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49. スタンプラリー

「面白いことになってるそうね」


 リビングへ下りると待ちかまえていたトヤマさんに捕まってしまった。サクラに太極図の事を聞いたらしく、こんな朝からフカヒレの姿煮が食べたいとの要求を受けてしまった。どうせならと皆の分もテーブルに並べると、早速皿を自分の前に移動し食べ始めたトヤマさんは、幸せそうに美味しいわぁと呟いていた。


「それで、今日もクエストはきましたの?」

「うん。たまにってのが何だったんだって感じだよ」


 三日連続できてしまうと、無かったときが寂しくなりそうだ。これが飼い慣らしってやつかな? 卑劣な奴め。

 まぁ、真相はタツノが教えてくれて、ボーナスの条件を達成してもらえると次の月には新しく設定出来るらしい。それで八月も後半に差し掛かったこの時期に焦っている人達が多いんだそう。


「今日はシズオカ領のスタンプラリー達成依頼だったよ。スタンプラリーがあるなんて初めて知ったよ」

「そう言えば、掲示板でそんな話がありましたわね。なんでもルームアイテムが貰えるそうですわ」


 ルームアイテムは持ち家に置いておくだけで、そこに住むプレイヤーに何らかの恩恵があるらしい。どんな恩恵があるかはランダムで、エアコン効果なんて物もあったらしい。これは気温が導入されるフラグかな? それにしても、フカヒレ美味しいね。


「あっ! 何食ってんだよ、私にもくれよ!」


 やっぱり高級な物は食べたくなるよね。






「やっぱり此処って街が四つと他の所より多いじゃないですか、倍ですよ? 一つの街でも完遂すればルームアイテムは貰えるわけで、全部を回ろうって人なんて居ないんですよね」


 冒険者ギルドにスタンプラリーについて聞きに行けば、まず口に出るのは愚痴話。ボーナスの金額は安いものの、簡単にやってくれそうだからと全ての街でスタンプラリー達成を設定してみれば、シズオカ領だけ達成されないという罠。ボーナスってものによって金額変わるんだね。


 スタンプラリーのルールとしてはギルドの受付に置いてあるスタンプシートを貰い、街の中に五つあるスタンプを探し出し押していくだけ。一つの街でも達成すればルームアイテムが貰えるから、四つの街があるシズオカ領はお得だけど、その分足が無いとしんどいから二カ所回れば満足してしまう人が多いらしい。


「どうする? 一人一街で別れる?」

「一つの街を手分けして探した方がよくないか?」

「そうですわね、この街は四つの区画に分かれてますし」

「探し終えたら喫茶店で合流しましょうか」


 そうしてどの区画に行くかを決めてそれぞれ行動開始。サクラが言ったよう此処、スールガの街は円形で、十字に伸びる大通りにより四つの区画に分かれている。私が行くのは南東、合流場所の喫茶店もこの区画だ。


 ヨーナが担当する北東区画は、十字がクロスした場所にある広場に面した所に冒険者ギルド、公園を挟んで奥に領主館と騎士団詰め所、訓練所などがあり、この区画にある空き家はかなりの高額らしい。


 次にサクラが行く北西区画は職人エリア。大通りに面した場所には武器や防具、道具や家具などの店が並び、奥には工房が立ち並んでいる。空き家は無いけど空き工房と空き店舗はあるため、生産プレイヤーに人気の場所だ。


 トヤマさんの行く場所、南西区画は更に十字に区切られその道には露店が広がっている。誰でも自由に商売が出来て、トヤマさんも此処で水筒なんかを売っていた。此処の空き家は露店で満足している生産プレイヤーが買ったりしているらしい。


 最後に私の行く南東区画は飲食店がある場所だ。だだ問題があり、大通りに面した場所に構えているわけではなく、民家に紛れているため探すのが大変なのだ。その中でも喫茶店は一部ガラス張りだったから見つけやすかったんだよね。

 スタンプがあるなら飲食店の筈だし、先ずは社長に飲食店の場所を聞いてみようかな。数多くある民家の中から飲食店を探すのは骨が折れるので。


「社長! 飲食店の場所教えて?」

「これでも持ってけ」


 喫茶店に着いて早々、社長に問いかけ貰ったのはスールガ飲食店ガイド。ガイドと言っても書いてあるのは地図だけで、確認すると十カ所程の飲食店があることが分かった。


「スタンプの場所教えてくれたりはしない?」

「それを探すのが楽しいんだろうが。まぁ、此処に一つあるがな」


 他の場所を教えてくれなかったのは残念だけど、一つ見つけれたのは良かったとしよう。どうせ合流場所だから後でも見つけれただろうけどね。

 さて、そうなると次の場所だけど、私の閃きは既に目星をつけている。スタンプと言えば押す、押すと言えばお寿司。そう、つまりスタンプはきっとお寿司屋さんにあるに違いない! けしてお寿司が食べたい訳じゃありません。でも、さび抜きで。山葵は苦手なのです。


「らっしゃ……、あれ? もしかして噂のチートプレイヤー?」

「何の噂なんですか!?」


 お寿司屋さんに入ったらこれである。どうにもこのお寿司屋さんはプレイヤーの店らしい。読みが外れたね。

 そんな大して意味がある推理じゃなかったし、お寿司の盛り合わせを頼んで噂の事を聞いてみると、闘技場の一件を見て、聞いていた人がいたらしい。そりゃいるよ、無駄に叫んだし。


「で、チートって何なんだ? 公認って事は駄目なやつじゃないんだろ?」

「そう言う称号があるってだけです。詳しくは自分で頑張ってください」


 自分のアドバンテージは守りたいのでなるべく秘密にする。でも、クエスト仲間は欲しいから称号って事だけは言っておこう。

 それより、このお寿司だ。手早く作られたお寿司は、店を構えるだけあって流石、美味しい。リアルでも職人さんなのかな? 若い感じの人だけど頑張ってるんだろうな。


「どんな事出来るかくらい教えてくれよ。店を持ってるとなかなか冒険に時間も掛けられなくてな、役立つようなのなら欲しいんだ」

「うーん、とりあえず何でも出来るって感じです。人型になれるモンスターを持っておくと良いかもしれません」


 アドバイスとしてはこんな所かな? 聞くならNPCの方がこのゲームらしい気がするしね。それにしても、ちょっと応援したくなってきたよ。料理屋の娘としては大変さも少しは分かるしね。お兄さんはお手伝いにも良いかもな、と真剣にやってみる様子。出来れば可愛い子でお願いします。


「私からも質問! スタンプ場所って知ってる?」

「ああ、スタンプラリーか。この区画は喫茶店だけだ。二つあるのは北東だったかな」


 同じく詳しくは秘密な、と意地悪な笑みを浮かべるお兄さん。ノリが良さそうな人だ。このお寿司屋さんもちょくちょく来ようかな。


 他の三人にこの情報を送り、お会計を済ませて店を出る。このまま喫茶店で待ってるのも良いかもだけど、ここはやっぱり飲食店巡りだよね。喫茶店には連絡が来たら行けばいいし、先ずはパン屋かな?






 連絡が来るまでパン屋から始まり、ピザやパスタ、ハンバーガーに丼物と専門店のようなお店が多くて飲食店巡りには嬉しい物だった。店の雰囲気も味の内だと思うんだよね。でも、食堂タイプのメニューがごった返した感じもたまんないよね。


 喫茶店に着くとサクラが死んでいた。比喩だけどそんな顔をしている。一方ヨーナは余裕そうな顔をしている。直感が告げている、此処に踏み込んではいけない!


「やっと来たわね、あなたは宿題終わってるの?」

「ま、まだです」

「はぁ、あなた達はこの街のスタンプラリーが終わったら宿題をやりに行きなさい。他の街は私とヨーナでやっておくから」


 宿題が終わるまでログイン禁止を言いつけられてしまった。既に終わっているヨーナがログインしていないか監視するらしい。裏切り者めぇっ!


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― 新着の感想 ―
[一言] ( ̄□ ̄;)!!ここにも、うちの妹と同じ人が 夏休みを少し時期をずらして取って、実家に帰ったら、半泣きで宿題を手伝ってと言うから、手伝ったら、1から全部をさせられた…………… さす…
[一言] まだ、残っていたのか、宿題(笑)
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