44. 夢の力
「おはようございますわ」
「お、おはよーう」
ログインしてリビングへ下りてみると、やはりサクラの方が先に来ていた。今回私は太極図の事は隠し通そうと思っている。これは切り札にも出来るからね、勝ちを見据えてのことだ。
「何を隠そうとしておりますの?」
「な、何のことだら」
「色々怪しすぎますわ。尋常じゃなく耳や尻尾が動きまくってますし」
どうりでクロが異様にじゃれつくわけだ。だが、めげない! 私は何としても、この秘密だけは守り通すのだから!
「そう言えば、チャーハン作ろうとして華麗にぶちまけたそうですわね」
「わーっ! わーっ! 何で知ってんの!」
それはダメなやつだ! 料理屋の娘が何やってんだって、馬鹿にされそうだから隠していたのに! あれは調子に乗っただけだし! 漫画に憧れただけだし!
「おば様に聞きましたわ。他にもお店のオリーブオイルで……」
「やめてよぅ。もう話すから勘弁してよぅ」
聞いてる人がいるんだよ? タツミや先生は堪えてるけど、師匠やタツノは笑い転げてるし、ジーヌはチャーハン作ってるし。悔しいなぁ、こうなったらサクラの弱みを握らないと! でも、サクラの家は魔境だからなぁ、両親は濃い人達で、挨拶代わりに猫耳カチューシャ渡してくるしなぁ。
「あっ、そう言えば私、サクラの両親に着せかえ人形にされたよ」
「ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」
両親の奇行は意外と効くらしい。まぁ変なのを着せられた訳じゃないから良いんだけどね、いい人達だし。でもこれ以上つつくのは止めておこう。完全に藪蛇になるからね。
正直に太極図の事を話すと、サクラは呆れ顔でため息を付き、タツノと話し始めた。
「これ倒せますの?」
「やりようはいくらでもあるじゃろ。例えば今みたいに」
「ああ、なら良いですわ」
「公衆の面前で暴露は止めてねっ!?」
サクラと対戦するときは速攻を心掛けないと。喋る隙など、与えてなるものか!
「はよー、何の話だ?」
ヨーナにもサクラから私の話を伝えられると、同じく呆れ顔になる。そして顎に手を当て少しの間考え込むと。
「ヤドリギ装備はお前に効くのか?」
「私はラスボスじゃないよ!」
「効くのは話術ですわ」
「うーっ! こうなったら!」
「「いったぁっ!?」」
タライ神はお怒りなのです。これは怒りの鉄槌なのです。はぁ、コーヒー買いに行こう。ついでに社長にも落とそう。
あっと、そうだ。ついでに相棒を草原に放しておこう。イースと仲良くしてね。
「それで? 太極図じゃどこまで出来るんだ?」
「まだタライと転移しか試してないや」
「何でも出来るのに、初めてがタライで良いんですの?」
良いんです、タライは文化なので。喫茶店へ行くときに転移も試してみたけど、今までと変わんない感じだったしね。社長にタライを落としたら爆笑されたけど。
皆の分も買い、タツミの作ったクッキーで朝のコーヒーブレイク的なことをやりながら太極図の事を話しているけど、やっぱり性能把握は大切だよね。フィナのリベンジは武器の事もあるし後回しで、こっちを優先かな?
「時を止めたりは出来ますの?」
「うーんと、出来ないみたい」
「何でもじゃねーじゃん」
正直、出来たとしても他のプレイヤーに迷惑掛かると思うよ? どうせゲームで時を止めたって、現実じゃ時は進んでるんだし。
「なら、これはどうですの?」
そう言ってサクラは、手のひらの上に火の玉を浮かべ始めた。これを消せるかって事だよね。消えろって感じで念じてみると、弾けるように火の玉が消滅した。
「これで弱点も無くなったか」
「そうですわね。後は実戦ですわね」
二人も結構興味津々みたいだね。もしかして二人も取得を目指すのかな?
相談の結果、実戦はコンドリオンとやることにした。龍星とも悩んだけど、コンドリオンの方が観戦しやすいと言う理由で軍配が上がった。観戦しやすさなら鬼ヶ島が一番だと思うけど、また絡まれたくないしね。当分は近づかないようにしよう。
「今度は真っ赤なオープンカーにするか」
「もうただのドライブじゃん」
「私たちはそうですもの」
私の仕える神様はこの二人なのかな?
荒野を駆ける真っ赤なオープンカーは、荒野を探索する人たちの注目の的みたいだ。たまにカメラを構えている人もいるし、なんか恥ずかしい。
「コンドリオンの許可はとっておいたでの、人気のない所で待っていてもらっておる」
「それでは移動時間が掛かるんじゃありませんの?」
「なぁに、こやつに転移してもらえば直ぐじゃ」
だったら人目の着くところを走る必要なかったんじゃん。気分良くなってるのはヨーナだけだよ。それよりモンスター達自由すぎない? 角ウサギもそうだったけど、アポ取り簡単すぎるでしょ。
太極図により自分以外も対象に出来るようになったことで、タツノの指定する場所に車ごと転移するのも簡単だ。転移先は第二大陸を二つに分断する山脈を越えた先で、此処ならプレイヤーもまだ到達していないらしい。そりゃエベレスト並みの山脈は簡単には越えられないだろうよ。
「さて、もうじきコンドリオンも来るじゃろう。くれぐれもこちらに攻撃を来させんようにの」
「分かってるよ。見えてきたから行くね」
ちょっぴり用事が出来たから早く終わらせたいんだよね。と言うのも、魔法が取得出来た称号を確認していたら他の称号も含め全部の物でMP+1000が選択肢に出てたんだよね。尻尾のストックももういらなくなっちゃったし、神社に行って変えてこないとね。今はMPの量が全てだし。
プロフの魔法に関しては、称号の効果が元に戻ってレベル確認機能が付いていた。最初からそれで良かったんじゃないかな? でも、魔導書だから魔法にしたかったのかもしれない。
先ず、コンドリオンに近づき衝撃を出して地面に落とす。そんでもってコンドリオン目掛けて光弾とビームを撃ちまくる。トドメは一度はやってみたい刀を振らずに斬るってやつ。何だろう、気分は爽快だね!
「一人だけ違うゲームをやってるみたいだな」
「取るかどうか悩んでしまいますわね」
「がんばっちゃいなよ! 世界が変わるよ!」
「変わるのは世界観だろ。まぁ見てるだけで面白いからいいか」
オープンカーに戻り感想を聞いてみるとこんな有り様。二人はチート仲間になってはくれなさそうだし、他に現れるのを期待しとこう。一人は流石に寂しいのです。
もう少しドライブを楽しむと言う三人と別れ、神社に行き称号の効果を変更する。変更するのは【強欲な九尾の狐】【フライングヒューマノイド】【意小身】【念動力者】の四つで、強欲のやつはMP+10000に戻し、他はMP+1000にした。他にも【闘争の目覚め】【飛刀転身流】【不運】【浮き世離れ】をオープンカーに乗っていたときにMP+1000の効果に、【天狐】をMP+10000に変更しておいた。これで私のMPは42000だ。
この範囲で何が出来るかは、やりたいことをメモかなんかに書いておいて逐一やっていこう。あっ! そうだ! 良いこと思いついたよ!
ログハウスに戻ると丁度良いことに三人も戻ってきていて、ティータイムをしている最中だった。
「サクラ、ヨーナ、ちょっと立って!」
「嫌ですわ。そんな歳になってスカート捲りはどうかと思いますわ」
「えっ……なんで?」
「自分がスカートじゃないなら、お前やりそうだもんな」
「それに、やったら分かってますわよね」
「ごめんなさい」
夢も希望も無かったよ。
「そんなことをしようとするなら、もちの為にお菓子でも出してやったらどうだ?」
そんな事まで出来るのかな? と、思いつつも夢溢れるバケツプリンが出てくるように念じてみると、テーブルの上にバケツに並々と入ったプリンが現れた。
「貰って良いんですか!? 良いんですよね!?」
そんなプリンを直ぐに大事そうに抱えて問うてくるもちに許可を下すと、勢いよくスプーンで口に運び始めた。びっくりするような勢いだ。なんでも、手作り並みに美味いらしい。
「お菓子事情も解決ですね。量産、お願いしますね」
先生の嬉しそうな顔が見れたから良しとしようか。今度、ラーメンみたいなケーキ作ってみようかな? カツ丼も捨てがたい。




