73. 体育祭お疲れ様キャンプ
優勝報酬についての説明があった閉会式も終わり、これで体育祭イベントもお終い。しかし、学園では夜まで続く文化祭を楽しもうと、スタジアムに居た人たちも校舎内、グラウンド等に散らばっていった。夜に予定されるキャンプファイアーまでに、お気に入りの精霊と仲良くなりたい、なんて魂胆もあることだろう。
「あっはっはっ! いやぁ、派手に燃やされたねぇ」
そんな中、私達は折角作ったキャンプ場を生かそうと、皆を誘ってお疲れ様会を開催。会は進み、お酒が入ったムラマサは少し厄介だけど、楽しそうなら何よりだ。
この会には、ログハウス住人の他、クイネさんとジョンの赤組のメンバー以外にも、ムラマサとスラミが参加している。ムラマサは競技が終わった後に誘ったんだけど、スラミが来たのはサクラがうっかり口を滑らせていたのが原因。モンスター達はログハウスで今日の映像を見返すらしいし、ユイナが居ないのは残念だけど、また今度休みがある時にやる事にしようか。
「ムラマサは【プロビデンスな目】持ってたの?」
「そそ、元々は心眼を持ってたんだけどね。変なの見たら取得したの」
堅苦しいのは無しで、と改めて自己紹介したムラマサに競技中に思ったことを聞いてみると、予想通りの答えだった。高天原の事もあるから、その時接触していればねぇ、なんて話しを振ってみれば絶対に触りたくない奴だったとか。
そう言われるとすごく気になるよね。でも、聞き出そうとしてもアオイにはまだ早いの一点張り。サクラは何か感づいたみたいだけど、コラボがどうとかって言って教えてはくれなさそう。これはいつか自分で見つけなければならないよね。
「はうぅ、この触り心地最高だよぉ」
皆が焼き肉に酒にと盛り上がる中、ただ一人ヨーカンに抱き付きとろけるスラミ。自己紹介の時に驚いたけど、小柄な割にとっくに成人は越えてる年齢らしい。この人のスライム好きが相当なのは見ていても分かるけど、自分で原初の澱みはテイムしていないそう。ゴッドテイム石は持っているものの、あの大陸には他の誘惑が多く思うように進められないみたいだ。
おすすめは何か聞いてみたら、電気スライムがお気に入り何だそう。触れると微かにピリッと来る感じがたまらないんだとか。しかし、その質問は地雷だったようだ。スラミのスライム話が終わらない。スライム系モンスターの分布から能力、特性。挙げ句の果てに好物と、触ると喜ぶポイントまで。この人のスライム愛は半端ない。
「アオイは称号の効果何にしたんだ?」
見かねたジョンが話しを振って救出してくれた。話しを遮られたスラミは残念そうだけど、話題となる称号の効果は気になるらしく、どうなの、どうなのと興味津々です答えを待っている。
称号の効果とは体育祭優勝の報酬の事だ。報酬は【赤き勝者】という称号で、その効果はある程度自分で決めることが出来ると言うもの。設定できない効果はちゃんと無効ですと表示され、再度決めることが出来るし、確認画面もあるから色々試してみることも出来る。つまり、まだ決めてないんだよね。
「どんなのが良いのかな?」
「俺は水上、水中活動可能にしたな」
海の男らしい効果だよね。いちいち魔法を使うのも消費が気になるというからと言うけど、もし決めた効果と同じ効果を持つ称号があったらと思うと、なかなか決められないんだよね。
「テイム石をゴッドテイム石に変換できる、そんなのはどうかしら?」
流石教師。そう思えてしまうような、私のことを考えたアドバイスだ。でも手には入りにくいゴッドテイム石を簡単に入手出来るようになる、そんな事設定出来るのかな? ……、出来てしまった。
ただし、制約として譲渡不可。そして、モンスターの貸し出しについても制限が掛かるようになるみたい。この制限についてはモンスターに聞けば詳しく分かるかな。
「あああぁ、羨ましすぎる。原初の澱み楽にテイムし放題なんてぇぇぇ」
若干スラミが発狂し掛かっているけど、触れないで置こう。下手に触れたらきっと要求される。私はあの場所に籠もりたくないよ。でも、家のゴーレム系モンスター全員に原初の澱みを融合させるのも魅力的。そこだけは検討しよう。
「このまま此処の大陸のラスボスでもテイムしてくりゃいいんじゃねーの。話の種には良いだろ?」
そんな事言うヨーナは肉を忙しそうに焼き続けていて、着いてきてくれる気は無さそう。サクラは団体戦で自爆したクイネさんをいじり始めたし、お酒の入った人達を連れていくのは面倒臭そう。
一人で行くなら早く終わらせた方がいいよね。テイムするかは見てから決めればいいし、少し準備をしてから行こうかな。憑依とリンクするだけで良いとして、倒す事も考えてあれを用意しておくのがいいかな。
「よく此処まで来、あたっ!?」
待ちかまえていた禍々しい精霊。哀れかもしれないけど、称号のお陰でモンスターの特性に左右されずに攻撃できることを良いことに、即死マスの石を投げつけて討伐完了。此処に来るのも順序を無視して転移で一発何だし、こんな終わり方でも良いと思う。悪いのは例を見せたサクラだ。
「酷いだろ!? これでは我は出落ちではな、あたっ!」
復活して早々、再度石を当てて即死させてみる。それでも直ぐ復活するみたいで、今度は膝を抱えて落ち込んでしまった。
「これ、倒したことになってるの?」
「当然であろう。しかし、我を倒したところで何の意味もないぞ。所謂一つの隠しボスだからな」
え? もしかして私、勘違いしてたの? ラスボスじゃないの?
「そもそも、ちゃんと順序通りに火山が雪山に行っていればこの騒動の話を聞けたものを」
そんな小言を言いつつも、ちゃんと騒動の話は自己紹介も交えて聞かせてくれた。禍々しい精霊、マルンが言うには今回のモンスターの凶暴化は根の国が関わっているんだそう。根の国の事については言葉を濁していたけど、後でアマテラスにでも聞いてみようかな?
「それよりどうだ、我とリンクしてみんか? 我は強いぞぅ。何せ空間を操るからな!」
「間に合ってます」
ふんぞり返るマルンは置いといて、やるべき事は多分終わったから帰ろう。土産話は出来たし、お土産はそれぐらいで十分だよね。
「お帰りですわ」
「ただいま。今どんな状況?」
空飛ぶ島のキャンプ場に戻ってみたら、ちょっとした奇妙な光景が見れた。それは、ヨーナが目隠しして大剣を振り回しているもので、偶にムラマサが石ころを投げつけている。
「心眼の取得を目指しているそうですわ」
出迎えてくれたサクラに事のあらましを聞けば、ラスボスの話題ついでにアマテラスの事を話し、【プロビデンスな目】取得のために協力してもらっているんだとか。
「サクラはやらないの?」
「私はもう取得しましたわ。丁度アマテラスも此処に居たようですし」
なんでも魔眼と言うものを持っていため、特殊な視界というのは問題なかったらしい。もうサクラは何をしているか分かんないね。
話しを聞くと、魔眼と言うのは複数あるらしく、サクラのは好きな場所を魔法の発動基点に出来ると言うものみたい。敵の背後でいきなり爆発、なんてのも簡単に出来るそうだし、団体戦で使っていた念動力も実は魔眼を利用した物みたい。ダークエルフじゃなくて、ダークなエルフになりそうだね?
「それで、どうでしたの?」
その質問はこの大陸のラスボスの事だよね。ラスボスなんて居なかったけど。そんなサクラの質問が気になったのか、他の人も気になって集まってきたので聞いたことをそのまま説明し、ついでにのんびり肉を食べていたアマテラスに根の国について聞いてみた。
「正直まだ早い事よ? どうしても知りたいなら、海の果てを目指してみたら?」
そんなアマテラスの言葉を皆に伝えると、露骨に燃え始めるジョン。その背後に見える炎はきっとアマテラスのイタズラだ。その言葉もジョンの方を向いて言っていたしね。
「こうしちゃ居られねぇ! 直ぐに海へ出るぜ!」
そう言ってすぐさまヤマトを石からだして出航していくジョンを見送り、この件はジョンに任せようとそれぞれ肉を焼いたり食べたりを始める皆。その中で一人、高天原に行きたいと言い出す人がいた。
言い出したのはクイネさん。そして自分の他にもトヤマさんを転移させて欲しいと言う。その心はあれだよね。キャンプも盛り上がって参りました!




