため楽だったけど、本来は迷いの森を抜けなくてはならない。そんな感じでそれぞれの村には行き方があるみたいで、リザードマンの村へ行くにはレンチと遭遇した泉、その中の洞窟を進まなくちゃいけないらしい。その為連れて行くなら、称号でお得に水中行動が可能になったジョンが必要かなと思ったんだよね。


 ジョンも納得したところであおいせ食堂国へご案内。勿論転移場所は広場。ジョンはお菓子で出来た城を見てどんな反応をするか、そんなドキドキを持って転移したら驚きの光景が広がっていた。ジョンも驚いて言葉を無くしているけど、前の城を知っている私とサクラの方がその驚きは大きいと思う。


「あ、アオイさん? あなた何時の間にこんな事しましたの?」

「私じゃないよ?」


 城には様々なモンスターを象った砂糖菓子やクッキーが至る所にデコレーショされていた。無くなった鯱の所には翼を広げた鶏が一匹づつ鎮座し、全体にうっすら粉砂糖が振りかけられていてちょっと幻想的な雰囲気を醸し出している。


「あっ、ご主人様。お城ちょこっとデコっときました。可愛いでしょ?」

「うん、可愛いけどね。ちょっとどころじゃなく無い?」


 本人も調子乗りました、と申し訳なさそうな顔をしているタツミだけど、楽しかったんならそれでいいよ。タワーマンションに住むNPCの子供達にも受けが良いらしいし、タツミがやってて楽しかったんならそれで良いんだよ。ただ、私の目指したシンプルさが消えてしまったのがちょっと残念。


 見てるだけで胸焼けしそう、と顔をしかめるジョンの為に早めに泉まで行こうかとサクラと話していると、タツミがベイを連れて行く事を提案してくれた。でも、急ぐつもりも無いので断っておく。タワーマンションへの反応の方が大きいジョンに少しムッとしながらも、モンスターの出ない道のりを進んでいくと、ジョンも出ないモンスターの事が気になったみたい。


「この辺りはリザードマンの縄張りだからモンスターが出ないんだって」

「そんなに強いって事か?」

「強いと言うか、無敵ですわね。社員NPCと他種族NPCに限定されるそうですけど」


 その為、私の国の住人は相応に弱いらしい。角ウサギの突撃だけで死んでしまうそうだから守りは万全にしろ、と社長からも注意された。社長が言うなら何か裏がありそうな気がするけど、教えてくれなさそうだったし深く聞くのは諦めたんだけどね。


 泉までの道は概ねのんびり進む事ができた。ただ、洞窟内ではサクラの手癖の悪さに苦しみ、それに居心地悪く思ったのかジョンも苦しみ、サクラだけが楽しい道のりだったけどね。そんな苦労を乗り越えて、ようやくついた泉。前回のように破廉恥に遭遇する事も無かったので、一度テントを張ってお昼を頂きに行くことに。そして再びログインすると、テントの前に土下座をしたジョンが待ちかまえていた。


「うまい飯を頼む」


 そう言い放ったジョンの昼食はカップラーメンだったらしい。それを食べている最中、もっとしっかりした物が食べたいと思い、土下座までして待ちかまえていたと言う訳。私はそんな事されなくても頼まれればいくらでも創るのに、ジョンの中では私はどんな存在なんだろう? 聞かないけどさ。変な答えだったら見た目立派だけど味だけタバスコみたいな一品創ってしまいそうだし。まぁ、ただの男気みたいなもんだと思うけどね。


 私より少し遅れてログインしたサクラも混ざって、洞窟内で焼き肉と言う豪勢な食事も終わり、これからがメインイベントだ。サクラには【精霊馴染み】の効果でテルンとチルンの二人とリンクして太極図を使用可能の状態になってもらい、リザードマンの村へ続く洞窟を探すために泉の中へ。ジョンは水着になった私達に少し照れていたけど、そんなんで人魚と出会ったときどうするのか。


 一通り泳ぎ回ってみても見付からないので何か細工でもされているんだろうと思い、こんな時トヤマさんが居ればなぁとちょっと人選に後悔。でも、他も同じ様な事になってるかもしれないし、ここは自力で何とかしないと。そんなわけでルーナとリンクして引力を操ってみる。勿論サクラとジョンは対象から外して行ったけど、思った通りに事が運んだのか一部の岩が外れ洞窟の入り口が姿を現した。


 その洞窟の中は一本道のようだけどその分距離が長い。それでもあちこちに光る石がある分移動は楽だ。明かりを出すのも苦じゃないんだけどね。左へ曲がったり右へ曲がったり、上へ行ったり下へ行ったりと方向感覚がおかしくなりそうな道を進んでいくと、ようやく広い空間へ出ることが出来た。

 そこは何処からともなくいい匂いが漂う所で、そこら中でリザードマンが腹這いで寝転がっているちょっと癒される場所だった。リアルなトカゲ人間って感じじゃなくて、ちょっとデフォルメされた感じで手足もちょっと可愛い。あ、くりくりな目もいい感じだね。


「やっと来たー! これで俺も次の設定が出来るぜ!」


 水から上がり、誰に話しかけようか迷っているとハイテンションなリザードマンが駆け寄ってきた。多分この人が社員何だろう。社長の話によると隠れ里には社員NPCは一人だけみたいだからね、でもこの人を見ているとエルフの村の社員さんがまともな人に見えてくる。


「燻製が買えるんですよね?」

「ああ、勿論だ! でもそれだけで良いのか? 試練をクリアするとリザードマンの秘技が得られるぜ?」

「「なにそれ初耳」」


 思わずサクラと声が被るけど、そんなのは気にしてられない。社長はそんな事一言も言ってなかったし。詳しく話しを聞いてみると、それぞれの隠れ里では住民達から試練を受ける事が出来、それをクリアすると特別な称号が得られるみたい。秘技とはその称号の効果の事だ。

 リザードマンの村で得られる称号の効果は、まさにジョンが【赤き勝者】の称号に設定した水上、水中行動可能。それを聞いた瞬間、ジョンが膝から崩れ落ちた。


「大丈夫だよ、神社に行けば変えれるって」

「あ、体育祭のやつか? あれは変更不可だぜ」

「他、そう他の村がありますわ! そこで称号貰いましょう。ねっ」


 その後、無事に燻製は買うことが出来たけどジョンの心の大きな傷は癒えることはなかった。このまま師匠の所へ放り込もう。きっとお酒が癒してくれる筈。酒の肴も手に入れたしね。


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