55. 宝探しイベント! その四
海岸から襲い来るスケルトンの大群は、その数の多さから森の奥にも進軍してきていた。その大群の隙間を駆け抜け、格好つけて腕を横凪に振るえば視界に移るスケルトンは全て光へと変わっていく。夜の森に溢れる、朧気に消えゆく光はとても幻想的で、周りのプレイヤーの驚嘆の声も無理はない。
本当ならこんな目立つような事はしたくないけど、景品との交換レートが分からない以上、一体で千ポイントも貰えるチャンスは逃したくないし、この状況が何時まで続くとも分からない焦りもあって、多少のなりふりは構っていられない。
サクラ達も拠点の側でスケルトン達を迎え撃つみたいだし、私は発生源の海岸まで行ってみよう。
海岸のスケルトン軍団を一掃し、ひとしきり上陸するのを待つことももどかしく、他の島の海岸へ転移を繰り返しながら一掃していく。
自身のポイントの量も凄い勢いで増えていき、十の島を回ったところで、五百万程まで膨れ上がっていた。たまに他のプレイヤーからの襲撃を受けそうになって慌てて転移した時もあったけど、こんな状況でも冷静にポイントを狙ってくる人もいるんだね。そういうプレイヤーがトップになるんだろう。
それは二十目の島の海岸でスケルトン軍団を一掃したときの事だ。大きな地響きと共に遠くの島、あの壁画が描かれた遺跡のある島の海岸に、天を突くかの如く巨大なスケルトンが海中から現れ上陸してきた。
その巨体は最早見上げるのも辛いほどでエベレストの比じゃ無いと思う。そんな巨体に足元から、空中からと様々なプレイヤーが挑んでいるものの、巨体に見合わない素早さで振るわれる腕は空を飛ぶプレイヤーを吹き飛ばすどころか、地上にもその衝撃波が広がる程だ。
『アオイさん、見えてますわね』
『そりゃね。あんな巨体だもん』
『あれが王様だとすれば、宝箱を落とすかもしれませんわ。他に奪われない内に倒してしまってくださいな』
あの巨体なら倒すのにも時間は掛かりそうだけどね。まだまだ他のスケルトンを倒しておきたい気もするけど、要請が来たなら仕方がない。スケルトン軍団から離れ、自分の側にフィナを転移させる。
「フィナ、あれやるよ」
突然の転移に驚いた表情だったフィナも、私の一言でやる気に満ちた表情になる。今からやるのはゴーレムの武器化だ。初めてやることだし、一撃で倒せちゃう相手じゃ性能は分からないけど、扱い方を知るなら丁度良い相手だろう。
武器化の条件はゴーレムに触れる事。とりあえずフィナの手を握ってみると、私のイメージ通りの鍔のない日本刀になってくれた。刃の部分がプラチナのような輝きをもつその日本刀は刃以外が金色なのもあって非常に美しい。
そっと刀身を撫でるとくすぐったいのか、プルプルと震えるのもちょっと可愛い。適当に振ってみてもしっかりと手に馴染む。
普通は武器を装備するには、メニューの装備からスロットに武器を入れないといけない。スロットは一つだけど【二刀流】の称号があればもう一つ追加されるらしい。ここで肝心なのは、ゴーレムの武器化はスロットに入れる必要が無く、装備している武器の攻撃力が上乗せされる事だ。これで称号も取って二刀流になれば更に攻撃力アップだね。やるかどうかは分からないけど。
初めはファイナルアタックで、ってのも考えたけど、どういうものか知らないんだよね。サクラのお父さんからは、馬でドリルでファイナルアタック! としか教わってないし、今度聞いてみよう。
準備が出来たら、後は簡単。巨大スケルトンの顔の前に転移して、額に刀を振り下ろすだけの簡単なお仕事です。光になった巨大スケルトンから得たポイントは一万。これはどういう事だろう? 宝箱は出てないし、これでクエスト達成な訳は無いよね。
空中でポカンとしながらこちらを見る他のプレイヤーは無視して、一度皆の元へ戻るとしよう。スケルトンの軍団はまだ出てきてるみたいだし、ここは他のプレイヤーに譲った方が良いよね。
「掲示板で噂になってますわよ」
「うん、ハシャぎ過ぎた自覚はあるよ」
「せめて顔を隠すくらいすればよかったろうに」
「謎の仮面巫女って噂が立つ方が恥ずかしいよ。中二丸出しじゃん」
合ってるだろ? なんて言うヨーナは無視しつつもフィナを元に戻してみんなで拠点に戻る。すると、リビングでは酔いつぶれた大人二人がソファーに座り、寄り添うように眠っていた。この二人の関係性は今どうなっているんだろう? 起こすのもなんか悪いし、話は明日にして今日はもう寝よう。
翌朝、最終日となる今日は昼の十二時で通常サーバーへと戻ると、日の出頃に送られてきたメールに書かれていた。景品への交換は終了の一時間前から出来るようになるらしい。
それまでの動き方は、朝食を食べながらにしようか。テーブルに和食な朝食をセットし、先に起きていたサクラと一緒に起きたフィナと共に他のメンバーを待つ。
そんなに時間も経たずにやってきた三人だけど、クイネさんは二日酔い気味らしいから、お粥にして上げよう。
「スケルトンもあの後三十分程で消えたそうですわ」
「そんで、今や宝探しやPvPに精を出すってか」
朝から掲示板を見ていたらしいサクラとヨーナは、他のプレイヤーの行動を探っていたみたいだ。スケルトンがいなければポイント取得は宝箱か、プレイヤーから奪うかの二択だけ。いくつかの島では抗争状態にまで発展しているらしい。肝心の一万ポイントの宝箱の情報は今のところ見つかっていないみたい。
「私達はクエスト達成を目指す訳だけど、どうしようか?」
「巨大スケルトンが落とさなかったとなると、また遺跡の調べ直しかしら?」
「いや、海の中はどうなんだ? あいつ等は海の中から出てきたんだろ」
「調べてる人もいるらしいですわ。ただ、海のモンスターが強くてなかなか進めないそうですわね」
そう言って、みんなの視線がこちらに向く。まぁ、分かってはいたよ。私が行くしかないって。
「ちなみに、この島の死に戻りってどうなってるの?」
「少し離れたところにある専用の島に送られて、一定時間待機してから船で戻されるそうですわ。アオイさんならそんな心配要らないでしょうに」
何が起こるか分かんないんなら不安になるよ。奇襲対策は万全にしないとね。
巨大スケルトンの現れた島の海岸に行き、水着に着替えて海へと入っていく。海底に沿って進んでいくと、いきなり崖のように水深が深くなっていく所が現れ、その先にはイカジキがうようよいるのを確認できた。
見つからないよう透明になりつつ、その先を海底方へと進んでいくも、なかなか辿り着かず光も届かない深海になってからは、暗くても目が見えるようにしながらスピードを上げて進み続ける。
距離感も分からないまま、三十分ほど進み続けるとようやく海底に辿り着き、そこには壁画の描かれた神殿と同じような遺跡があった。
神殿に近づき扉を開けようとすると、突然ウィンドウが現れ、ここを開けるには一万ポイントが必要だと書かれていた。手持ちのポイントは全て管理機に預けてしまったから一度戻らないと。場所は覚えたから次は楽に来れるから良しとしようか。
「何かあったか?」
「神殿があったよ」
拠点ではみんなで仲良くゲーム中、宝探しなんてする気も無いよう。私は出稼ぎに出る不幸な娘みたいじゃないか。
若干拗ねながらも管理機から念の為、余分に百万ポイントを引き出し、手を振って見送るフィナに答えながらも直ぐに転移で神殿まで戻る。水着姿でいきなり現れた私に、何か反応があっても良かったんじゃないかと思うんだけど。
一万ポイントを払い扉を開けて中にはいると、そこは壁画が無いだけであの遺跡と同じような広い一室だけの場所。違うのは奥の壁際に立派な玉座のような椅子があり、その上に宝箱が置かれていた事だろう。
早速近寄り宝箱を開けてみると、入っていたのは一万ポイント。これでようやくクエストも達成だ。でも、一万ポイント払って一万ポイント手に入れるってなんだか不思議だよね。
そんなことを考えていた時、背後で物音が聞こえた為、音のした方へ振り向いてみる。すると、其処に見えたのは視界いっぱいに広がる、部屋を埋め尽くすほどのスケルトン達。楽勝だなぁ、と一掃しても、何処からともなく部屋を満たすスケルトン。これはボーナスステージ、もといモンスターハウスなのかな?
『一万ポイントの宝箱開けたらスケルトンが凄い』
『殲滅よろ』
唯一戻ったときに声を掛けてくれたヨーナに連絡してみると、たった一言で通信が終わってしまった。……、この怒りはこいつらにぶつけよう。




