47. 私達の家
一人テーブルにつき、紅茶を飲みながらクッキーを摘み物思いに耽る。それもこれも太極図の、チートプレイヤーとしての存在の所為だ。
今日送られてきたクエストの内容は、闘技場で一定数連勝する事。意気揚々とサクラ、ヨーナと共に受付へ行くと、運営公認チートプレイヤーは参加出来ないという。ガッテム!!
だだ、ゴーレムコロシアムのように勝ち数により選ばれた人達でトーナメントを行い、そこで決まったチャンピオンには運営公認チートプレイヤーへの挑戦権が与えられるらしい。憂さ晴らしのチャンスだ。徹底的に行こう。
そんな私を置いて、サクラとヨーナは闘技場でクエスト達成のため熱戦を繰り広げている。正直、見てるだけだとつまらないのでこうしてログハウスに戻ってのんびりしているんだけど、この後はモンスターの部屋も増設しようと考えてるし、リビングの模様替えや草原の事も考えてみようかな?
先ずリビングだけど、二十四畳ほどの空間が横に三つ繋がっている感じかな。区切られている訳じゃないけど、使用目的できっぱり別れているからね。
一つ目はリビングダイニングかな? 玄関から直ぐの所で、玄関の隣には草原が見える窓、正面には水場が見える窓があり、その前に右上に伸びる部屋へと続く階段がある。そのためか、よくミズチが私の登場を待ちかまえているんだよね。
左側には壁一面が埋まるほどの大きさの水槽があり、その中ではアイアンキンギョが泳いでいる。金属を産んでくれる頼もしい子達だけど、ツチノコである太郎が水面に浮かぶようになってからはオリハルコンも産んでくれるようになった。
階段の下と、その奥に空間を広げて作ったのがキッチン。今では飲食店顔負けの設備が揃っているけど、私の所為で食料事情が整った今、先生やジーヌ、タツミが趣味で、師匠が肴の為に使うくらいだ。この空間の中央には六人掛けのテーブルとイスがあり、一カ所はもちがスイーツ堪能の為何時も陣取っている。玄関から見て右奥が定位置だ。
空間は右側に連なっていて、リビングダイニングの次はリラックススペースかな? キッチン側の壁に大型のテレビが掛けられ、低いテーブルを挟んで正面に四人掛けの大きめのソファー。テーブルの両側に二人掛けのソファーが置いてある。ここは基本的に小豆専用かな。今は小豆、フィナ、タツミ、ジーヌの四人がゲームを楽しんでいる。
最後の空間は飲兵衛のために作ったもので、師匠の要望で畳敷きにしてある。リラックススペースとは反対側、玄関方向にテレビが掛けられ、師匠とタツノが動画を見て笑いながら酒を飲んでいる。タツノが抱くぬーちゃんとシンラが迷惑そうだけど、酔っ払いには絡みたくないのか大人しくしている。その顔はちょっと切なそう。
テレビとは反対側の壁にはドアが設置されていて、ここから室内運動場や鍛冶の作業場、先生の為に作った裁縫なんかの作業場へと、ドアノブを掴んだときに現れるメニューにより選択し自由に行くことが出来る。
ミスノと先生はそれぞれの部屋で作業中だ。ミスノは自分の幅を広げる為と色々作っているみたいだし、先生は浴衣作りに精を出してる。私も今、先生の作った浴衣を着ているけど木の葉柄が可愛いくて狐っぽさもでてると思う。今夜はみんなで祭り村へ花火を見に行くんだ。狐のお面とかあったら買ってみよう。
模様替えを考えてみたけど、現状不満もないしとりあえずこのままでも良いかな? 欲を言えばデッキテラスがあるのも良いかと思うし、皆に聞いてみよう。モンスターの部屋は、人数分作って後は自由にやってもらえばいいや。
次は外だね。玄関を出てまず目にはいるのは、元気に走り回るモンスター達。サクラのペガサス、シャロウインパクトとヨーナのスレイプニル、ユーマ。フェンリルのウォーセと、グリンブルスティのベイ、しっぺい太郎のしーちゃんの一団だ。最近出番無いけど、こうして皆で走り回ってるのも楽しそうだし本人達も満足してるんだろう。一匹だけ小さいしーちゃんが余計可愛く見える。
そして私に勢い良く駆け寄り、頭をこちら側に向け腹を上に向けて犬みたいに服従っぽいポーズをとる角ウサギのイース。傍らには同じく角ウサギの相棒が居た。
これはどういうことだろう? あれかな、オープンからクローズになりますという宣言なのかな。相棒が何か言ったんだろう、大方俺が居るからお前融合な、的な。
試しに浴衣の裾を開いて足をチラリ。イースは反応を示さないけど、これは何時も通りだ。問題はここから、胸元をチラリ。すると、尋常じゃないほど震え始めた。飛びかからないだけましかな? でも、ちょっと面白い。これ以上はやらないけどね。痴女じゃ無いので。
屋根だけの簡素だけど大きな東屋には、他のモンスターが寄り添ってのんびりしていた。ササパンダのキボリは見事なタレ具合で、腹ばいに手足を投げ出しどっかのキャラクターを思い出す。こんな事出来るのも、タツノから解放されてる今だけしね。
それにしても、あの走り回る一団もそうだけど奇妙なメンバーが揃ってるよね。見た目巨大なブロイラーにトリケラトプス、トナカイ、黒猫、パンダ、ウォンバット。トリケラトプスの場違い感は半端ないね。でも、可愛い顔してるしこれはこれでよろしいのです。
キボリの上で同じようにぐでーっとするクロがにゃーにゃー鳴くので、目の前にすあまを置いておく。キボリが反応しないのが残念だ。
トリケラトプスという誤字かと思うモンスターのキングの上に座り、草原を眺めてみるとなんか寂しい気がする。東京ドーム二つ分の草原はそれはそれで雄大で良いけど、やっぱりもう少し緑が欲しい。そうだ! ポプラの木を生やしてみよう。丁度中央辺りに大きなポプラの木を生やしてみれば、なかなかいい感じになったと思う。
最後に東京ドーム一つ分の広さがあり、深さも相当あるらしい水場だ。待ってましたとばかりに近寄る水竜のミズチの顔を撫でながら水場を眺めると、プカプカと浮かぶ大きな羊と、水面を滑るように泳ぐペンギン、それを追う立派な角が生えたセイウチ。ここもジープの違和感が凄い。
作ったときになるべく深くとお願いした水場だけど、果たしてどのくらいの深さがあるのだろうか。ちょっと確認してみよう。水着に着替えミズチの背に跨がりいざ出発! グングンと潜っていくミズチに乗りながら、どうやって深さを測ればいいんだろうと悩んでいる間もどんどん進む。潜るスピードの速さもあってもうすでに日の明かりさえも届かない所まで来ている。これもう深海じゃん!
深さを調べるのは諦め、水面に戻りエスパーペンギンのアトに紐をくくりつけ、ビート板に繋げて勢い良く水面をひきずられてみる。なかなかの爽快感だけど、後ろから尻尾を狙って付いて来るミズチがちょっと怖い。
それにしてもヨーナのドラゴンは何時生まれるんだろう? 相当大きいかな? 本人は乗って戦いたいらしいけど、これは大きさじゃなく、とんでもなく強いドラゴンを願った方が良いかもね。
ちょっと疲れたから、かき氷でも食べて休憩しよう。島に遊びに行って皆で泳いだ後かき氷を食べるのも良いかもだし、夏が終わるまでに考えておこうかな。
「お! そんなとこで何良いもん食ってんだよ、私の分も頼むぜ」
「私にも下さいな。はぁ、疲れましたわ」
休憩に来たらしいサクラとヨーナにかき氷を渡し、闘技場での事を聞いてみるとなかなか強い人も多く、自分達より早く達成しそうな人も居るらしい。ふふっ、自分の力を振るう時が楽しみになってきたよ。その時は色んな戦い方を試してみたいな。今の内に練習しとかなきゃね。