69. 危険なあの子でパワーアップ
修行に明け暮れる日々も落ち着き、クイネさんとユイナも太極図及び【プロビデンスな目】を得ることが出来た。太極図は高天原様々だし、【プロビデンスな目】もアマテラスが側に居たことで楽にゲット出来た。ただ、アマテラスは私とモンスター以外は普通には見えないみたい。サクラやヨーナにも見えていないようなので、私の更なる力も隠し通す事が出来そうだ。
称号の【精霊馴染み】も取得出来たけど、これはマスを見ることが出来る以外にも、精霊がどこに居ても会話、リンクが出来るようになると言う物だった。会話はフレンド通信みたいなものだけど、離れた所に居てもリンクが出来るのは便利だよね。
そんな感じで準備も万全に近づき、遂に明日に迫った体育祭。イベントの追加情報も昨日、土曜日に告知されて今では精霊学園も大層盛り上がっているところだと思う。その日に競技の打ち合わせも、応援合戦の演目の決定、リハーサルをも済ませた赤組メンバーもきっとその中に居る事だろう。高天原って本当に便利。
その追加情報とは、学園の精霊達が行う文化祭。今日と明日行われる体育祭のおまけイベントで、来月の文化の日にはプレイヤー主催の文化祭イベントも行われるらしい。
それが何故盛り上がっているかと言えば、体育祭への最後の駆け込みも理由に上げられるだろうね。何でも期間中は親密度が上がりやすい、と言うかリンク可能になるまでの規定値が緩くなっているらしく、今の内に仲良くなって体育祭を万全の状態で迎えようって人が大層張り切って各出し物を回っていると言う訳だ。
そんな訳で今頃クイネさんやユイナ、サクラやヨーナ達も精霊達と仲良くなるという目的もあって文化祭を楽しんでいる頃であろう。だけど私はお留守番だ。文化祭も楽しそうだし、行ってみたい思いはある。だけど、そんな盛り上がっている場だからこそ行きたくはないのだ。だってあの怪しい精霊が怖いんだもん。
そんな思いもあり文化祭に行くことは諦め、これから何しようかと悩んみながらヨーカンに乗ってポヨンポヨンと跳ねて遊ぶ。でもそれだけでは寂しいので、とりあえず気になっている事を聞いてみたいと思う。今気になってるのはアマテラスを憑依させた時の力の事。太陽の力としか聞いてないから具体的に何が出来るか知りたいんだよね。
何かと説明を面倒くさがり、端折りがちにになるアマテラスに聞いてみると、逆にプラズマの事をどれだけ知っているかと聞かれた。ここで見栄を張っても仕方ないので、正直に名前だけならと答える。
私は理系ではない。文系かと言われても疑問しか出てこないけどね。だから、そんな専門的な説明も出来るわけもなく、そもそも興味もない。だからプラズマと聞かれてもどっかの悪の組織しか出てこないのだ。
「……、熱と光、雷、後は重力も操れると思っていれば良いわ」
少し悩んだ後に出た回答は、非常に分かりやすいものだった。熱ってことは冷やしたり、炎を出したりする事も出来るのかな? 雷も電気って思えば良いんだよね? そんな簡単な答えにも疑問は出てきてしまうけど、後は使いってみれば分かることか。
そうと決まれば高天原を冒険してみよう。今の所修行でしか使ってないから、一度隅々まで巡ってみたいんだよね。
ふわふわにはふわふわを、そんな理由からマザーシープなんて言う馬鹿でかいふわふわな羊のジープに乗って高天原の上空を漂い中。他のお供はアマテラスとジーヌ。ジーヌは風を起こす為にわざわざ連れてきたけど、ふわふわと浮かぶジープの乗り心地には満足してるよう。
そんな風に漂うジープに乗りながら、冒険とも言えない冒険をしている訳だけど、ここ高天原は見た目はただの雲の大地が一面に広がっているだけ。ただし、ある場所に立つと無限に桃が現れる場所がある。それはハニワンダー道場の変わりにも使える、大変便利なスポット何だけど、それ以上に私のモンスターにはドロップに人気が集まっている。
ドロップするのは桃(酒)という私には多分縁のない物、簡単に言えば酒の味がする桃だね。当然ドロップしたそれは師匠たちに献上するようにしているけど、それが大層人気があるのだ。しかし、その桃が出る場所は一時間毎にランダムで場所が変わってしまうし、【プロビデンスな目】をもってしても見ることは出来ないため、毎回根気良く探す必要があったのは大変だった。それでも、修行にも良い場所だからって必死に探して回ったんだけどね。
そんな事があっても、この高天原の端には辿り着く事が出来なかった。だからこそ今回はその端っこに辿り着いて見せたいんだよね。
「高天原の端っこはどんな所かな?」
「端なんてないわ。だって球体だもの」
淡い冒険心はアマテラスによって粉々に砕かれてしまった。
「大人しく文化祭行けば良いのに。メイリルが何とかしてくれるんでしょ?」
見られてるだけで精神的に辛い物があるんだけどね。でも、どんな出し物があるか気になっているのも事実。覚悟を決めて行ってみようか。楽しんじゃえばそんな視線も気になんないかもしれないし、困ったときは転移で逃げれば良いか。よし! そうと決まれば文化祭へレッツ、ゴー!
「良いですの! 最高ですの! この尻尾! はむはむ、はむはむ!」
「ぎゃぁぁぁっ!? 尻尾たべないでぇ!?」
一度寮の部屋に行ってから、学園に向かって寮から出てみたら即これだ。待ち構えてたよこいつ! 私だけで転移しても噛み付いたまま離れないし! どうなってんの!?
「この子は無理ですね。気が済むまで待っていてください」
頼みの綱のメイリルからも見放されてしまった。この子の気が済むまでこのままなのか。うぅ、尻尾が甘噛みされ続ける感じ、耐えれるかなぁ。
こんな所を他のプレイヤーに見られたくはないので、お供のメイリルとフィナと共にログハウスに戻り、十分ほどして漸く尻尾を放してもらえた。噛みついていた犯人は金髪の縦ロールが麗しいお嬢様風な子で、見た目だけだととてもこんな事をするようには思えない。今は落ち着いて澄ました表情をしているけど、いつ暴走しだすか分からない以上、警戒は怠らないようにしないと。
「そう警戒しなくても良いのです。私はこう見えて我慢強さには定評があるのです。ふふん」
「どの口が言うのか」
正直、全く理解できない。せめて口の端から垂れる涎を拭いてから言ってもらいたい。そんな視線を感じたのか、ポケットからハンカチを取り出し口を拭く精霊の女の子。その仕草はお嬢様らしいけど、行動や口調もあって最早ぐちゃぐちゃだ。
「後悔は絶対させないので、どうかお側に置いてくださいですの」
「行動はどうあれ、この子の能力は有能ですよ」
メイリルが説明してくれたこの子の能力は、接着とも引力ともとれるもの。引き寄せ引っ付き、離れない。確かに強力だ。それもあって、尻尾に噛みついたときどうしようもなかったんだとか。
「うーん、分かった。メリットを受け入れるよ」
「ありがとうですの。私はルーナ、よろしくですの。……、ヒャッハッー! もふもふ祭りですのーっ!!」
自己紹介もそこそこに、扉を勢いよく開け放ち外へと駆け出すルーナ。外からはもふもふモンスター達の叫び声が聞こえてくる。若干早まったかも、なんて思うけど能力も魅力的だし、モンスター達には少しの間我慢してもらおう。
ついでに叫び声を聞いたタツノが慌てて飛び出していったから、何とかルーナを押さえていてくれるかもしれない。最悪、悲劇が増えるだけかもしれないけどね。折角タツノは落ち着いてきたのに、変な化学反応が起きたらどうしよう。
「私達は文化祭に行こっか」
そう告げて、メイリルとフィナ。そして行きたくなったのか、着いていくと言うタツミ、マオと共にそのまま転移で学園に行く。問題はとりあえず先送りだね。今日は楽しんで明日の為に英気を養おう。温泉とかないかな?




