63. 折れかける決意
即死マスを避けながら、何もないマスを選んで森を進んでいく。何の効果がないマスなら戦闘も楽。大抵私の攻撃で倒れてしまうために、威力を加減しながら、主にヨーナとサクラがメインアタッカーとして戦闘を繰り返していく。
「だぁぁぁっ! こいつ厄介すぎだろ!」
森にはウルフの他に、猪型や鹿型のモンスターが生息しているようだけど、今戦闘しているのはそのどれでもなく、恐らくこの森で一番の強敵。ニートカゲだ。
ニートカゲは擬態を使い木々に紛れ、針のように尖った尻尾を飛ばして攻撃してくる。問題は飛んでくる尻尾も見えない点と、体が小さく素早い点だ。モンスターの存在まではヨーナとサクラも称号のお陰で分かるものの、見えない攻撃の対処は難しいく、そんな中で素早く動き回る小さい的を狙うというのもまた大変。
「このモンスターはアオイさんに任せますわ」
不壊オブジェクトなのを良いことに木ごと燃やし尽くしていたサクラだけど、その隙に襲いかかろうとするウルフに嫌気が指したのか、ニートカゲの対処を私に丸投げしてきた。
仕方ないか、早く進める為には適材適所も必要だからね。姿も攻撃も見える私なら回避も苦じゃないし、寧ろやられる前にやることだって出来る。二人が困らないように見つけ次第直ぐに倒していこう。
「この大陸には村や街はありますの?」
見えない攻撃も驚異でなくなり、余裕が出来たのかサクラは私にそう聞いてきた。この場合は私にと言うより、私とリンクしているメイリルにだね。
歩くのが疲れると言う我が儘ぶりを発揮した為、リンクしたままでいる所為かこうして通訳みたいになってしまっているけど、戦闘面では離れた場所への攻撃もアシストしてくれるお陰で助かっているし、そこは受け入れるしかないか。
「村はあるみたいだよ。ただ、モンスターの凶暴化の影響で連絡が取れなくなっているみたい」
モンスターの凶暴化とは、この大陸を探索する目的みたいな物だ。普段は精霊と仲良くしていたモンスターだけど、突如として凶暴化して襲いかかってくるようになってしまった。その原因を探る為の探索なのだ。恐らく、地中に居る禍々しい感じの精霊が原因なんだろうけどね。
「村への地図は無いのか?」
「有るけど、それもポイント交換だって」
一度交換品のラインナップと、必要ポイント数を確認しにいった方が良いかもしれないね。闇雲にモンスターを倒して行くのも良いと思うけど、素材が何ポイントに変えれるかも分かっていないし、ひとまずの目標も立てたいしね。
「この先進んでいくと何がありますの?」
「えっと、山があるね。鉱山だった所みたいで坑道があるよ」
「ダンジョンって思った方が良いのかもな。マスによっちゃ、下手すりゃ行き止まりか」
構造によっては閉じ込められる可能性もあるし、ここは素材目当てでモンスターを倒しながら学園に帰った方が良いかもね。二人もそう決断して一路学園へ。
私はニートカゲを担当して、二人は他のモンスターを相手にして帰路に就く。歩いているだけでもモンスターが勝手に寄ってくるから有る意味楽だけど、これはテントも楽に張れないんじゃないかな? そのあたりも交換で何とかなるのならポイントはかなり重要な物になってくるね。
探索に出るときは余りよく見ていなかったけど、学園の裏側はさながら天守を守る塀のよう。等間隔で狭間が並び、時折櫓を設けて大陸の端まで続いているみたい。
学園へと続く門は自由に開けて良いらしく、潜った後内側に立っていた見張りらしき精霊に挨拶をして学園内に向かう。
「購買部ってどこにあるんだ?」
「屋上です。屋上は様々な店が並ぶマーケットになっていて、その一角に購買部があるんです」
学園に戻ったことで私の体から出てきたメイリルに案内を任せ、近くの階段から屋上へ向かう。すれ違う精霊達の私を見る目が狩人のように煌めいているけど、アタックしてこないのはやはりメイリルのお陰か。
屋上へと着く間に学園について聞いてみると、校舎は三階とそれ程高くないけど、横幅は一キロ程はあるらしい。プレイヤーの為に教室の数を多くしているみたいだけど、ちょっとやりすぎじゃないかな? 精霊からも移動が面倒臭いと不満がられているみたいだし。
授業については、自らが教師に頼む形なんだとか。個人で受けるのもいいし、職員室前にある掲示板でメンバーを募集する事も出来るみたい。校舎の左端には広さも構造も自由自在の体育館があるみたいで、そこの使用許可を得るのも職員室。右端には精霊用とプレイヤー用に分けられたら寮があり、入寮しておくとマーケットでの割引効果もあって便利なんだとか。
はぁはぁと息を漏らし、私にジッと視線を送る精霊を目撃して戦慄したりしながら辿り着いた屋上。そこは、フリーマーケットのようにシートの上で商品を売っている店から、屋台のような店、本格的に店舗を建てている店などがあり、精霊達や少数のプレイヤーで賑わう、さながら広場のような場所であった。
「ここは学園の中央付近ですから、飲食店が多いですね。購買部はその中にあるので分かりやすいと思います」
分かりやすいも何も、でかでかと購買部という看板が掲げてあれば誰でも分かると思うよ? 場所だって階段の正面だし。
早速入ってみるとそこはぱっと見駄菓子屋みたいだ。懐かしさを覚える駄菓子が所狭しと並んでいて、奥の方にノートなどの学生用品が置いてある。
中にはプレイヤーの姿は無く、数人の精霊がいるだけ。プレイヤーは屋上を見て回っているのかもしれない。
「おばちゃん。素材のポイント変換お願いします」
「はいよ!」
メイリルが奥にあるカウンターの中にいた恰幅の良い精霊に話しかけると、私達の前にウィンドウが現れた。ここから素材を選択してポイントに変換するみたいだ。
今、交換できる素材は四つ。ニートカゲの針とウルフの毛皮、フォレイノの牙とフォレシカの角。合わせて八十個。フォレイノは猪のモンスターで、フォレシカは鹿だ。交換レートは一つにつき10ポイントだから800ポイントになるね。
「私は400ですわ」
「私は300か、ニートカゲで大分差が付いてるな」
「ボスモンスターの素材は個体によって様々ですが、最低でも100ポイント以上となります。積極的に狙った方が良いですね」
ボスを狙うのは当然じゃないかな? と思いつつも、そんなメイリルの言葉の意味を、交換品の必要ポイント数を見る事で理解できたよ。
メイリルがおばちゃんに頼み出てきたウィンドウには、交換できるものが武器、防具、アイテムとそれぞれの項目に分けられていた。アイテムの項目から今必要な物を探すと、それは二つに絞られた。
一つはモンスター除けの札。これは安全にテントを張るために必要な消耗品だ。100ポイントで交換出来るため今なら八個交換出来るし、比較的簡単に手にはいる部類だろう。
問題はもう一つの精霊眠りのお香。これはマスの効果を一時的に無効にするもので、交換ポイント数は10000ポイント。思わず目を疑ったよ。
「探索を怠らず、危険を避けて地道に進みボスを倒す。そう言うことです」
「アオイに任せるか」
「そうですわね」
諦めが早すぎると突っ込みたいけど、気持ちも分かるから突っ込まないよ。何だかんだで私達の根性なんてこんなもんだ。きっとミジンコよりちっさいと思う。
この後の事を話し合う為に、ひとまずモンスター除けの札を一人二枚分交換して入寮するためにメイリルに頼んで転移してもらう。村への地図も1000ポイント必要だったため、一旦諦める事に。
一瞬で着いた寮は、二つ並んだ平屋の家だった。右側がプレイヤー用の寮で、中に入ってみるとそこはホテルにあるラウンジのようなお洒落な場所だった。五人からなるプレイヤーの一団もいて、コーヒーを飲みながらこれからの相談をしている様子。
一通り見渡した後、カウンターの内側にいた管理人らしき人に入寮の意志を告げ、三人用の部屋を用意してもらった。
「旅行に来たみたいだよね」
「むしろシェアハウス的な感じじゃないか?」
「それではログハウスと変わりませんわ」
カウンター横の扉を開ければ、そこはもう自分たちの部屋なんだそう。そこでのんびりお茶でもしながら、これからどうするかを決めていこう。どんな部屋か楽しみだね。




