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88. タコとイカでは大違い

 夜の孤島は安全そのもの。モンスターすら出ないのをいいことに明かりとして光の球を出し、水着となって遊び続けて早一時間。流石に動かない状況に業を煮やした私達は、人数によって変化があるのではないかと結論づけ、海上で雨のように降り注ぐサメ達との熱戦を繰り広げていたジョン達を呼び寄せる事にした。


「場所は分かったそうだけど、海流なんかが邪魔して思うように動けないみたいだよ」

「海は大変何だな」


 ヤマトなら飛べば良いだろうって思ったけど、どうも気流も関係して思うような航海は出来ないみたい。流石に海はラスボスの事に関わってくるだけに、そう簡単にはいかないんだね。


 ヤマトごと島の側へ転移させると、ジョンとお兄ちゃんがヤマトの甲板から海中へ飛び降り、少し疲れた顔でトボトボとした足取りをしながら此方に近づいてきた。お兄ちゃんが執事服じゃないのは初めて見たけど、普段はカウボーイみたいな格好をしてるのかな?


「あぁ、愛しの妹。鮫のしんどさも癒される」

「凄かったもんね。あの鮫って何処にでもいるの?」

「お前も会ったのか? まぁ、比較的にはだな」


 サメザメが驚異なのはその数もさることながら、リポップの早さによるものみたい。倒したそばから復活してくるから、海域自体を突破しない限り永遠に襲われることになる。そうヤーイズにいる社員さんに教わったそうだ。


「歯みたいな奴だな」

「歯牙にも掛けないのが大事ですわね」


 流石、遭遇したこと無い二人は呑気すぎる。お兄ちゃんの格好を突っ込む事はしないみたいだけど、多分どうしようもない理由だと分かってるからだと思う。でも、本人は疲れた顔をしながらも早く聞いてよ、とでも言いたい表情。


「お兄ちゃんは何でそんな格好をしてるの?」

「ふふん、よくぞ聞いてくれた。俺は全ての女性の執事は止めて、たった一人の女性を撃ち抜くガンマンになったのさ!」

 

 聞いておいて何だけど、どうでもいい返答だったのでスルーしつつ、二人に冷えた麦茶を渡し一息ついて貰う。それでも麦茶を渡す際に捨てられないようにね、と声を掛けておく。


 二人も落ち着いた様なので、ランダムダンジョンの説明を交えながら状況の説明。ジョン達を見つけて思ったけど、ランダムダンジョンは扉の中にダンジョンがあるんじゃなくて、ランダムに選ばれたダンジョンに続く扉なんだね。

 私達の状況も説明し終え、今度はジョン達の話。此処が何処にあるか気になるけど、マップをみたら周りは海ばっかで詳しくみるのは諦めたんだよね。ジョンの話によると、此処は大陸を越えた先の海で、大体第三大陸と第四大陸の間辺りみたい。


「大陸より先は渦を巻いてるみたいな海流なんだよな。真っ直ぐ進んでいる筈が、だんだん横に逸れていってやがる」


 それが海流がどうのって言ってた訳なんだね。ジョン達は今ある大陸それぞれから出航して確認したけど、何処も時計回りで渦を巻いているみたい。そんな海域にある島ってちょっと気になるよね。


「この島みたいなやつは二つ見つけたんだけどな、どれも時間が経つと消えてたんだ。今回は愛しの妹様々だな、撫でてやろう」


 そう言って頭を撫で回すお兄ちゃんは無視するとして、問題はこの島が何なのかだね。時間が経っても何もないし、この島には椰子の木だけ。ジョンに頼んで子分達も上陸して貰おうか。


 検証も兼ねて、一人二人と順番にヤマトから飛び降りて島に上陸して来る子分達。その服装は動く島で見かけた人達とは違い、全く統一感が無いものだった。話しを聞くと元々居た子分達ではなく、ギルドを作るに際に引き入れた大学の友人達らしい。

 上陸する人と軽く自己紹介をすると、最初に上陸した女の人はウミといい、次に来たミウの双子の姉だそう。その容姿は髪の長さでしか見分けがつかないほどで、長い方がウミって覚えとけば多分大丈夫。その格好もショートパンツにチューブトップ、パーカーと全く同じ。そんな格好でも、健康的に焼けた小麦色の肌のお陰かエロさが無いから不思議だ。現実でもそっくりだけどまだ違いが分かるくらいで、どうせゲームなのだからとそっくりのアバターを創ったんだとか。


 こんな奴の妹とは思えないよねぇ、なんて言いながら耳を触ろうとする二人の手を払い続け、三人目のローブを着た中性的な男の人が上陸した際、彼と自己紹介もする間もなく事態は急に動き出した。


「「うわっ、きっしょ!」」


 島の周囲に現れたうねうねと動く赤い触手にウミとミウは同じ反応を見せるけど、私には美味しそうとしか思えない。だってそれは、吸盤が有ることからタコだろうと思うから。あれをたこ焼きにでもしたらきっと食べ応えのある物になるだろう、メイリルも大喜びだ。


 鞭の様にしなり襲い来るそれに、先手必勝とばかりにビームを放つとその触手は何事も無くそれを島に打ちつけた。


「全力で撃ったのに効いてないんだけど!?」


 触手が振り下ろされる瞬間、島を覆うほどのバリアを張りったお陰で攻撃は凌げたけどさっきのは本当に効いていなかったのかな? 試しにもう一度撃ってみたけど、触手は元気に動き回り効いてる様子は見られない。


「バリアって便利だなぁ」

「そうですわね。でも攻撃が効かないのは厄介ですわ、プロフの魔法でもモンスターの名前すら解らないのですもの」


 バリアに感心するお兄ちゃんをよそに、皆それぞれ遠距離様の魔法を使って攻撃するも、ダメージは無さそう。なんかしらのギミックがあるって事なのかな。プロフの魔法で解れば楽なんだけど、それが無理って事はモンスターの全体を見ないと効果がないのかな? 私の場合、太極図になって魔法が使えなくなったから名前とレベルしか分からないんだけどね。それすら今は何も表示されないんだけどさ。


「怪しいのは椰子の木か、三つ実が生ってるけど試しに投げつけてみるか?」

「三つ実があるとか、ダジャレっぽいね」


 そんなつもりはない! と少し顔を赤くするヨーナをニヤニヤ見ていると、サクラと最後に降りてきた中性的な男の人が何か思いついたように、くだらないとため息をついた。


「「二人して何か分かったの?」」

「まぁね、ダジャレとは言えないだろうけど」

「ヨーナの言ったことがきっと正しいですわ。タコだからの椰子の木と言うわけですわね。少し苦しいですけど」


 タコと椰子の木に何か繋がりなんてあったかな?


「わひゃぁぁぁ!?」


 うんうんと悩んでいるその時、両隣から双子が私の耳に息を吹き込んできた。思わず変な声が出たけど、犯人達はにししと笑いフットって事だよ、と笑い合っていた。フット、つまり足って事で私もやっとピンときた。八つ足だから椰子って事か。確かに苦しい。


 中性的な人は思いの外行動派なのか、早速空を飛んで椰子の実を取りに行こうとするのを慌てて止める。私のバリアはそこまで高く張ってないからね、うっかりしてたと顔を赤くして仲間内にからかわれている内に、手早く実を回収。そのまま触手にぶつけてみると触手は光となって消えていった。


「アオイが出した物でも同じ効果なら楽だよな」

「やってみるね」


 まだ二つ残っているけど、それでは八本ある足にはまだ足りない。倒すのに必要な物だから時間を掛ければ復活するだろうけど、ヨーナはそこまで待っては居られない模様。やるなら一気にいこうと、七つの実を出してそれぞれ一本ずつ当てていくと、簡単に光となってくれた。椰子の実なら何でも良いのかもね。


「「やったか!」」


 笑いながらフラグを立てる二人に思わず笑ってしまうけど、直後に響き渡る地響きは流石に笑っては居られない。皆まとめて被害を受けていなかったヤマトの甲板に転移すると、心配そうに見ていた子分達が一様にお疲れ様っす! と声を張り上げた。


「まだ終わってねーよ! 野郎共、しっかり見張ってろ!」


 その一喝に甲板の端に行き島を見張る子分達に並んで揺れている島を見ていると、徐々に砂浜の中から真っ赤な頭が顔を出した。それは私達が思っていた物とは違い、耳の様な物がある。全てをさらけ出したそれはまさにタコでは無く、イカ。慌てて称号で見てみると、表示される名前は大魔王マイーカ。


「「「よくねーよ!!」」」


 私達幼なじみの息はきっと双子にも負けない。

 

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