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27. 強い奴は変な奴?

「オリハルコンの武器が出来たぞ」

「何その格好」


 朝っぱらから凄いものを見てしまった。


 そんな報告をしてきたミスノの格好は、つなぎにタンクトップという如何にも作業していますって言うような格好で、髪も纏めて、つなぎの袖を腰のあたりで縛ってる様はまさに工場の職人と言ったところかな。


 でもね、もう目線は一カ所にしか行かないよ。


「先生に作ってもらったんだ。どうだ? 似合うだろう」


 似合ってはいるよ、一部が目立ちすぎるけど。丁度やってきたサクラは、その格好が気に入ったみたいだけどね。


「ここまでくると見事ですわね」

「サクラ、変えてくれば?」

「色欲エルフの誕生か」


 次いでやってきたヨーナも、私の一言で状況を察してくれたらしい。大罪系の称号を持ってないのはサクラだけだからね、早く仲間になるのだ!


「色欲なら持ってますわ」

「「えっ!?」」


 それなら何故、私達のような反応がなかったのかと。てか、見た目殆ど変わっていないから分からなかったんだけど!


「ローブの下は、ボンキュッボンになっていたのですのよ?」


 エルフがボンキュッボンとかさ、まさに色欲エルフって感じがしてしまうんだけど!


「それと、同性をも手玉に取るあなたへと言う名目らしいですわ。他人をからかったりすると出やすい称号らしいですわね」

「なる程、私達はサクラのハーレムなのか」

「それならご奉仕しなきゃね!」

「私にも選ぶ権利はありますわぶっ!?」


 ふっ、そんな事を言うから、先生の特製投擲用パイが火を噴いてしまったぜ。


 さぁ、外に行ってウォーセにペロペロしてもらってきなさい。あの子も喜ぶから。


 そんなペロペロタイムも終えたサクラが戻ってきたところで、ミスノが造ってくれた武器の確認。私のは見た目は綺麗な日本刀だし、サクラの大鎌も装飾の綺麗な物。だけど、ヨーナのは異様だ。


「随分幅が広いですわね。盾も兼用ですの?」

「これは琵琶湖の流れに乗るためだ。ボード兼用だな」

「それでプレイヤーを薙ぎ倒すんだ。鬼畜ぅ」


 ははっごめん冗談です。だから、剣先向けないでよ怖いから。


 ひとまず試し斬りがしたい、と言うヨーナにぞっとしながらも、それならランダムダンジョンへ行ってみようと提案してみる。


 折角ボスモンスターのぬーちゃんをテイム出来たのだから、どれほどの強さなのかも試してみたいからね。


 それについても話してみたら、二人は二つ返事で了承してくれた。てな訳で、島のランダムダンジョンにやってきました!


 早速、扉を開けて潜り抜けた先は迷路みたいな洞窟で、ヨーナの大剣でも楽に振るえるほどの広さがある。


 ただし、千里眼が通用しなかったため、マッピングが少々手間かもしれないね。


「ぬーちゃんが鳥になって、洞窟を調べてくるのです!」


 いやぬーちゃんさん、喋るためだと言うのは分かるのだけど、私の幼い頃の姿になるのはやめてね? 

 分身の時並みに二人の視線が生暖かいんだよ。当時と似たような喋り方をしているから、余計に私に向けられる視線が生暖かいんだよ。


 しかし、直ぐに鳥になって飛んでいくぬーちゃんはとても優秀で、完璧に構造を把握してくれたお陰でナビはバッチリとマッピング要らず。


 後は時たま現れる敵を倒して進むだけとなったんだけど、先ずは武器の性能を試すと言うことで腕に抱くレッサーパンダは少しつまらなさそう。


 なんせ、オリハルコンの武器が強いのかどんな敵も一撃だからね。


 クラフトモードを使わない、手作業で作る武器や防具は攻撃力や防御力にボーナスが付く、って言うけど、そのお陰でもあるのかな?

 

 試しに、お兄ちゃん作のミスリル武器を使ってみても、四回位は斬りつけなきゃ倒せなかったよ。いやぁ、それにしても念動力は便利だ。武器の持ち替えなんて必要ないしね。

 

 因みに、敵はシャッコー。下半身が人間で、上半身がシャコという気持ち悪いモンスター。頼むからお腹は見せないでほしい。


 でも、ドロップのシャコは嬉しいかも。


「シャコは美味いって言うよな」

「またバーベキューでもするの?」

「今回は海鮮が良いですわね」


 所謂、浜焼きかな? それなら島でやった方が雰囲気でるよね。ま、それは夜の楽しみとして、今はたどり着いた地下へと下りる階段を進んでいこう。


 でもまぁ、次も海鮮系だといいなぁ。


 そんな私達の願いが通じたのか、次の階にいたモンスターはハマグリコ。頭が蛤で体は人間、あの大阪にある看板の様なポーズで迫ってくると言う、夢にでそうな気持ちの悪い奴だった。


 でも、ドロップのハマグリは美味しい。どんどん来て!


「なあ、次何欲しい?」

「マグロ!」

「イカ焼きも食べたいですわ」


 一階と同じようにこの階も攻略していき、早くも地下二階。


 其処で待ち受けるモンスターは、マグロイド。マグロに機械の多脚がついた異色のモンスターで、動きがキモイ。すばしっこいし。


 でもマグロは大歓迎だよ!


「このダンジョン、美味いけどキモイな」

「もうやめとく? 触手出てきたらヤダよ」

「でも海に行くよりは倒しやすいと思いますわ。進みましょう」


 そんなキモイけどドロップが美味しい奴も倒しまくり、階段を下りて向かった地下三階は、一見するとモンスターがいない。


 でも、私には見えてしまっていた。このフロア全体の壁が、ナマコカベというモンスターだと言う光景が。


「襲ってこないみたいだし、ここはスルーだな。私達はナマコの味が分かる歳じゃない、そういうことにしようぜ」

「そうですわね。攻撃してどうなるか分からないですもの」

「汁とか出そうだよね」


 うむ、時には避ける事も大事なのです。そんな蠢き出す壁は無視して地下四階に下りてみると、其処は今までのモンスターの揃い踏みだった。


 なるべく壁に攻撃がいかないように気を付けて戦いながら、ドロップ目当てでひたすら倒し、満足したところで下へと続く階段を探して辿り着く。


「次がラストかな?」

「オールスターで出たならそうなのかもな」

「次こそイカを期待したいですわ」


 モンスターは別として、結構あっさりとしたダンジョンで驚きという物はなかったけど、サクラがそこまでイカが好きなんて知らなかったから、そこにはちょっとびっくりかな。


 イカリングこそ至高だと力説するサクラの話を聞き流しながら、次第に人工物の装いになっていく階段を下りていく。


 そして辿り着いた地下五階のフロアは、一面石畳が引かれた動きやすそうな場所。おまけに中央にはボスらしき巨大なモンスターが浮かんでいるし、予想通りこれで最後の階みたいだね。


「イカジキだってさ。カジキマグロの尾鰭がイカの足って、イカしてるね!」

「サクラ、念願のイカだぞ」

「そうなんですが、あれはどちらがドロップするんですの?」


 あの、私の渾身の駄洒落たったんですが?


 スルーされた悲しみから、思わずずっと腕に抱いたままだったぬーちゃんをギュッと抱きしめる。慰めて……、ってぬーちゃん、お願いだからそっぽ向かないで下さい。


 しかし、そんな余裕もイカジキの途轍もない速さに吹っ飛ばされることとなる。


 止まることなく高速で動き続けるイカジキに攻撃を当てているのは、追尾性能を限界まであげたサクラの魔法と、私とその分身、そして私の姿に変化したぬーちゃんの使う防衛用の狐火だけ。


 すれ違いざまに斬ろうとしても、イカの足で防御してくるのがとても厄介だね。


「ヨーナさんも魔法を組んだら如何ですの?」

「ヤダね! 私は拘る女なんだ!」

「それは、せめて攻撃を当ててから言ってよ!」


 ふぅ、武器を試すためでもあるから真面目に戦闘をしようと思っていたけど、こうなってしまったのなら、切り札を使うしかないよね。


 そう、ぬーちゃんがタツノに変化するのだ!


 そして、流石切り札といったところか、タツノに変化したぬーちゃんの力は圧倒的だった。


 有無をいわさぬ流星群のような光弾は、イカジキを一瞬で光に変えてしまうほどの威力。これはもうタツノさんを怒らせられないわ。


「タツノに倒せない奴はいるのか?」

「あれでボスじゃないんだよ? きっと上がいるんだよ」

「それより、イカはドロップしましたの?」

「両方ドロップしたよ」 


 そうサクラに告げれば満面の笑み。だけどね、お願いだからぬーちゃんは元の姿に戻って下さい。私に抱きつこうとするのは、元の姿に戻ってからにして下さい。


 タツノの姿だと、尻尾を捕獲された時のことを思い出して尻尾がキュッてなるからさ。


 さて、ぬーちゃんも大人しく元の姿に戻り、サクラのよく分からない喜びの舞も終わった所で、メインディッシュと行きますか。


 実はイカジキを倒した時、フロアの中央に宝箱が出現していたんだよね。


 ふふっ、フィナ達を連れてきていなかったのは残念だけど、結構強かったボス戦の後なのだし、悪い物は出ない筈。早速開けてみよう。


《貫きの大鎌を入手いたしました》


 アイテムボックスへ入ったそれを取り出してみると、見た目は穂先が長い槍に大鎌の刃が付いたような感じ。


 でも、説明を読んでみると鎌の部分が取り外し可能で、念動力のように操れる特殊な武器みたい。これはサクラにあげた方がいいかな?


「これは私よりサクラの方が良いよね。はい」

「有り難うございますわ。ふふっ、大鎌の二刀流も良さそうですわね」

「フォークとか使うなよ」


 いやいや、ヨーナさん。流石のサクラもそこまでやらないと思うよ?


 でも、早速性能を試したいとウキウキしだすサクラを見ていると、本当にやりそうで不安になってくるよ。


 まぁ、私としても王威の剣の性能を試すのを忘れていたし、ログハウスに戻る前にドロップ目当ても兼ねて、地下四階で試してみることに。


「どちらも一撃では比較になりませんわね。それに大鎌二本は扱いにくいですわ」

「ミスノに相談してみればいいんじゃねーか?」


 うん、王威の刀も同じ感じだ。でも、私はオリハルコンの武器も使い道があるからまだ良いけど、サクラは少し勿体ないよね。


 折角武器を作ってもらったのに、それと同等、いや特殊さで言えばそれ以上の武器が手に入ったんだから。


 とりあえず作ってもらった大鎌の使い道を相談員するために、狩りは早々に切り上げてログハウスへ帰還。


 すると丁度良くリビングで優雅に紅茶を飲んでいたミスノを発見したので、早速その事について相談してみる。


「それなら、ダンジョン武器をオリハルコンで強化してやろう。一度インゴットに戻すから、その間に昼食へ行くといい」


 へぇ、そんな事も出来るんだ……って、そう言えば防具もミスリルで強化してもらっていたっけ。


 勿体ないをなくす仕様は嬉しいし、なによりオリハルコンを強化素材に使うと、魔法攻撃にボーナスが付くみたい。サクラには丁度いいね。


「ミスリルにはそういうの無いの?」

「ミスリル製の武器には元々その効果はあるぞ。素材にしても付かないがな」


 全く気付かなかったんだけど。



 さて、昼食も頂きログインして直ぐにやってきました、オキナワ領の海。


 武器の強化もまだ終わらないので、どうせなら夜に予定しているバーベキューまでの時間を、人気の海で過ごそうかと思いやってきたのです。

 

 白い砂浜に輝く海、そして海面に佇む立派なメタボ腹なうえバーコード頭な褌のオジサン。うん、モンスターのオジサンです。


 てか、壮絶な減点が加わったんだけど。せめて褌ではなくて水着にしようよ!


「なんか凄いこっち見てる」

「テイムしてほしいんじゃねーの?」

「かなり強いらしいですわよ。アオイさん、如何かしら?」


 いやいや、あんなのテイムしたらトヤマさんに怒られるよね? 不純だって怒るよ、絶対。


 そんなオジサンを無視して遊びに精を出す、他のプレイヤーがなんか凄いシュール。


 でも、人が多いと言ってもまだまだ場所がとれるくらいのスペースはあるのは、大半は他の島に行ってるかららしい。


 宮古島なんかが人気らしいけど、そりゃオジサンにずっと見られていたら人気は出ないよ。


 ま、折角の海だし、私も頑張ってスルーして遊びますか。今回は本人の強い要望で、タツノとフィナも連れてきたし、タツノにバナナボートを引っ張ってもらうのも面白そうかな?


 いや、タツノは獣人ウォッチングに忙しそうでそんな暇はなさそう。ああっ、フィナがオジサンを倒しちゃった。


 えっと……、うん、私は砂のお城でも作って遊んでいよう。私のモンスター達はパワフル過ぎて、私はついていけそうもありません。


 そんなお城制作だけど、思いの外熱中してしまった所為か、みんなも巻き込んでしまったお陰かで壮大な物が出来てしまった。


 お陰で時間もなくなり、バーベキューはあえなく中止となりましたよ。どうせなら、トヤマさんが来たときにでもやろうかな?


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[一言] 鎌を二本持って刈り取る 稲刈り?
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