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64. 快適な移動の為に

 寮の部屋はリビングと寝室という簡単な作り。リビングにはキッチンも付いていて、お風呂なんかはラウンジから続く大浴場があるみたい。寝室には勿論ベッドが三つ。

 よくよく考えればこのベッドで寝る事なんてそうそう無いだろうし、メイリルは私にくっついて来るみたいだから、基本的にはログハウスが中心になるかもしれない。単に別荘が増えただけな感じだね。


「この後、私は転移マーカーを集めて来ますわ」

「じゃあ、私も。アオイはポイント稼ぎ頼むな」


 相談も何もなかった。三人用と言うこともありなかなか広々としたリビングにて、備え付けのテーブルにお菓子と紅茶を出しているところでサクラに先手を取られてしまった。そもそもそうなるのが当たり前みたいな物だけどね。


 一応組み分けとして、ヨーナとタツノ、マオ。サクラと師匠、ミスノが組んでそれぞれツキミヤとアトラに行くこととなった。私はタツミとフィナ、そしてメイリルとポイント稼ぎをした後、余裕があれば祭り村へ行く予定。


 紅茶も飲み終わり、お菓子にも満足したところでそれぞれ行動開始する事に。サクラから、どうせなら村も見つけてしまっても良いのですわよ、なんて言われてしまったけど、そもそもここからでも見る事も出来るし、戦闘ついでにてくてく行くのも良いかもしれない。


 メイリルに転移で門の所まで連れてってもらい、適当にモンスターを倒しながらてくてくと森を進む。目的地は坑道から山沿いに暫く歩いた先にある村。それなりに距離はあるから夜までに着けば良い方かな。あくまでポイント稼ぎがメインだから拘るつもりは無いけどね。


「これ、私要ります?」


 メイリルとリンクし、フィナを刀にして持つフルアーマーアオイちゃんの前に立ちふさがるモンスターなど居る訳が無く。ただ後ろを着いて歩くタツミは大層暇そう。

 バフのマスではモンスターを吹き飛ばし、それ以外のマスでは刀を振らずして斬り伏せ快調に進んでいる所為か、お喋りする事すら忘れていた為たまらず声を掛けたんだろう。ごめんねタツミ。


「改めて思うと、やっぱり大陸は広いよね」

「大陸ですから当たり前ですよ」


 大陸は一番長いところで、端から端まで九千キロあるからね。これを歩こうとなると、相当な大冒険になってしまう。他の大陸なら飛んだり、馬を走らせたりと色々な移動手段があるから苦にはならない。でも、この大陸じゃそれも無理。マスの存在があるからね。


「ご主人様は気付きませんか?」

「?」


 タツミの言葉はどういう意味なんだろう? おっと、考え事しながら歩いていたら即死マス踏んじゃったよ。うっかり、うっか、り?


「何で死んでないのっ!?」


 いや、良いことなんだけどさ。即死は状態異常じゃないだろうし、アクセサリーじゃ防げないと思うんだけど。フィナは装備しているから無事だけど、フィナの特性であっても防げないだろう。あっ! もしかして……。


「リンクしてるとマスの効果を受けないの?」

『正解です!』


 私の中のメイリルが弾むような声で正解をくれた。それならそうと早く言ってくれれば良かったのに、と思えば本人的には何時気付くかドキドキしてたんだそう。この子のキャラがよく分からない。


 設定的にはリンクする事で、自分自身がマスのようになるんだとか。つまり縄張りだね。そうすることで、互いに干渉出来なくなるというものだそう。

 それなら転移も出来るって事だよね。試しにタツミの背後に転移してみると難なく出来た。タツミが直ぐに振り向いたから、驚かす事は出来なかったけどね。情けなさそうに見えてもボスモンスターなんだよね。

 

 転移があれば楽になるけど、それでは問題は解決方法していない。モンスターの奇襲を潰しながらも考え事を続けてみる。転移が無い場合の移動手段についてだ。

 自動車や飛行機なら何とか出来るけど、森や山の存在もあって自由には扱えないだろう。やっぱりドラゴンや馬型モンスターが一番だけど、それだとマスの効果が邪魔をしてくる。


「答えは出てるんですよ。ご主人様」


 タツミも私が必死で考えているのを楽しんでいるのか、直接的には言ってくれない。でも答えは出てるのか。って事は、私も見てるか知ってる物なんだよね?


『なんだかもどかしくなってきました。マスターはお香ってちゃんとご存知ですか?』


 なんかマスターって呼ばれるのも新鮮だね。ってそうじゃない。お香って、あれだよね。


「線香だったり、香木とか焚いたりするやつだよね」

「ほら、もう答えが出てるじゃないですか」


 え? ……、ああっ! そうか、精霊眠りのお香がどういう物かはまだ観てないからはっきり言えないけど、焚いたりするならそう簡単には消えないし、持続するんだ。あぁ、確かに消耗品だ。ゲームの消耗品ならって感じで考えてたよ。


「ちなみに蚊取り線香型ですよ。持ち運びに便利な携帯容器もセットです」

「お得ぅー」


 流れとしては探索しつつポイントを稼ぎ、精霊達と交流して親密度を上げてリンクが可能になったらポイント稼ぎを加速させて、精霊眠りのお香をゲットして長距離の探索に向かうと。

 そうなると今の私に必要なのはボスの討伐か。自分で探すのも楽だけど、どうせなら村まで言って情報収集してみよう。何かお得な情報も聞けるかもだしね。






 フィナを元に戻して三人で休憩や戦闘を交えながらてくてくと歩き、日も暮れた頃に漸く村に到着。村には宿もあると言うことなので、村人である精霊達の視線を感じながら宿に向かい、部屋を借りて夕飯へ。


「ご主人様、情報収集しておいたよ」


 ログインすると全てが終わっていた。とりあえず抱き付くフィナを撫でながら、備え付けのテーブルにケーキと紅茶を出す。お礼と報告を受ける際のお茶請け用だ。

 タツミはもちみたいにまでは行かないけど、お菓子づくりを始めるくらいには甘い物が好きだ。そのためケーキもいくつか種類を出してみたけど、その彩りにも気に入ってくれた模様。早速椅子に座り堪能し始めた。ああ、椅子も出しとかないと。一人部屋を取ったから椅子は人数分は揃ってないや。


 お茶会に見えても、ちゃんと報告を聞くのは欠かさない。先ず一つ、この大陸で起こっている異変に関して火山と雪山に行くのが良いみたい。

 火山と雪山は、それぞれひし形の横にある頂点の部分にあるらしく、何でもそこには特別な精霊が居るそうでこの件について何か知っている可能性が有るんだとか。この件に関してはお香をゲットしてからだね。距離的に遠いし。


 もう一つはポイント稼ぎについて。この大陸でもダンジョンに居るボスと徘徊するフィールドボスが居るみたいで、当然ダンジョンのボスの方が強いみたい。

 そう考えると、ダンジョンのボスの方がポイント稼ぎには向いているのかな? リポップで効率が左右されるだろうけど、一度ダンジョンに潜って確認してみたら良いことだし、行動あるのみだね。マスの事もあるし、タツミには一度ログハウスに戻ってもらうとして、送ってきたらあの坑道の中へ行ってみよう。


 緩やかな螺旋状に地下へと続いている坑道を、飛行しながら突き進む。右手にはフィナを刀にして装備し、メイリルとリンクしてマスの効果を無効にして突き進む。

 ふと思ったけど、これだとバフも受けれないんだよね。ウルフの時にバフの上昇率は凄いもの何じゃないかって思っただけに、ちょっと勿体ない。リンク状態とそうでない時の使い分けも重要かもだ。


 十分程進むと広い空間に出た。一般的な体育館程はありそうかな。となると、ボス戦かな? 道中にモンスターが全く出なかったからちょっと不安も歩けど、それは杞憂だったみたいだ。

 地面を突き破って現れたのは、クイーンコウアリと言うモンスター。五メートル程の蟻で人の手足を持った何とも奇妙な蟻だ。見るからに堅そうな体で、甲羅と言っても良いくらいにゴツゴツとしているから。物理に強そうだから、魔法っぽい感じで攻めようかな。


 炎の斬撃を飛ばし、あろう事かボスモンスターを一撃で倒してしまった。これは攻撃力アップマスをボスエリアに配置した運営が悪い。きっとそう。ポイント稼ぎが捗りそうだ。

 でも、問題はリポップ。どうやら広い空間から出て直ぐに入り直しても、ボスは直ぐには出ないみたい。待ってる間、何で道中にモンスターが出なかったか調べてみよう。


 モンスターが出なかったか理由は案外簡単な事だった。麻痺付与効果のマスに立つことでモンスターが出てくる仕様だったのだ。壁を突き破り現れたのは、コウアリベビー。大きさは低学年の小学生くらいかな? 見た目は普通の蟻。

 問題、いやラッキーなのはマスの上に居れば無限に出てくる事だ。ベビーを倒しながらボスのリポップを待ってクイーンを倒す。この流れが一番効率が良いかな。良し、目指すは複数のお香。明日サクラとヨーナをビックリさせてやろう。


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