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68. 神の力を得たチート

 ユイナも四時間の瞑想を終え、無事にタヌキをテイムすることが出来た。名前を田子作にしたのは、茅葺き屋根の景色が気に入ったからだそう。

 そんなユイナも転移の練習を繰り返して仙女となり、称号を得るための本格的な修行へと突入。ユイナの指導役にタツノを、クイネさんには師匠をつけて皆揃ってハニワンダー道場へ。そこで一日籠もり修行に明け暮れた。


 私の場合は【精霊馴染み】を取るためにハニワンダー道場に行ったんだけど、当然まだ取るまでに至っていない。それでも、後一日半くらいの時間で取得も可能だ。でも、私だけ万全になっても意味がないからね。日曜日と言う今日の日に、もっと修行にぴったりな所は無いものか、と探してみることにした。


「社長! 宝探しイベントの時みたいな、時間が速く進むみたいな所って無いの?」

「あるぜ」


 修行と言えばあれでしょ! そう思った私はスールガの喫茶店に行き、思い切って社長に聞いてみた。答えはイエス。やっぱり困ったときはNPCに聞くのが基本なんだよね。


 社長に詳しく聞いてみれば、その場所に行くには私も知っているような方法だった。知っているけどやってはいない、その方法とは特殊な視界でのみ見ることが出来る、神という分類にいる人達に連れてってもらうと言うもの。あの時ビリケン様に接触していれば、もっと早くに行けた訳だ。


 過去の事を残念がっても仕方ないので、改めて探してみることにした。ログハウスに戻り、プルプルと暇そうにしていたヨーカンに座ると、ゲーム観戦中のフィナを呼んで膝の上に乗せる。最後にサイドテーブルを出して飲み物をセット。これでもし長期戦になったとしても苦では無いはずだ。サボらずにいられればね。

 フィナを抱えているのは少しでも幸運を分けて貰うため。効果があるかは定かではないけど、一種の現担ぎと思っておけばいいからね。


 抜群の気持ちよさに負けそうになりつつも、気合いを入れ直して視界を飛ばす。先ずは神様と言えば此処、伊勢神宮のある場所に建てられている小さな神社だ。日曜日と言うこともあり、人もそれなりに居るみたい。体育祭に向けて、効果を吟味している人達も居るんだろう。

 その中で異様な人を見つけた。天女と思わしき格好をした美しい女性が、にこやかに此方に手を振っているのだ。思わずフィナの頭を撫でて膝から降ろし、直ぐに女性の側へ転移しようと思ったところで少し疑問が生まれた。特殊な視界でしか見れないのなら視界を保ったままじゃないと駄目なのかな?


 接触なら触れるだけでも良いかな、と思い女性に向けて手を伸ばしてみると、あろう事か女性の方からその手を掴み、物凄い力で引っ張ってきた。


「うわっ!? あぶっ!?」


 そして、引っ張られた勢いで何かふわふわな物にぶつかってしまった。それが何かと思い見てみると、そこは一面雲のような地面。そして、目の前には腰に手を当て微笑んでいる女性。その女性は楽しそうな声で私にこう告げた。


「ようこそ! 高天原へ!」






 アマテラスと名乗る女性に此処についての話しを聞いた後、町があるというので行ってみることに。此処についての話しに関しては、時間の流れが違うだけで、特に何があるって訳ではないらしい。時間の流れはイベントの時と同じで、現実の一時間が此処では一日。

 辿り着いた町は和風の平屋が建ち並ぶ落ち着いた雰囲気だけど、妙に落ち着きすぎている。それもその筈、此処には誰も居なかったのだ。時間の流れが違う為、通常のフィールドとは連絡が取れない事が一番に上げられるみたい。


「やっぱり、色んなプレイヤーの話が聞きたいし、見たいもの」


 神様達専用の場所ではあるものの、折角のAI人生なのだから色んなものを見聞きしたいらしい。


 折角こんなに時間があるんだしね、と適当にそこら辺の平屋に入りお茶の準備を始めるアマテラス。これは付き合えっていう事なんだろう。中に入って廊下を進み、庭が見える縁側に腰掛けアマテラスが差し出す湯飲みを受け取り口につける。お茶かと思ったら烏龍茶だった。烏繋がりかな?


「何で手を振ってたの?」

「触れ合いたい派は手を振るのが決まりだもの。テイムしてしまっても良いのよ?」


 神様って色んなタイプが居るんだなって思うまもなく、何とも恐れ多い提案をしてきた。


「何か良いことでもあるの?」

「そうねぇ、ラスボスと戦うためには必要かしら」


 さらっととんでもないことぶっ込んで来たよこの神様。勿論、それ以外でも憑依という機能が使えるようになる称号も得られるそうなので、デメリットになるようなものはどこにもない。ただ一つ、ゴッドテイム石を使わなきゃならないのが痛いかな?


 お互い烏龍茶を飲み終わるのを待ち、その後アマテラスにゴッドテイム石を当ててテイム完了。名前は付けられないみたいだけど、称号【アマテラスの依代】を得た。効果は話しの通り憑依の機能を得るもので、憑依は基本的に精霊のリンクと似たような物だ。でも、威力なんかは桁違い何だろうなぁ。


 アマテラスを外に出してみると、この町の家は一つまでなら自分の物に出来ると教えてもらえた。それは魅力的だけど、今やることではないよね。此処に家を持てばログハウスからでも行けるようになってしまうし、それはサクラ達に塩を送る事になってしまう。今頃それぞれ自分のチームの為に頑張っているだろうし、体育祭が終わるまでは私が皆を転移で連れていくしかないかな?


「此処へは転移で来れるの?」

「私を憑依させていれば可能よ。勿論、同行者が居てもね」


 それなら良かったよ。一度戻ってアマテラスを紹介しつつ、クイネさんを呼んで修行しよう。生憎ユイナは今日仕事が入っているようで、ログイン出来るのは夜からになるそうだ。その時にはちゃんとログハウスにでも居るようにしよう。






「ははっ! こんなにも心躍ることは早々無いな!」


 ログハウスにて他のモンスターへのアマテラスの紹介も終わり、クイネさんに連絡してハニワンダー道場での修行を切り上げて此方に来てもらった。そして、クイネさんへの説明も終わったところで私とクイネさんの他タツノ、師匠、フィナ、マオ、ミスノ、先生の面子で高天原へ行くことに。


 この面子になったのは師匠の望んだ事だ。先生にはクイネさんの修行者を頼み今、私の目の前に立つ師匠は両手に刀を持ち準備万端。対して私もフル装備だ。

 右手には金、左手には銀に輝く刀を持ち、足には片方がクリスタルで、もう片方は銀色をした甲懸。左目は金色に変わり背には光輪を背負って万全の状態。甲懸は攻撃に使うつもりでやったら出来たものだけど、光輪はアマテラスを憑依させて現れたものだ。正面から見たら後光が差してたりするのかな?

 ゴーレムによるフル装備に精霊とのリンク、おまけに憑依。言うなれば、新フルアーマーアオイちゃんスーパーだ。これをサクラとヨーナが見たら、魔王最終形態なんて言うんだろうなぁ。確かに魔王も刀になってるから否定は出来ないけど、神様もいるからなかなかカオスな仕上がりだと思う。


 こんな状況になったのも此処では同意があればPvPが出来ると、師匠がノリノリになったからだ。アマテラスは特に何も無いなんて風に言っていたけど、他のモンスターに聞けば色々と便利な物もあったりするらしい。


「では、いくぞっ!!」


 そう言う師匠が動き出す前にビーム、と言うか光の奔流とでも言うような物を放つ。アマテラスの力は太陽の力。それをどう扱うかはいまいち分かってないだけに、どうしても使い方が単純になってしまう。太極図もそうだけど、なにが出来るって決まってないと、どうしても単純な使い方になっちゃうよね。それでも威力は十分だと思う。師匠もそれが分かっているのか、刀で弾こうなど思わず横に跳ぶことで躱わしつつ、一瞬で私との間合いを詰める。


 師匠の振るう右の刀を左の刀で受け、間をおかず繰り出される左の斬撃を右の刀で受けたところで透かさず光を放つ。瞬時に避けた師匠を見て背後に転移し、光を纏う刀をその背中に振るう。

 師匠の反応は速く、それは簡単に受け止められるもその背後から私の分身が斬り掛かり、この勝負もこれで終了。決着を告げるブザーを聞く師匠はどこか満足そうだ。


「勝てない相手と戦うのは楽しいものだ」


 それは暗にクイネさんの相手は詰まらないって言ってるのかな? クイネさん的にも先生との修行の方がやりやすそうなのは、近くで行われる二人の戦闘を見ても分かる。でも、経験的には師匠の方が大きそうだからそこは我慢してもらおう。


「なあ、ご主人。ゴーレムを装備しているならもっと大胆に動いても良いのではないか?」


 もっと能力を生かせって事かな? そう思い師匠に聞いてみると、それもあるけど一番はフィナの特性だと言う。ゴーレムを装備した時にゴーレムの能力を扱えると言うのは、どうやら特性も一緒くたにされているみたい。つまり、フィナを装備していれば私はヤドリギ装備でしかダメージを受けないわけだ。師匠が言いたいのは、受けることは考えずに攻撃に専念しろって事か。ただ単に小細工は要らんと言っているだけだと思うけどね。この戦闘狂め。

 

 はぁ、このままじゃ師匠の楽しみのための修行になりそうだ。でも、体育祭ももう来週に迫ってる。私以上にクイネさんとユイナには頑張ってもらわないとね。目指すは確実な優勝なのです!


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