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83. ギルドバトルは砲撃戦

 ジョンに通信を繋げ、先ずはギルド名について聞いてみた。その答えはあの映画に影響を受けただけとのことで、海賊とは全く関係ないそう。コロンブスとかでも良かったんじゃないかとも思うけど、男のロマンに口出しするのは野暮ってものだ。

 ギルド名はすっきりしたけど、その通信は少しもやもやが残る。それはギルドに転移させるのを断られたことだ。ヤーイズにいるから自分で行くなんて言っていたけど、私が転移させた方が早いし直ぐにバトル出来るのにな。ちょっと肩透かしを食らった気分。


「ヤマトだけにってね。しょーもない奴」


 不満があることを隠さず、ジョンが来るのに少し時間が掛かりそうだと皆に伝えるとスラミは納得してる風。何がヤマトだけになのよく分からないけどね。冒険者ギルドに併設された酒場でジュースを頼んだところで、ムラマサが我慢できないといった様に私の頭を撫でながら戦艦武蔵の事を教えてくれた。確かにしょーもない理由だ。


 三十分程で到着したジョンとお兄ちゃんは、呆れた表情の私達を見てある意味成功だな、なんて呟きながら二人揃ってビールを注文。景気付けの一杯らしい。


「ジョンの所は何人出るの?」

「百人。お前ら相手じゃ足りんかもな」


 八対百なんて普通に考えたら圧倒的だけど、個々の戦力差でいったらまだ勝っているのかな? 私とクイネさん、ユイナがどう動くかだね。

 二人が注文したビールが届き、飲み干すのをのんびり待とうかと思ったらあろう事か一気に飲み干し、そのまま行くぞと言って受付へ歩いていった。二人はそんなにお酒に強いんだね。お兄ちゃんなんて直ぐに酔いつぶれそうなイメージだったのに。


 ジョンとお兄ちゃんと共に受付でバトルの申請し、その際に召喚について聞いておくことを忘れない。転移は駄目でも、これが使えるか使えないかで私達の戦力が大きく変わるから重要な事だ。

 受付のお姉さんによると召喚を使うのは問題ないそう。これでマルンに国の防衛を頼んでおけば、向こうに置いてある戦力も使うことが出来る。特に防衛が肝心のバトルならキングが居ると心強いからね。……、どんな戦い方をするか分からないけど。


 ジョン達に召喚の事を聞かれても自分なりにはぐらかし、酒場で待っている皆に申請が終わったことを告げる。皆の方もギルドバトルの参加確認のアナウンスが行ったみたいで、メニュー内に出来たギルドの項目より参加承認を済ませたそう。後五分程すれば特別フィールドに自動で転移される。

 特別フィールドに着いても、バトル開始前に十分の作戦会議時間が設けられているから今はのんびり。召喚が大丈夫だった事も伝えておこう。


「それは良かったですわ。国の方は大丈夫ですの?」

「うん、マルンが助っ人も呼ぶから任せとけって」

「嫌な予感がするな」


 ヨーナもやっぱりそう思うみたい。三人部屋を要求したから仲間は増えそうな予感はしてたけど、マルンが連れてくるならどうせ普通の子じゃないからね。マルンを知らない私達とスラミ以外は不思議そうにしてるし、バトルが終わったらあおいせ食堂に行ってみようかな。


 お菓子の城の完成度を熱弁していると時間が来たようだ。転移に注意を促すアナウンスの後、一瞬の暗闇を挟み視界に映るのは閑静な住宅街。視界を飛ばせないから全体は分からないけど、此処から見える範囲ではタワーみたいに高い建物は無さそう。


「私達は周囲を見回ってくるわ。スラミとアオイちゃんはオブジェクトの配置場所をお願いね」


 そう言うトヤマさん達は、それぞれ別の方向に散らばっていく。現状の把握は大切なんだそうで、私達の役目はオブジェクトの配置場所の吟味。ナイトの再配置が私達にしか出来ない、だからオブジェクトの場所をちゃんと把握できるように私達が配置する場所を考えると言うわけだ。


「防衛を考えると、隅に配置するのが鉄板だね。キングは移動できるから良いとして、ナイトは注目を集めたいから目立つ場所かな」

「どうせ防衛するなら、一カ所に纏めた方が手っ取り早くない?」


 あれこれ考えるスラミに言う私の意見は、少し考え込んだ後採用された。色んな戦術はあると思うけど私達の戦力は少ない反面、個々が強力なのが強みだと思う。守って攻めるって考え方の方が私は動きやすいからね。

 オブジェクトはフィールドの端を背にして左側にナイト以外を纏めて置くことに決め、ナイトはフィールドの真ん中の方にする。だけどまだ置いては駄目。このバトルに自陣なんてのはないから、丁度私達の居る角の辺りにもジョンのギルドの人が調べに来ているのだ。オブジェクトは一度配置してしまうと場所を変更できない為、バレてしまうと不利になる。スタート時には自分達のキングの側に居ないといけないから、配置するのはスタート時間が迫るギリギリのタイミングがベスト。


 この時間は戦闘行為が禁止な所為か、何処に配置すんの? なんて気軽に聞いてくるジョンの子分達に、スラミが子供っぽく振る舞ってはぐらかしながら時間ギリギリまで調べていた皆と合流。

 子分達が居なくなったので、予定していた場所にオブジェクト配置を宣言して、それらがその場に現れた事を確認。ナイトは場所が離れているから目視では分からないけど、バトル専用の一度歩いた場所は表示される共有のマップにちゃんと表示されていることを確認。マップで見ると私達が居るのは南側なんだね。


「意外と小さいな。これなら家の中に隠すことも出来そうだぞ」


 ヨーナの言う通り、オブジェクトは私の身長ほどと意外と小さめ。百五十センチ位で、この市街地なら隠し場所には困らないだろう。戦闘が始まったら移動させることも考えないとね。


 移動させるならどの家が良いか、そんな相談をしている内に遂にその時が訪れた。フィールド全体に響く十秒前を知らせる声と、進むカウントダウン。開始後の行動について最後の打ち合わせをした後、その響き渡る数字がゼロになった。


『バトルスタートです!』


 その声を聞き、すぐさまセリンとリンクしてジーヌを召喚する。事前に確認しておいたところ、彼女が私のモンスターの中で最速だと聞いた為、この人選だ。


「ジーヌ、お願いね!」

「任せて!」

「私達も行くぜ!」


 元気に返事をして飛びさっていくジーヌを追って、他のメンバーも動き出す。オリハルコン性の幅広な大剣をボード代わりにして空を飛ぶヨーナは、確実に何かの影響を受けていると思う。ムラマサ、ユイナ、クイネさん、トヤマさんと次々に空を飛んで散らばっていき、サクラは何時でもクイーンに触れてキングを移動させられるように待機。スラミは召喚を繰り返す私の護衛だ。必要かどうか分からないけどね。


 ジーヌに続いて召喚するのはウォーセで、その次はしーちゃんだ。探し物には犬っぽい子達が良いと思って召喚したけど、迷うことなく一つの方向へ走っていく二頭を見ると、その選択は正しかったのかもしれない。

 防衛用にキング、戦力の要にもなるフィナやタツノ、師匠にマオを召喚。ひとまずはこれで大丈夫かな、とリンクを外して平日の夜に高天原に籠もって【精霊馴染み】を得たヨーナに連絡。直ぐにリンクしたみたいだ。


「キングとタツノはサクラ、スラミと一緒に防衛ね」

「暇そうじゃな。飽きたらしーちゃんを呼び戻すぞ」


 これは早く終わらせた方が良いかもしれない。そんな事を思うけど元々速攻で終わらせる作戦だ。ウォーセとしーちゃんが真横に駆けて行ったってことは相手のキングは今私達とは逆で、右隅に有るって事だと思う。マップを見てもウォーセ達はその周囲を探しているし、もしそれが正しければきっとキングを遠い所に動かす筈だよね。師匠達も後を追って貰うとして私も行動開始といこう。


 格好付けて手に持つ刀を地面に突き刺すと、北側五キロが土の槍で貫かれたのが此処からでも見えた。ちょっとやりすぎたかもしれない。まぁ、皆が飛んで行ったのもこの為だし、ちゃんと避けてくれただろう。PKは出来なくてもぶつかったら痛いだろうし。


『調子に乗ってたらぶつかった。訴えてやる』

『作戦なんだから、調子乗る方が悪いでしょ』


 自分に酔っていたヨーナは放っといて、バトルが終わっていないって事は、そう遠くにはキングを動かしていなかったって事か。それにしても何かおかしい。百人も居るって言ってたし、ちょっとくらいなら此方に来ても良いと思うけど。そう思った直後、私達を強烈な砲撃が襲った。


 なんとかギリギリで透明の盾を出して防げたけど、この砲撃の威力は危険だ。砲撃の後に一瞬ヤマトが見えたからきっとその砲撃だろう。あちら側の誰かが召喚の出来る精霊とリンクしているのかな? いや、ただ単にテイム石を持ち込んでただけか。私は基本出しっぱなしだから忘れてたけど、それなら転移と違って召喚はありな筈だよね。


「どうしますの? 相手は何らかの方法でステルスしてますわよ」

「防御はキングに任せると良い。今と同じ事が出来る」


 タツノのその言葉に私も再び攻勢に出ようと思う。先ずヨーナに連絡してリンクを解除してもらい、セリンとリンクしてアマテラスを召喚する。


「あら、おっきな相手。ぶっ放しましょうか」


 アマテラスは私が何をしたいか分かっているようで話が早い。早速アマテラスを憑依させ、キングの後ろに移動して準備開始。


「な、なんか空気が震える感じがするけど、何それ」

「分かんない」


 スラミは私のしていることが気になるみたいだけど、私も力を溜めているだけなのだ。正直、目の前に浮かぶバチバチとした光の球が何なのか分からない。ヤマトの砲撃はキングが全て防いでくれているのもあって、安心してチャージ出来る分どんどん大きくなってる気がする。


 そろそろ良いかな、と言ったところでキングの上へ飛び上がり、チャージした力を解き放つ。極太のビームとなって放たれたそれは、同じタイミングで放たれたヤマトの砲撃も飲み込み、そのままバトルを終了させた。どうやらキングはヤマトに積んでいたみたい。


 バトルが終わりそれぞれが元の場所に戻った後、なんでヤマトが見えなかったのかジョンに聞いてみたら、百人の内九十人位総出でステルス系の魔法をヤマト前面に張っていたらしい。子分達の努力が涙ぐましいや。


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― 新着の感想 ―
[一言] 天照大神は太陽の神様だから、ソーラーレイとかも、拳の一撃に込めそう…………… 後は、浄化?ww
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