81. 温泉と言えば!
もう不幸なことが起こらないようにと、まだ水場で遊んでいるらしい破廉恥水着達を、恐る恐るも注意し行ってみたところ、しょんぼり落ち込みながらも視線は破廉恥水着達から逸らさない男を見つけた。男の性とは厄介な物だね。そう感じながらクイネさんを水場に向かって蹴飛ばした後、二人にその水着は禁止と声を掛けサクラとヨーナと共にゲームセンターEXに行ってみることにした。
ゲームセンターEXは、そういう名前の施設が出来た訳ではなく、冒険者ギルドの受付から専用のサーバーに移動するスタイルみたい。だから必然的に冒険者ギルドに行かなきゃならない訳だけど、そうなると当然この人に遭遇する事になる。水着を受け取り、今まさに帰ろうとしているトヤマさんだ。
そんなトヤマさんに再びせっつかされ、あの二人がちゃんと着替えてたらいいなぁ、と思いながらログハウスに送ってあげる。クイネさんが水着を着たトヤマさんにどんな反応を起こすか、果たしてクイネさんがセットの水着を着るのか、ちょっと気になるけどそこは野暮なことだよね。
さぁ、お楽しみのゲームセンターEXだ。冒険者ギルドはギルドの事もあって賑わっているけど、ゲームセンターEXに関しては専用の受付が新しく出来たようで、そちらには多少の列は出来ているもののそう長く待つことは無さそうだ。水着は通常の受付じゃないと駄目みたいだけど、私達には必要ないものだからね。サクラだけ列を外れて向かおうとするけど、そこはヨーナに止められる。譲渡出来たとしても私は着ないから。
メニューに追加されたゲームセンターEXで利用できるゲームの一覧。これは受付で時間が掛からないようにする為のものだろうけど、そうするだけあって選択できるゲーム数は多い。二人と相談してみたところ、先ずはドラゴンをタイトルに持つあのゲームの三作目をやってみることにした。
基本的に一人用が多い中で、このゲームは途中から受付の時に設定した人達と合流出来るんだそう。これなら皆で出来るね、なんて話していると受付の順番がやってきて、私をホストとして合流する事に。ターン制がどうなっているか楽しみだね。
「面白いけどさ、それぞれの良さってのもあるよな」
「そうですわね。何でもVRにすれば良いって訳はないですものね」
何度か受付でゲームを変えながら、一通りやってみての二人の感想はこんなもの。私としてはターン制の戦闘がある意味やりやすかったかな。一ターンに自分の攻撃は一回ほどだけど、棒立ちになることなく自由に動けたし、やることが明確になる分動きやすい気がしたんだよね。でも、それはRPGについての感想だ。
リストあったRPG以外の物、スクロールアクションと格闘ゲームをやってみた所、思いの外スクロールアクションが面白かった。甲羅を避けるのはスリルがあったし、巨大化するのも楽しかった。ちょっとしたアトラクションみたいに楽しめたよ。
問題は格ゲー。これは選択したキャラクターの技が使えるようになり、頭の中でコンボ入力するようにイメージすると技が発動する。そんなアレンジだったけど、私がヨーナやサクラに勝てるなんて事はなかった。コントローラーの操作じゃなければ、なんて儚い夢だった。
色んな感想を持ちながらも、これはこれで面白いもの。結局夜になるまでレースゲームで時間を潰し、夕食の後はお預けしたままで暴走しても悪いから温泉に向かうことにした。
「湯気モードじゃありませんのね」
何故あれだけ水着、水着と言っていたのに、いざ温泉となると湯気モードを期待するのか。そこまで期待に答えるつもりは無いけどね。それでもせめてスク水、なんて要望には応えてあげる。恥ずかしくはないよ、着たのは旧式だけど一応現役だし。
スク水を着た三人組は周りにはどう映っているだろう? そんな疑問も温泉の気持ちよさに溶けていき、こんな温泉が自分の拠点にもあればなぁと、そんな欲が湧いてくる。
「アオイならそんくらい出来るだろ」
ボソッと漏らした私の欲望は、ヨーナの一言で解決した。先ずはログハウスかな、隅の方に露天風呂を造ってみよう。
温泉の熱も相まって、サクラがやたらと引っ付いてくるのも鬱陶しくなってきた。どうせ言っても離れないだろうし、引き離してくれるだろうヨーナはそこら辺をプカプカと漂い中。ちょっと気分転換に温泉の底でも見てみようかな。
潜るとドラゴンに襲われる。そんな事を聞いたし、ちょっと気になるんだよね。早速視界を徐々に底の方へと進めていくと、途中で白いドラゴンが寝ていた。このドラゴンは社員さんだった筈だけど、今は入っていないのかな? オートで襲うようにでもなっているのかもしれない。
最早深海と言っても良いくらいにまで水深が下がっていく視界に、ちょっぴり飽きてきた。そんな時に急に視界が開けて少し驚く。さっきまでの白濁に濁った水中から、薄暗い洞窟へと変わった視界にドキドキしながらも、抱きついてこようとするサクラを抑えつつ視界だけの探索を進めていく。
所々が発光する洞窟はどうやら一本道のよう。しかしその道のりは長く、ちんたらしていたらきっとヨーナが温泉に浸かるのを飽きる方が先だ。サクラも大人しくなったようなので、思い切って視界を飛ばすスピードを速める。ちょっぴり気持ち悪さを感じて来たそんな時、ゴンッと言う音が聞こえ慌てて視界を戻してみると、私の前方にサクラがうつ伏せで浮かんでいた。
「今のこいつの前で無防備になると危険だぞ?」
何だろう、何をされそうになったのかも怖くて聞けないや。そうちょっと恐々サクラを見ると、ヨーナがちょっと悪戯っぽい笑顔で猫耳カチューシャを着けようとしていた、なんて言うどうしようもない行動な答えを教えてくれた。いや、どうしようもなくない。折角の狐耳に猫耳を合わせようとするなんて許せないね。それぞれ別だから可愛いのに。
サクラの近くに漂う猫耳カチューシャをそっとサクラに装着して、ヨーナと共に温泉からあがると、置いてかないでとサクラも慌てて追いかけてきた。どうやらただノリで浮かんでいただけみたい。
「折角だし、卓球やるか!」
何が折角か分からないけど、楽しそうだし反対はしない。でも、運動したらまた温泉入りたくなっちゃいそうだよね。そしたら造れば良いんだけどさ。良い機会だし。
ログハウスに戻ったところで、旅館にあるような落ち着いた浴衣に着替え、室内運動場に新しく卓球場を創った。人数合わせの為に、同じく浴衣を着せたジーヌを仲間に加えて早速、プレイ開始。脱衣、脱衣チラリ! と暴走しかけるサクラはヨーナに任せ、私はジーヌとひたすらラリー。今のサクラと温泉に行くのは早まったかな? もうすでにたがが外れそうなのか、ヨーナと激戦を繰り広げている。
「よっと、ジーヌ上手いね」
「軌道操ってるもん」
ラリーを続けながらも絶妙な位置に来る球に、たまらずジーヌを褒めると狡をしていたことが判明。いや、それにしても器用だよ。
「ちょっと本気でやろう、よっ!」
そう言って繰り出される打球は、本来の卓球以上に早く当たったテーブル、かすったネットからは煙が立っているように見える。それを軽々打ち返せるのはきっと称号のお陰か、最早球の影しか見えないようなラリーに終わりは来るのだろうか?
「わひゃぁ!? な、なに!?」
そんなラリーの終わりは意外なものだった。私の胸元に浴衣の隙間から何かが入ってきたのだ。感触から卓球の球だろうそれを、ジーヌの球を打ち返せないのも気にせずラケットを置き、取り出そうとするとサクラから待ったがかかった。
「わ、わたくしがとりだしまずっ!?」
どこか棒読みの言葉を発しながら近づくサクラは、ヨーナの打った強烈な打球に沈んだ。今日のサクラはどうしたんだろうか?
「こいつ、昨日から徹夜してんだよ。もう寝かした方が良いかもな」
集中力が切れてきたんだろう、徹夜なんてするものじゃないね。明日はギルドの事があるし、今日はちゃんと寝てもらわないと。それはそうと、ゲームでのヨーナは手がでるのが早い気がする。そんなに血の気が多かったっけ? 本人に聞いてみると、少し考えた後ごめんと謝ってきた。
「暴力的な女騎士ってありだと思ってた」
この人はどこまでロールプレイ……、いやきっと深く考えてないと思う。どうせ探検の時みたいに何かに影響されてたんだろうね。影響されやすいのも考え物、いや私も人のこと言えないか。




