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54. 宝探しイベント! その三

「宝を奪う、一万ポイントの宝箱の事かしら?」

「いや、現状が既に奪ってる事になるだろうよ。多分、一定数宝箱を開ければイベントが進むんじゃないか?」


 私が持ち帰った情報を肴に晩酌を始める大人組は放っておくとして、私が遺跡を調査している間に無視できない問題が起こっていた。

 それは私の討伐作戦だ。掲示板で有志を募り、おそらく今一番ポイントを持っているであろう私を攻撃しよう、と言うものだ。


「か弱い私に何という卑劣な事を」

「か弱い人は二百人を相手にしたりはしませんわ」


 あれは気分の高まりだもん、仕方ないのです。それより討伐作戦の事だよね。情報が筒抜けな掲示板でやるあたり、何とも抜けている感じだ。

 内容としては船と飛行魔法で島に接近して、大人数で攻めるって事らしいし、海流と気流なんかを操って此処にたどり着けないようにしとけばいいかな。この島から出ようとする人は大丈夫なようにしておこう。

 島と島の間は二キロ程。もっと距離が離れていれば、たどり着けない時の徒労感凄いことになっていただろうしかなり効果的だろうけど、この程度の距離なら撤退の判断も楽に下せるだろうし、それはそれでありな事だろう。


「鬼畜だな」

「ポイント持ってればちゃんと相手したけどさ、管理機持ってるみたいだし、真面目にやるだけ無駄ってもんだよ」

「管理機のポイントは奪うことも出来そうですし、右往左往してる間に奪ってしまったらどうですの?」


 流石吸血鬼、やることが汚い。あぁ、これじゃあ吸血鬼に失礼か、忍者だったら良かったのに。でもその案は採用しよう。


「そう言えば、この島ってモンスターいないのかな?」

「海にはいるそうですわよ」


 夜の探索の為に話をしながらも島中を見回してみたけど、プレイヤー以外動くものは見当たらない。宝探しだけの特別ステージかな? 陸のモンスターは亡者だけなのかもしれない。


「危険が無さそうならそれで良いだろ。さぁ、行くか」


 ヨーナの言葉で話しを締めくくり、二人とフィナを連れて地上へと転移する。大人組は留守番だ。酔っ払いには関わらない方が良いからね。


 三人バラバラの方向へと歩き出し、宝箱を探しながらもフィナとの夜の森の散歩を楽しむ。途中にある遺跡にも鍵付きの部屋があることは前もって確認していたため、まだ誰にも開けられていないのを確認して部屋の中に入りそこにあった宝箱を開けてみた。しかし、中には何も入っておらず、管理機は二つ入手出来ない模様。誰かが開けていたら宝箱自体消えているし、鍵も宝箱からランダムで出るらしいと掲示板に書かれていとの事だから、端から妨害も何も無いみたいだ。


 森の散歩を再開すると、フィナがキョロキョロと何かを探しながら歩いているのに気付いた。まさか見えてはいけないものが見えるとかじゃないよね。

 すると、何かを見つけたのか突然フィナが駆け出し、大ぶりな蕾を作った植物をつんつんとつつきながらこちらに顔を向け、何かアピールしているようだった。特に名称も見えないし、素材では無いと思うけど、何か意味があるのかな。

 とりあえず引っこ抜いてみようと、フィナに近寄り茎を持って勢いよく引っ張って抜いてみる。


「いやぁん、見つかっちゃった」


 それは根の部分が三十センチ程の女の子になっている、よく分からないものだった。緑色のワンピースを着ているのに、胸元と股間に手を当てて隠そうとしているのは何の意味があるのか。


「えっと、なに?」

「私はアララウネよ。土地を与えてくれたらあら不思議、忽ち立派な畑にしてみせるわ」


 ダジャレじゃん。あらら、畝が出来ましたって。でも、なかなか有能な子らしくて、アイアンキンギョと同じような存在で一日一回、ランダムで色んな植物が生えるんだそう。トヤマさんが喜びそうだよね。

 ちなみに引っこ抜いたら名前が分かるようになった。植わってるままだと隠蔽が働いてモンスターでもないとその存在が分からないらしい。フィナを連れてきておいて良かったよ。


 アララウネの事もあるので一度拠点に戻り、専用の部屋を作ってそこに放しておいた。すると、ずるずると地中に潜り、ぽんっと花を咲かすと一面が立派な畑になった。明日になればここにも色んな植物が生えるんだろう。


「どうかしら、立派でしょう? この畝。このそそり立つ感じがまた、何とも言えなくいい感じよねぇ」


 すぽん、と自ら抜き出て自身の作り出した畑を絶賛しているけど、植物の感性はよく分からないや。そもそも植物なのかも分かんないし。

 

 うっとりした様子で畝にすり寄るアララウネは放っといて、再び夜の森をフィナと散歩、もとい宝探し。サクラの言い付け通り、度々遭遇するプレイヤーとの交流も欠かさない。

 見つけた宝箱の場所を教えあえば宝箱の総数も見えてくるし、何より数が把握できれば別の島に移る判断もし易くなるしね。ついでに亡者の事を伝えることも忘れない。何が起こるか分からないし。


 掲示板に島ごとにスレッドを立てて報告しあうようにもなってきてるし、この島のもあるみたい。魔境と呼ばれてるみたいだけどね。それでものんびり宝探しがしたいと言う人には丁度良いらしい。武器を持ってない人は来れるようにしておこうかな?


 夜も更ける頃には探索も切り上げ、拠点に戻ってそれぞれ集めたポイントを管理機に入れておくと、合計で五万程になっていた。

 掲示板などの報告から、サクラは一つの島の宝箱の数は二千百程ではないかと予想を付けたみたい。理由としては、一つの島でスタートしたプレイヤーの数は二千人程の為、足元に宝箱があったことから人数分は確実。後は捜索状況から言ってで百程ではないかという予想だ。

 私達のポイントがここまでいったのも、スタート地点と思われる場所に残されていた物もあったから。後から知ったとしても、スタート地点を忘れてしまった人もいたのかもしれない。

 つまり、一つの島全ての宝箱を開ければ二十一万ポイントか。現実的には一つの島を独占なんて無理だろうけど、このラインがある意味ボーダーになるのかもだ。


 明日からは宝箱もランダムに再配置されるし、なるべく多く開けるために一通り観察してから地図でも作った方が良いかもしれない。そんな事を相談した後それぞれの部屋で就寝。ゲームの中で寝るってなんか不思議な感じ。






 二日目の朝。早朝から決行された私の討伐作戦は、謎の海流、気流によって船上空中は大いに混乱状態だった。その隙に連合軍の拠点へ忍び込んでポイントを奪うと、その量なんと二十一万。苦労することもなく、一島分のポイントを手に入れることが出来た。そんなに多くの人が参加してたのかな? ちょっと怖くなってきた。


 その後はサクラと協力しながら地図を作りながら、ヨーナとトヤマさんにリアルタイムで誘導しながら宝探し。クイネさんは転移の修行中だ。神速通が無いとチートは始まらないからね。


「それにしても、アララウネの畑は凄かったね」

「ポイントの方が驚きですわ」


 むぅ。やっぱりあのポイントの量じゃ、アララウネの畑のインパクトは霞んじゃうか。まぁ、見たことのない素材にトヤマさんは喜んでたし、良しとしよう。

 連合軍もポイントを奪ったし、海路も空路もたどり着けない以上、諦めるしかないだろう。これで懲りなかったら私はどうすればいいか分かんないよ。


 二日目は平和そのもので、作った地図を他の善良なプレイヤーに配りつつも、宝探しを進め、三日目も同じ様にまったりと時は進んだ。クイネさんも仙人となり無事に神速通を手に入れたし、後は人型のモンスターを手に入れつつ頑張っていって欲しいと思う。

 連合軍の方も無事に諦めてくれたようで大人しく宝探しに、他のプレイヤーの攻撃にと忙しく動いているみたい。この島と他の島との差が激しい気がするよ。


 そしてイベントが進行したのは日も暮れた夜の事だった。私達は地中に居た所為か、お寿司を食べながらのゲーム大会に気を取られていたのか聞こえなかったけど、突然の獣のような咆哮と共に人型と馬型、犬型のスケルトンが大量に海から上陸して来たらしくて、プレイヤーは自前の武器に持ち替えて応戦しているそう。サクラが掲示板をチェックしていて良かったよ。


 スケルトンは頭蓋骨が完全に砕かれないと何度も復活するらしく、それに加えて動きも良く倒すのに苦労するそう。ただ、メリットが大きく倒せば一気に千ポイントが貰えるみたいで戦闘大好きプレイヤーが歓喜していて掲示板でも祭り状態で大盛り上がりだとか。


 だけど、歓喜するのは戦闘大好きな人達だけじゃない。そう、この現状だ。この【おきつね巫女】が黙っていられる訳がない!


「まさに鴨が葱背負ってやってきたな」

「ええ、アオイさん。任せましたわ」


 アオイ、スケルトン駆除にいざ行かん! スケルトンなんて一撃で葬り去ってくれるわ!


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