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85. 美味くても残念な闇鍋

 マルンを連れ屋上テラスへ行くとトヤマさん、クイネさんが合流してバーベキューをやっていた。ここの住人も居ることから、住人がやっていたものに混ざったんだろう。でもここのアイテムボックスに、生肉なんて入れてただろうか? 全て調理済みの物を入れていた筈だけど。

 マルンに聞いてみると、防衛戦力が倒したモンスターのドロップ品は、全てここのアイテムボックスに入れられるようになっているらしい。納品するアイテムを選ぶ時、何故気付かなかったんだろう。そもそも太極図が便利すぎてアイテムボックスなんて殆ど開かないんだよね、ポーション関係と即死石ころ、記念の龍の首の球以外はログハウスの方へ突っ込んでるし。


「やっと来たか、ってそれどっちの目が疼くんだ?」

「あえて言うならどっちもかな」


 私が来たのに気付いたヨーナが話しかけてくるけど、その注目はやっぱり私の目にいった。どうせ行くならリンクしよー、と有無をいわさず私に入り込んだテルンとチルンの所為だけどね。この二人を見てるとマルンがかなりまともに思えてくる、そんな二人のお陰で今の私の目は赤と空色に変わっている訳だ。


 ムラマサが不在みたいだし、ひとまず今居る人には三人の紹介を始めることにしようか。サクラとヨーナ、スラミはマルンの事は知っててもテルンとチルンは知らないからね。私も今し方知った二人の能力と共に紹介。その能力を聞いてサクラの目が輝きだした。


「二人合わせると太極図ねぇ。一人だとどうなの?」

「特に何も」


 スラミはそのお手軽さから一人の場合が気になるみたいだけど、一人だけリンクしても何の力も発揮しないみたい。二人同時にリンクするっていうのが大事なのだ。それでもリンクすれば太極図の力が使えるとなればかなりお得だよね。私の努力は何だったのかとも思わなくもないけど、あの努力があったからこの状況がある。何か前もそんな事考えてた気がするよ。


「サクラは太極図取得しようとは思わないの?」

「じっとしてたらムラムラしてしまいますわ」


 早く使ってみたいけど精霊三姉妹が焼き肉に夢中で手が出せない、そんなヤキモキしているサクラに太極図の事を聞いてみるとよく分からない答えが返ってきた。学校でも偶に肩が震えてるのって、そう言うことなの? でもこれはきっと深く聞いてはいけない。ヨーナの手が私の頭をがっちり押さえているから多分そうだ。


 バーベキューも進み、酔った勢いで腹踊りを披露し出す住民達を見ていると大人になってお酒を飲みだした時、自分はどんな風に酔うのだろうと不安になってくる。不安と言えばもう一つ、ムラマサが未だ屋上にやって来ない。マンションを覗いて探すのは流石に駄目だろうし、大人しく通信を繋げて居場所を確認すると、どうやら風呂に拘った部屋が気に入り今までずっと浸かっていたらしい。


 直ぐに出ると言ったムラマサを待っていると、ヨーナが折角皆が揃っているから何かしたいと言い出した。


「そうだ、闇鍋をしよう」

「旅行感覚でいう事じゃ無いですわよ」


 ヨーナの提案はあろう事か闇鍋。それは、一番おかしな物を持ってきそうな人が言っていいものじゃないと思うけどな。だけどトヤマさんもまともな食材を持ち寄るなら楽しそう、と乗り気みたい。スライム鍋がどうとかって笑いながらブツブツ呟くスラミは怖いけど、実際ゲーム内の食材でスライム春雨があるから下手に突っ込みは入れられない。

 ムラマサも屋上に到着して精霊三姉妹の紹介も終わり、最早本題となった闇鍋の件も結構乗り気。そんなムラマサから、どうせなら縛りを入れようという意見により、鍋の材料は全てモンスターのドロップ品だけにすると決まった。ただし、スープは醤油ベースのごく普通な物。これに合う食材を探さなきゃならないね。


 食材探しは午後からにして、午前中はこのままバーベキューをして過ごして夜に闇鍋をする事に決定。場所は会議室に置いたままの炬燵でやることになった。


「そう言えば、個人所有の部屋の風呂だと裸になれるんだね」


 そんなムラマサの報告に、ゴクリと生唾を飲むクイネさんはやっぱり男だね。 


 昼食にハンバーグを食べているときに、ふと思いついたこと。やっぱり鍋には鶏つくねだよね。いや、鰯のつみれも捨てがたい。そんな訳で私は鶏肉と鰯、それもなるべく極上な物を探す事に。


「そんな訳で、教えて社長!」

「どんな訳だよ」


 ノリノリでやってきた喫茶店にて、ノリで発言してみたものの私と社長はまだつうかあの仲にはなれてないみたい。別に残念とかって思う訳じゃないけど、面倒に思う気持ちを抑えながら一から説明。そして全てを理解した上で、これをやろうとコーヒー豆を差し出す社長は、本当にどうしようもない人だと思う。


「それで、極上素材か? それなら稀に出る特殊個体が良いだろうな」


 特殊個体は通常のモンスターよりも強くなった個体で、強い割にドロップは食用の物しかドロップしない私達のような人にしか旨味のない、何となく悲しい奴ら。戦いの後の宴会は欠かせないだろう、という運営の心意気らしい。

 それって嫌がらせじゃんって言葉を頑張って飲み込み。どこに出るか聞いてみると、何処でも現れるものの、現れるのは本当にごく稀。週に一体出ればましって位だそうだ。


「お前なら、それぞれの場所で一日一体は見つけられるだろうけどな」


 その言葉に一瞬何の事か分からなかったけど、よくよく考えればあの強運達か。こんな所にも威力を発揮するのか、と若干呆れながらも一度ログハウスに戻ってフィナととっつぁん、フィンを連れて一路海へ。極上の鰯を穫ったどするぞ!


 そう意気込んでヤーイズから屋形船で出航。港付近も、目で見える範囲も穏やかな海が続き風も強くなくて心地いい。華麗にジャンプを繰り返すフィンも楽しそうだ。此処まで穏やかだと、直ぐに釣り糸を垂らすのは勿体ないかな。

 釣りを選んだのは、この機会だから久し振りに屋形船を出そうと思ったから。フィナも楽しそうにしてるし、夜まで時間があるからそんなに急ぐものじゃないからのんびり行こうかな。そんな訳で、次に海洋系のモンスターをテイムするならこの子! ていうモンスターを海の上から探したいと思う。


 しかしそんなのんびりした時間も終わるのは早かった。穏やかな海に安心して甲板に立ち、フィンにボールを投げて遊んでいた時の事。とっつぁんの鳴き声を聞いて前方を見てみると、先の海から大量の何かが真上に向かって飛び出したのが見えた。それはホオジロザメによく似た姿の鮫型モンスターで、それらはとっつぁんとフィンを無視するようにまるで雨のごとく降り注いで来た。

 その勢いに恐怖を感じながらも、ヤマトのホーミングレーザーを参考にした攻撃で撃退を繰り返す。その時後ろからぺちぺちと叩かれ、レーザーを撃つのは止めずに振り返るとフィナが看板を掲げて立っていた。その看板には鰯ゲットだよ! との文字があり。フィナはそのままサメ達を指さしたので、称号の効果でモンスターを見るのを忘れていたことに気付いて、若干慌てながらモンスターを確認してみることに。


 すると、雨のよう降るサメザメというモンスターに混じってギタイワシが襲ってきているのを確認できた。一見では違いは分からないけど、どうやら何匹もの鰯が集まって擬態しているみたいだね。一度船ごと皆を包むようにバリアを張って、襲われないようにしてからアイテムボックスを確認してみた。その中にはやっぱりと言うか、多分擬態したサメザメの大きさ一匹分と思われる大量の極上の鰯が入っていた。

 その他にも普通の鰯が入っていることから、特殊個体のドロップには極上のがつくみたい。安易だけど、それがまた期待が膨らむ。どんな味がするか楽しみだ。楽しみと言うのは他にも、それは大量の鮫肌に混じって入っていたほんの少しのフカヒレの事。これはパーティーの予感だね!


 でも、恐らくフカヒレはレアドロップ。フィナが居るのに入手していたのは今の所二枚だけと言うことは、それなりに入手が難しい物だと思う。それでも、夜まで倒し続ければ相当ゲット出来るんじゃないかな。そう期待した矢先、さっきまで雨のように降り注いでいたサメザメが一匹も見当たらないようになってしまった。

 残念だなぁと溜め息をついた時、今までボールを抱えて呑気に見ていたフィンがしきりに鳴き始め、船を引っ張っていたとっつぁんも動きを止めた。これはなんかヤバいと慌ててバリアを張ろうとしたところ、張ったままでいたのを思い出してちょっと恥ずかしさを感じる。サクラやヨーナがいなくて良かったよ。


 そんなちょっとした羞恥心と戦っていると、海に変化が現れた。急に海面が盛り上がり一気に弾け、そこから現れたのは巨大な二頭の鯨。鯨達はその場で円を描くように回り、時にはジャンプしてまた回る。それは、まるでダンスしているかのようで見ていて楽しい。

 後はオーロラとありんこの涙を見れば完璧、なんて思いながらもその迫力そのままに荒れ狂う海に内心怖々してしまう。バリア張っておいたお陰か、上手く波を弾いてくれているのはちょっと安心かな。


 ふと袖を引くフィナに気付いてそちらを見てみると、掲げた看板には仲間になりたそうに見ている、と書かれていた。それって鯨の事だよね。うん、流石に無理だよ。だって大きすぎるし、多分何キロとかそんぐらいだよ。

 逃げるようにまた今度ね! と鯨達に声を掛け、皆と船も纏めて転移でヤーイズに戻る。次来る時までに場所の事は解決しておこう。あの子達のダンスは良い物だったからね。


 そしてコカブロイラートリスから極上の鶏肉をゲットし、ゲームセンターEXで時間を潰して迎えた鍋の時間。炬燵に卓上コンロにその上は鍋と準備は万全だ。

 実はもう持ち寄った食材は全て鍋の中に入っている、と言うのも鍋の準備は先生が全てやってくれたのだ。だから後は電気を消して、ふたを開けて具を取るだけ。先生には後でフカヒレを振る舞おう。


 暗闇の中、雰囲気もあってか誰も喋らずに黙々と具材を食べ進める。でも、それは雰囲気だけではなく、具材の共通点に気付き始めたからだと思う。最初は口々にこの肉上手い! って声が上がってたからね。

 うん、ほぼ全て肉だった。しかも牛肉だけだと思う。きっと皆豪勢にしようと思ったんだろう。その優しさが出汁に出ているよ。肉じゃないのは私の用意した鰯のつみれだけの為、口直しの意味もあって大人気だ。しかし、極上の名が付くだけあって、その美味しさは相当なもの。それもあって、同じ大きさにしたつくねと間違えてしまい叫ぶ人もいる。


「肉は好きだけどさ、野菜の良さってのにも気付いた気がする」


 いくら肉好きのヨーナでも、肉の出汁たっぷりの鍋には堪えてるみたい。今からでも野菜を入れた方が良いかな?


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