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36. スポーツな戦い

 各々好きなスポーツウェアに着替え、球場にて向かい合う。


 このスポーツウェアも先生が作ったものだけど、その先生はこの戦いには参加せず、今もお菓子づくりに励んでいる。


 食べ盛りが居るからなぁ。人員補充は急務かもしれないね。


「最初は野球だよ」

「はぁ、勝てる気はせんが仕方ないのう」


 あれ? 戦う前はシンラ獲得のために張り切っていたタツノだけど、何故かもう諦めモードみたい。


 ため息混じりでその理由も語ってくれたけど、その理由は【研ぎ澄まされる者】の称号の所為なんだとか。


 そんな凄いものなんだね。どうしようもない人だったけど、ありがとうお兄さん。


「よく私が取ったって分かったね」

「タヌキを見れば分かるのじゃ。あれは真面目に瞑想したご褒美だからのう」


 動機はどうあれ、あの時の私を褒めてあげたい気分だね。ついでにもう一回お兄さんありがとう。


 こんなに可愛い子に会えたんだし、それだけじゃなく所有者には能力アップの恩恵というおまけ付きだもん。


 ああ、うちには可愛い子が多すぎるよ。


「何でお前だけそんな良いもの持ってんだよ」

「ヨーナはさ、四時間の間ひたすら攻撃されながら瞑想を続けることが出来る?」

「よく耐えれましたわね」


 私の涙はシンラだけが知っているの。もしかしたら原住民も知ってるかもしれないけどね。


 さて、タツノが弱気なので先攻は譲るとして、直ぐに配置についてプレイボールといこうか。


 私のチームのメンバーと配置は、サクラがピッチャーでヨーナはキャッチャー。フィナがファーストを守り、私がショートの合計4人。


 私がショートなのは神速通で自由に動く為だけど、ぶっちゃけ外野でも良いくらいかな。


 対して相手チームのメンバーはタツノ、タツミ、師匠、もちの4人。


 此処にもちが居るからこそ、先生には今の内にお菓子を沢山作って貰っているの。


 今度温泉に連れて行こうかな? 福利厚生は必要だもんね。


「プレイボール!」


 そして配置について直ぐ、ミスノの掛け声によって勝負の幕が開く。


 作業を中断して貰い審判を頼んだのだし、なるべく早めに終わらせられるように頑張りますか。


 相手の一番はもち。


 正直、タツミ以外は皆スピード自慢だから塁に出られると危ないと思う。だから、打たれたら確実に捕ってアウトにしないといけないね。


 しかし、そんな心配をよそにサクラの増えたり消えたりする魔球のお陰で、もちと続く二番のタツミを三振に抑えることが出来た。


 しかし続く師匠は勘の鋭さ故か抑えることは出来ず、打球が綺麗な放物線を描きホームランコースへ打ち上がるものの、私がフォローしてアウトに。


「神速通か、何故戦闘で使いこなそうとしないのか」


 未だにあの戦闘のことを根に持つ師匠は放っておくとして、これでスリーアウト。攻守交代だね。


 いそいそとベンチへ戻り、向こうのチームの配置を確認してみると、それはどことなくデジャビュの様に感じる光景だった。


 タツノがピッチャーで師匠がキャッチャー。一塁もちで、ショートにタツミ。


 私達と同じような作戦だろう。対して私達の一番バッターは、私なのです。


「そう来るじゃろうな。まぁよい、やるだけやるか」


 そう言うタツノの投げる球はかなりの豪速球で、ボールを受けた師匠が後ろに飛ばされるほどのものだった。


 一球目はバットを振らずに見送ったけど、正直打てる気がしないかな。


 でも【研ぎ澄まされる者】の効果か、タイミングを教えるかのように尻尾がざわめき、【鬼の弟子】も連動しているのか正確に体が動こうとする。


 お兄さんが勧めてくれたのも、そのことあってのものなのかもしれないね。でも、スポーツが戦闘と捉えられるのはどうなのかと。


 そして二球目。


 尻尾のざわめきに従い感じるがままにバットを振り抜くと、豪速球を正確に打ち抜いた打球は放物線を描こうとはせず、タツノやタツミも反応できないほどの速度でバックスクリーンを貫いた。


「はぁ、止めじゃ。この勝負は妾達の負けで良い、その代わり次の勝負は妾達が決めさせて貰うぞ」


 タツノはまだバットを握っていないから、勝負はまだ分からないと思うんだけどなぁ。


 案外、ヨーナとサクラも隠し玉を持っていてそれを見抜いているのかも。


「そこんとこどうなの?」

「お前みたいなビックリ人間じゃねーよ」

「アオイさんが神速通でボールを捕る限り、相手に得点は入りませんのよ」


 でも、流石にあのチームの盗塁は防げそうに無いけどなぁ。あの瞬足達なら、ヒットさえ出せば盗塁を繰り返して点取りそうだもん。


「それに、私も念動力者ですもの。次からは簡単には打たせませんでしたわ」

「「えっ!?」」


 それは私もヨーナも初耳なのです。


 何でも対戦機能なんかが出来た時の為、手の内はあまり教えたくないらしい。サクラは非情なのだ。


 そして休憩と夕食を挟み、タツノから発表された競技は一対一の五十メートル走。


 勝ちが多い方が勝ちというシンプルなものだけど、これ最初から負けを認めてもいいかな?


 結果は言わずもがな私達の負け。


 唯一私がタツミに神速通を使って勝ったくらいで、期待されたフィナともちの勝負は、元馬故かもちが競り勝った。


 これで一勝一敗となり、長々やるのもどうかと言う話になって、次の勝負で決着を付けることに。


 競技は師匠の強い要望により、スポーツチャンバラに決まった。


 ルールは何故かサバイバル戦。


 最後まで残っていた人のチームが勝ちというのに、チーム関係無く全員に攻撃可能というのは流石、戦闘好きな鬼らしいのかな。


 武器に関しては競技用の柔らかい剣と槍の二種類を使い、魔法に関しては攻撃魔法と相手に作用する魔法は禁止と、スポーツの範囲には収まっていると思う。


 まぁ、本来のスポーツチャンバラも詳しく知らないから、まるっきり同じようにはいかないけどね。


 この脳筋ルールに乗り気なヨーナは放っておくとして、協力しちゃいけないなんてルールは無いので三人で作戦を練るも、私は放流。


 私をしっしっと追いやると、サクラとフィナはこそこそと二人だけで話し合いを始めてしまった。


 むぅ、とりあえず相手チームの殲滅を目指せば良いや。


 勝負の場所はサッカーコートで、白線から出たら即失格だけどゴールの上はセーフ。


 各自好きな位置にスタンバイして開始の時を待つのだけど、好きな位置と言っても自然と陣地が分かれちゃったのは動きやすいかな。


 そんな中、私は中央の円の中で師匠と睨み合う形で待機する事にした。


 私としては、自由に動く為に他のメンバーから距離を取りたいと思い真ん中にきたけど、師匠としては私と勝負がしたいんだろうね。


「今度は逃げられんぞ」

「そう言って別の誰か討たれるんだね」

「言ってろ」


 体のどこに当たっても負けになる分、尻尾のある私は不利だけど、当たらなければどうということはないのです。


『皆、準備は良いか? では、始めっ!』


 放送により、場内にミスノの声が響くと同時に神速通でゴールの上に立ち、そこから辺りを見渡す。


 既に一撃目を避けられた師匠はこちらに向かっているから、のんびり観察している時間はないね。


 単独で動いているのはタツミとヨーナ。タツノはもちと組んでいるみたいで、サクラはフィナと行動するみたいだから、狙いはあそこだ。


「あっ! すいません!」

『もち、ヒット!』

「くっ! 分身か!?」


 神速通で師匠から距離を取ると、誰にも見えないよう背後で分身を作り、もちのすぐ側に神速通を使い送り込む。


 予想通り、現れたものをタツノが反応し槍で突くと、その隙をついて本体である私がもちを強襲し、討ち取った。


「邪魔だっ!」

「お主がだろう! 突っ走るなら迷惑を掛けるな!」


 直後にこちらに突撃する師匠を、タツノを盾にやり過ごし直ぐに次の目標へ。


 タツノは、サクラとフィナが抑えてくれると信じてる!


「うわっ! やられたかぁ」

『タツミ、ヒット!』


 ヨーナと一騎打ちを繰り広げるタツミの隙をつき、さくっと討ち取る。


 その直後、尻尾のざわめきを感じた為にすぐさま距離を取ると、その正体はヨーナの攻撃だった。


「私も勝ちたいからな、一番やっかいなお前を今の内に討ち取らせて貰うぜ!」

「お前になどやらせんよ!」


 そんな勝利に燃えるヨーナに師匠も追いついて来た為、厄介なことになりそうだけど、ある意味これはチャンスかも。


 敢えて師匠に突っ込み、その攻撃をギリギリで躱わす。


 そして背後でヨーナが攻撃してくるのを感じると剣を残し神速通で離脱し、巻き添えを避けるように背後に飛ぶ師匠に向け念動力で操る剣を当て討ち取り、そのまま流れるように攻撃後で隙のあるヨーナを討ち取る。


『師匠、ヨーナ、ヒット!』

「くそっ、狡いぞ!」

「また逃げるのか! せめて打ち合え!」


 二人の文句には、聞こえないふりをしておこう。ルールを破ってないからね、勝負は非情なのです。


 さて、残りの相手チームもタツノ一人。


 意外にサクラの槍の扱いが上手いものの、フィナとの二対一でも、討ち取られないタツノは流石だよね。


 ここであそこに加わっても逆にやりにくくなるだけだろうし、状況を見つつここから援護しよう。


 剣を回転させるように投げ、念動力で操りタツノに攻撃するも、簡単に躱されてしまう。


 でも、この攻撃はついでなのです。


 サクラが同じ様に槍をこちらに投げるのに合わせ、剣の回転を止めサクラの側に落とす。


 そしてサクラがそれを拾おうとする隙を庇うようにして、フィナがタツノを引き付けて討ち取られてしまう。


 けれど、それでも十分な時間は稼げたね。


 私の側で回転を止めた槍を取り、神速通を素早く繰り返して移動しつつ、タツノの持つ槍を細かく攻撃して弾き飛ばす。


 そして、剣を手に取ったサクラが無防備なタツノを討ち取った。


 ふぅ、正直あの動きなら簡単にタツノを討ち取れただろうけど、どうせなら格好良く決めたかったんだよね。


 サクラも乗ってくれたし、私は満足なのです。


『フィナ、タツノ、ヒット!』

「はぁ、その動きを師匠に使ってやれば良いものを」

「一度やっちゃうともっとしつこそうだし」

「あやつは逆じゃぞ」


 あれ? 選択を誤ったかもしれない。


 次の機会があったらちゃんと相手をしようと心に決め、とりあえずこの勝負を終わらせるために動き出す。


「さぁ、どうぞ」

「はい、これで終わりですわね」

『アオイ、ヒット! 勝者サクラ!』


 味方同士で戦ったって仕様がないしね。


 さて、勝負も終わったことだし温泉にでも行こうかな。温泉に浸かって日本酒でもお酌すれば、師匠の機嫌も直るだろうしね。


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― 新着の感想 ―
[一言] ( ̄□ ̄;)!!現役コーコーセーなのに(笑) ひでぇ……………ww せめて、転ばずに走れる(速さは問わない)ようにならないと何かの避難行動も出来ないぞ(笑)
[一言] 四人野球 忙しそう スキル無しでやったらどうなるのかなぁ~(//∇//)
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