30. カジノでの衝撃
この日のログインは、先程まで家の洋食屋でバイトみたいなことをしていたので夜からです。
せめて二人に奢った分は取り戻したかったのだけど、二人とも思う存分に頼みやがってさ。結局、昼までのつもりが夜までやることになってしまった。
でも、それが幸運だったのかもしれない。
リビングに下りてみれば、其処には料理をする先生に、ゲームをするゴーレム三人娘とタツミ。そして、キボリをソファー代わりにぬーちゃんとクロを抱きしめるタツノの姿。
姿の見えないミスノは、外にいるか鍛冶でもしてるんだろう。
そこまでは良いのだけど、優雅に紅茶を飲むトヤマさんと、ぐったりとソファーに横たわるサクラとヨーナの対比が凄いの。
「何かあったの?」
「こんばんは、アオイちゃん。いえ、ちょっとしたカーチェイスをしただけよ。ああ、メニューにあったお金、ちょっと使ったわ」
てことは、アトラに行ったんだね。お金を使ったことは少し気になるから聞いてみると、アトラで車付きの家を買って、運び屋みたいなアトラクションをやったみたい。
うん、どんどん別荘が増えていく。このままいくと、例えゲームに閉じ込められたとしても飽きずに暮らしていけそうだね。
まぁ、そんな事よりもぐったりとする二人の姿だよね。映画みたいなことになったんだろう、相当酷かったんだよね。ふひひ、天誅だ。
「それより、昨日からカジノの先行体験始まってるんでしょう? 早く行かない?」
ぐったりする前の二人から聞いたのかな? あのチケットは一枚につき一人招待できるし、トヤマさんも凄い楽しみみたいだから一人分は確定かな。
でも、未成年は体験だけで、実際に賭けたりは出来ないみたいなんだけどね。ゲームなんだから良いじゃないかと、思わずにはいられないよ。
「カジノか! 妾も行くぞ!」
「カジノ! 私も行く! 連れてけバカ!」
そんな私達のカジノの話を聞いたのか、もふもふの話ではないのにテンションが上がっているタツノと、普段ゲームばかりしていて動かない小豆が名乗りをあげた。
モンスターも人数にカウントされるから、これで全員だね。
でも、小豆はゲームのカジノじゃ満足出来ないから行きたいそうなんだけど、こんな外見幼い子を連れてって大丈夫なのかな?
「小豆は外見で拒否されたりしない?」
「あそこは外見では判断せぬよ」
それは良かった、と言うか外見で判断されたらロリロリなプレイヤーも拒否ってことになっちゃうもんね。
「そんな事より早く行くぞバカ!」
でも、言葉遣いは兎も角、こんなにはしゃぐ幼女を人が多いところに連れて行くのも、多少不安なんだけどね。
面倒なロリコンが居ないことを祈ろうか。特にお兄ちゃんとか。
あと小豆、せめてサクラとヨーナが回復するまで待ってあげようね。
「カジノはもう少し後ね。でも、トヤマさんってそんなに運転荒い人なの?」
「現実ではちゃんとやってるわよ。ただ、嫌なことがあっただけなの。あのセクハラおやじがっ!」
おっと、触れてはいけない部分に触れてしまったのかも。トヤマさん、手に持っているカップを割りそうな勢いだよ。
てか、トヤマさんが言うって事は、私の通う学校の教師ってこと? その人、生徒には手を出さないよね、大丈夫?
夏休みが終わったら、教師が一人居なくなってたりなんてしたら怖いのだけど。
「あ、大丈夫よ。その人ただのコスプレを勧めてくるだけの人だから、害はないわ。ムカつくだけで」
「それって、大丈夫じゃないと思うよ? え、誰なの?」
基本、うちの学校の教師は良い人ばかりなはずだけど、文化祭なんかは注意しなきゃかな?
そんな不安を植え付けられた直後、ダウンしていた二人が復活したので早速チケットを使い、玄関から現場へゴー!
其処は明けない夜の街、スベガ。先程までの不安なんて溶けていくかのように、闇夜に浮かぶ絢爛なネオンは立ち竦む私達をも照らし出す。
なんて詩的な表現をしたって、人で溢れかえるこの場はただのテーマパークみたいな物に見えてしまうけどね。
そんな常に夜であるこの街では、そのネオンに照らされ存在感を放つカジノと、併設された競馬が楽しめるみたい。
カジノだけに、マップで現在地を見てみると北アメリカ大陸がデカデカと映り、ズームして詳しく見ても、カジノで有名なあの街の中をさしている。
もしかして地球丸ごと作るつもりかな? 現実と同じ訳じゃないとは、何だったのかと。
「カジノは一日二時間の制限時間があり、競馬は賭けだけじゃなく自らが騎手になってレースに参加することも出来る、ね。なかなか楽しそうじゃない」
「何故、私はもちを連れてこなかったのか」
「ネタに出来るチャンスだったのにな」
「私もシャロウインパクトを連れてくれば良かったですわ」
まぁ、開催期間は一週間だし、まだチャンスはあるか。今は、早くカジノ! と騒ぎ立てる小豆をカジノに連れて行こう。
まったく、見た目相応って感じではしゃいじゃって。大人しく私の尻尾を撫でるタツノを見習ってほしいくらいだよ。
いや、尻尾は撫でてほしくないけどさ。
「トヤマさんのは撫でないの?」
「妾は可愛いのが好きでのう、美人はお呼びでないのじゃ」
あ、トヤマさんが凄く複雑そうな顔をした。まだまだ可愛いと言われたいお年頃なのかな?
そんな人それぞれな感情を持つみんなを引き連れて人混みを掻き分け、やっとの事でカジノのある建物へと入ると、其処はそれ以上の人の多さだった。
「私は行ってくるからな、バカ」
そう言いのこすと、勢いよく人混みを掻き分けて進んでいく小豆。
入り口で言われたけど、座敷わらしも見た目上賭けるのはダメみたいだし、ちゃんと満足してくれるかちょっと不安かな。
でも、何故あの子は私をバカ呼ばわりするんだろう。いつかデレるかな? 期待して良いのかな?
そんな真っ先に動き出した小豆は私が追い掛けるとして、他のみんなとは制限時間が来たら広場に集まることに。
とは言っても、タツノは私から離れようとはしないのだけどね。
「タツノは何かやりたいものはある?」
「何か、か。そうは言っても、何をやっても結果は一緒だからのう。座敷わらしを連れてきた時点で勝ちは決まっておる」
「……え?」
なんでも、座敷わらしの幸運は同じ主人にテイムされたモンスターにもおよぶらしい。そんなに凄いのか座敷わらしは。
「そもそも、座敷わらしは特殊な条件を満たさねばテイムはできん、こんな序盤にテイムされている小豆が特殊過ぎるのじゃ」
もしかして、うちには問題児ばかりが集まってるんじゃないよね? タツノが黙りこくったままなのが怖いよ。
その後、賭けていないとはいえ何をやっても勝ち続ける私と小豆、そして盛大に稼ぎまくるタツノは他の人に怪しまれるという理由で、VIPルームへ通された。
此処は座敷わらしを連れている人用の部屋で、座敷わらしの幸運の強さを競う場所らしい。最初からここに通さなかったのは、雰囲気を味わってほしいという優しさからだとか。
まぁ、さっきのタツノの話の通り、ここに通されたのは私達だけしか居ないのだから、競うも何もないんだけどね。
バニーガールのディーラーとカードゲームを楽しむ小豆は放っておくとして、私はタツノがひたすらスロットを回し続けるのを見ていよう。
そして、制限時間いっぱいまで七が並び続けるある意味恐怖を味わった後、歩くのが面倒だという小豆を抱え、広場で皆と合流。
ホクホク過ぎて恐怖を味わった私とは違い、ヨーナの落ち込みようが酷いんだけど、一体なにがあったんだろうか。
「全く勝てないそうですわ。賭けが出来ていたら大変なことになってましたわね」
「これも経験ね、こうやって大人になるのよ」
なる程、でもこれでヨーナは健全な大人になれそうだね。痛みを知れば、その手の物に手を出すようなことはしないだろうし。
その点、私はダメにならないように気を付けないとね。ここで遊んでいると働きたくなくなってくるから、本当にお金は怖い。
そうヨーナを励ましながら、最後の締めにと競馬場にやってきたものの、タツノはここで賭けるのはやめておくみたい。
なんでも、勝ちが決まってしまうため、レースに参加するプレイヤーの馬にも強制力が働いてしまうらしい。
なので、真剣勝負を楽しんで欲しいそうだ。
「それにしても、九頭中五頭が餅関係の名前ですわね」
「アオイはでなくて良かったかもな」
うん、これだとネタが弱くなっちゃうよね。そんな餅だらけのレースにでている人達は今、どんな気持ちなんだろう?
いや、ネタが弱くなるなんて事はなかった。団体芸だったよ、何あの粘りまくる餅軍団。
会場に響く実況の声も楽しそうだったし、こんな競馬がいつも続くなら楽しいのに、とは今は口に出せない。隣に立ち尽くす人が居るから。
「と、トヤマさん? これも経験ですわよ」
「そ、そうだよ。流石に、全額賭けたなんてことはないだろ?」
「賭けたわよ、全額……。だって、ハルウララニなんて名前、応援したくなるじゃない!」
「それ、絶対ネタだったよ。見えてる地雷だよ」
はぁ。トヤマさんって、競馬向いてないかもね。
こんなにも落ち込むトヤマさんをこのまま放っておくのもあれなので、一度カジノの隣に建つホテルで休憩する事に。
ルームサービスの料理が絶品だとタツノが言っているし、ちょっとラッキーな結果になったかな。
とりあえず、小豆の頭を撫でておこう。うん、大人しく撫でられているのを見ると、デレは意外と近いのかもしれない。
そうして辿り着いたホテルは、その見た目からしても豪華絢爛で、カジノのネオンにも負けないほどだった。
中はさらに凄く、空間を拡張しているのかロビーには幾つかのビリヤード台やバー、ダーツなどがあり、多くの人で賑わっている。
そんな光景にはしゃぐかと思った小豆だけど、そんな素振りは見せずに、大人しく私の腕に抱かれている。
多分それは此処にくるまでに話し合っていた、この後行く予定のゲームセンターが楽しみだからだろうね。
カジノを楽しめなかった未成年の人の為にある物で、レトロな物から最新まで揃った、結構大規模な所みたいなの。
受付を済ませてくれたタツノは、稼ぎまくったお金で一番高いロイヤルスイートルームを確保してくれたけど、その所為でトヤマさんは余計に落ち込む始末。
とりあえず、ルームサービスは頼み放題みたいだからビールは頼んであげるとして、私は何を頼もうかな? あ、ケーキの盛り合わせが凄い! これにしよう。
そうしてやってきたトヤマさん用のビールとおつまみセット、そして私のケーキの盛り合わせ。
どちらも盛りに盛られた物だった。
おつまみセットは唐揚げやコロッケ、トンカツなどの揚げ物がタワーのように積まれたもので、私のケーキの盛り合わせも、ホールケーキがタワーのように積み上げられている。
まるで夢のような、いや、夢に出てきそうな光景だよね。
「お前、こんな量食いきれるのか?」
「余ったらアイテムボックスに入れとけばいいよ」
「あら、このチーズケーキ美味しいですわ」
そんな大量のケーキを一緒に摘まむ二人は、カットケーキ一つ分を食べたら直ぐにゲームセンターに行くみたい。
小豆を預けておこうかな、私はもう少し食べていたいしね。
タツノはトヤマさんの尻尾を撫で回すのに忙しいみたいだから、そのまま任せておこう。一人で落ち込みながらお酒を飲む姿は、どこか可愛いらしいようです。
さて、そんな二人を見ながらも食べ進めたケーキには大満足だし、残った物はもちへのお土産ってことにして、私もゲームセンターに行ってみようか。
タツノに声をかけて部屋を出て、神速通でホテルの隣にあるゲームセンターへ。
そして中へ入ってみると、丁度サクラとヨーナが入り口近くで太鼓のゲームをしているとこだったので、私も参加して交代しながらやることに。
「お前、こういうゲームは得意だよな」
「直感で出来るしね」
「その割に楽器は壊滅的ですわよね」
ふふん、勝てない人の負け惜しみなんて聞こえません。小学生の頃の悪夢は、思い出してはいけないのです。
うぅ、あれは恥ずかしかったなぁ。って、しまった! あぁ、負けちゃった。




