46. 初クエストは遊園地
「今日のクエストを発表したいと思います!」
「初耳ですわよ、クエストなんて」
「面白いことか?」
そういえば二人にはクエストの事は話してなかったね。太極図の事は話したから言った気になってたよ。珍しくヨーナが私より早くログインしてるし、ちょうどいいや。
「説明しよう! クエストとは、運営公認チートプレイヤーにのみ与えられる社員ボーナス達成依頼である!」
「つまり、社畜ですわね」
「運営の手先だな」
「違うよ!?」
くそう、でもクエスト内容を聞けば二人も黙ってはいないはずだ。今朝届いたクエストメールの内容は、私も楽しみなやつだからね。
「クエスト内容は、なんと! 遊園地解放依頼である!」
「それはまた、世界観がぶっ飛ぶような物ですわね」
「へぇ、良いな遊園地。何処にあるんだ?」
サクラは素直じゃないけど、目の輝きを見れば期待してるのは分かるよ。私達はなんだかんだそう言ったところにいく機会が無いからね。私の家は洋食屋だし、サクラの家は忙しい漫画家とアニメイターだしね。ヨーナの家は普通の大工さんだけど、硬派な元ヤンは遊園地なんて行かないらしい。硬派な元ヤンってなんなんだろう?
「何で私達の両親は親友なんだろう?」
「見事にタイプが分かれてるもんな」
「幼なじみらしいし、当然ですわね」
全ての幼なじみが仲良しとは限らないんじゃないかな?
「それで、何をすれば良いんですの?」
「チバ領にたった一匹だけいる黒いネズミを、テイムするか倒すかすれば良いんだって」
「それ大丈夫なのか?」
見た目次第ではアウトだよね。できれば可愛い感じの子が良いかな、二足歩行じゃなくね。
そんな依頼も、チバ領に行くことなくログハウス内で終わりを迎えた。単純にネズミをこちらに転移させたのだ。太極図って便利。
「可愛いなぁ、この子死んだふりしてるよ」
「そうじゃのう、可愛いのう、ふわふわじゃぁ」
私の腕の中にいるぐったりした一匹のネズミとはちょっと違うモンスター、その名もウォンデッド。そう、見た目はウォンバットだ。ネズミと言うには無理がある気がするよ。まぁ、可愛いから良いんだけどね。
何時までもこのまま、タツノと可愛がっているのも可哀想なのでテイムして存分に可愛がろう。名前はウォンにしよう。えへへぇ、可愛いなぁ。
「なぁ、アナウンスもきたし遊園地行こうぜ」
「そうですわよ、ほら可愛がるのはタツノに任せますわよ」
「うむ、気を付けて行くのじゃぞ」
仕方ない、可愛がるのは後にしよう。太郎と並ばせたらさぞ可愛かろう。
遊園地の入口でパンフレットを貰い、入場して直ぐにフードコートへ向かう。結構な広さがあるらしく、私達の他に早速来ていた人達も先ずは探索から始めるらしい。
コーラとフライドポテトを注文してパンフレットを見てみても、アトラクションは数多くあるらしく、とても一日で遊び尽くせなさそうだ。
「大気圏突入コースターなんてあるみたいですわよ」
「こえーな、燃え尽きたりしないよな?」
「ゴブリン屋敷なんてのもあるね。そう言えば、サクラってお化け屋敷入った時私の肩掴んでたよね」
遠足かなんかで遊園地に行ったときかな? ずっと掴んでるから、そっちの方が気になって楽しめなかった思い出がある。
「一度だけ家族と行った遊園地のお化け屋敷で、壁に思いっきりぶつかりましたの。それ以来暗いとこだとどう動けばいいか分からないのですわ」
「吸血鬼なのに暗いとこが駄目なのか」
痛い思いは何時までも覚えてるからね、ゴブリン屋敷へ行くのは止めておこうか。
その後もポテトを摘みながら何があるか見ながらも、どこに行くか計画を立て、先ずは大気圏突入コースターへ行くことにした。
コースターの乗り場へ着くと、そこにはでかでかと忠告文が書かれた看板があった。十分程で大気圏を脱出するため、稀に異常を感じログアウトしてしまう場合があるんだそう。え、そんなに危ないの?
「これ、ホントに乗るのか?」
「や、止めない?」
「度胸試しですわ」
私達の他に誰も居ないコースターに乗り込み、係員の人にグッドラックと声を掛けられいざ出発。最初はゆっくり進み、レールが垂直になると、急激にスピードアップ、しない。あれ? と思い続けること十分後、唐突に転移しいきなり始まる大気圏突入。これは狡すぎるでしょ!?
「皆さん無事ですの?」
「ああ、なんとかな。あまりの落差に気が飛びそうだったけどな」
「急激な落差だよね」
大気圏突入はまぁ、一般のジェットコースターよりは早いかなってくらいで、多少景色を楽しむ余裕があったけど、これはあれか? あまりに遅いスタートに異常を感じてログアウトしてしまうって事? 運営の洒落なの?
「次はメリーゴーランドで良いよな?」
「ええ、少し疲れましたわ」
「メリーゴーランドは普通だよね?」
結果普通じゃなかった。本物のペガサスが自由に園内を飛び回るのは、メリーゴーランドじゃないと思うよ? 速度は緩やかでたのしめたけどさ。
「一番普通な乗り物ってなんだと思う?」
「コーヒーカップですわね」
「だな、あれは細工のしようがないだろ。最悪速すぎるだけだろうしな」
しかし、ここは斜め上の遊園地。コーヒーカップも普通に回る物ではなく、コーヒーカップに乗って行うゴーカートだった。確かにゴーカートとしては普通だけど、コーヒーカップにする意味は無いでしょ。操作もそのままコーヒーカップのように出来たのは楽しかったけどさ。
「ここまで来ると、意地でも普通のアトラクションで楽しみたいよね」
「ああ、分かるぞその気持ち。こうなりゃ、パンフは当てにならん。地道に探すか」
「そうは行っても、浦安市丸ごとの広さですわよ。探すのも一苦労ですわ」
そう、この遊園地は一つの市丸ごと入るだけの広さがあるのだ。そうなってくるとアトラクションの数も多く、同じ名前の物も数多い。その中で普通の物を探すなんて、一苦労どころじゃない。
でも決めたことなのだ。入口付近にあるカートを借りてでも探し出して見せるのだ!
日もすっかり落ちた頃、漸く普通のアトラクションを見つけた。他のアトラクションは全部このゲームならではだったからね、気持ちを切り替えたらまた楽しみに来れば良いだろう。私達の求めた、一般人な遊園地にもありそうな普通のアトラクション。何なことはない、そこはゴブリン屋敷だった。
入ってみれば本当に普通の、よくある遊園地のお化け屋敷のゴブリン版だ。ただ、脅かしてくるのがゴブリンだけだから、全行程一キロの長さは流石に飽きる。
「なぁ、何でアオイまで私の肩を掴むんだ?」
「楽しそうかなって」
「私は必死なんですことよ?」
暇になってきたので、サクラの真似をして前を歩くヨーナの肩を掴んでみる。ビクッと肩が跳ねたのは面白かったけど、きっと後で仕返しされるだろうなぁ。
外に出てみると、中では気付かなかったけど園内中にサイレンが鳴り響いているようだった。辺りを見渡せばそこら中に見える腐った人。
「これはあれだな、定番のやつ」
「嫌だなぁ。こっち来ないようにしとこ」
「何でもありですわね」
こんな時太極図があって良かったよ。戦闘するのもなんか臭そうで嫌だしね。
「アオイ、銃出してくれよ」
「嫌だよ。……えいっ!」
これ以上ヨーナが変な気を起こさないように、見える範囲のゾンビは消しておこう。いや、出来るとは思わなかったよ。って【おきつね巫女】の効果か、ちょっと忘れてた。
「ゾンビより怖い奴だな」
「私達も消されないように気を付けませんと」
「そんな事しないよ!?」
称号は仕方がないとしても、即死系は出来たとしてもあんまり使わないようにしよう。他の人に見られたら変な噂が立ちそうだ。




