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22. 直接対決!

 只今、朝日に照らされるフジヤマの周辺をジーヌとアト、そしてタツノと共にのんびり飛行中なのです。オーバー。


 やっぱりあった方がいいかな、と飛行魔法を組んでフライトなんだけど、あっさり称号を手に入れお陰で練習も捗ってラッキーだよ。


 その称号は【フライングヒューマノイド】なんて言う微妙な名前なのだけど、効果はなかなか優秀なものなの。


 飛行魔法を組んでみて分かったのだけど、この魔法は使用中も常時MPが消費されていくんだよね。


 私が組んだものだと、スピードはやや落としても一分毎に五百。これだと二十分程は飛べるけど、戦闘のことを考えると少し厳しいかもしれない。


 しかし、手に入れた称号の効果により、一分毎のMP消費が五百から百になった上、どんな組み方をしてもそのMP消費で固定な為、使い易さが段違いなんだよね。


 最初は不慣れで、ちょっと調子に乗ると上下左右も分からなくなったものだけど、この称号のお陰で練習量も増やせて今は慣れてきたし、万々歳だよ。


「ご主人様も飛べるようになったし、これなら宇宙ステージに行くだけなら楽しめるよ!」

「宇宙に行けるところがあるの?」


 もしかして、ロケットでもあるのかな? いやでも、ここはファンタジーな世界だから、宇宙まで登る島があるとか?


 しかし実際は夢も希望もなく、天空の塔が宇宙ステージらしいです。


 扉もなにもないあの塔に入れば良いそうなんだけど、その肝心の入る条件は、敵を倒さずに塔へと着地すること。運営らしいなぁ、もう。

 

 でも、行くだけなら良いんだけど、気をつけなければならないのが龍星の存在。


 龍星には物理と魔法の同時攻撃でしか、まともにダメージを与えられないみたいなんだよね。そうなると、MPはもっと欲しいかな?


 そんな事を考えているうちにいつしか私の尻尾は玩具へと成り下がり、鬱陶しいと尻尾をぶんぶんと振り回しながらも飛行を続けていると、フジヤマの樹海の中に村があるのを発見した。


「あそこは祭り村だよ。縁日があったり、いろんなゲームが楽しめるんだ」


 へぇ、そんな村があるんだね。毎日お祭りが楽しめんなんて、なかなか良さげな所じゃない? 主に食事系の屋台が充実していると良いのだけど。


 しかし、その村へは空から行くことは出来ないみたいで、あの鬱陶しいジュカスネークがいる樹海を突破しなければならないみたい。


 いや、今なら神速通を使えばなんとかなるかな?


「神速通でなんとかなるかな?」

「すり抜けるような行為は、突破とは言わないと思うよー」


 いやまぁ、そうなんだけどさ。


 はぁ、それなら皆と相談してから行くかどうか決めようか。


 そろそろ皆もログインしているころだろうし、先生の美味しい朝食でも食べながらこの件について話そうかな。


「あら、お帰りなさい。早起きなのね」


 ログハウスに戻ると、やっぱり皆ログインしており、リビングでのんびりしているところだった。


 トヤマさんなんか、キボリをソファー替わりにしてワインを飲んでるし。この人はもう、駄目人間の仲間入りだね。

 

 キボリを取られていたのは悔しいけど、目的は朝食だから早速先生に準備を頼み、椅子に座って待ちながら小豆達に混ざってゲームをしていたヨーナとサクラにも聞こえるように、先に祭り村のことを話しておく。


 すると、三人とも目を輝かせて行こうと皆乗り気になってしまった。やっぱり縁日は人を魅了するんだね。


 それならば、問題はどうやって行くか、だ。


「先生、途中まで空を行くのはありですの?」

「はい。地上から村へ入れば大丈夫ですよ」


 いや、それなら神速通でもありにしてよ!


 そんな突っ込みは、言ったとしても聞き入れられることはないと思う。でもね、こんな突破の仕方はないんじゃないかな、とも私は思う。


 先生に確認を取ったサクラが提案したのは、ジープに乗り、地上を爆撃しながら進むと言うもの。


 素材を集めるついでに進めるから、一石二鳥ですわね、なんて言っていたけど、一つの石で二羽の鳥を落とすどころか、一つの石ですら粉砕していきそうな勢いなんだけど。


 あぁ、アイテムボックスが凄い勢いで埋まっていく。これだけの蛇皮があれば、抜け殻と同じくらいの御利益があるんじゃないかな?


 まぁ、そんなにお金に困っている訳ではないのだけどさ。


 それにしても、この為に触れた物を浮遊させる魔法を組んだサクラは、そんなにお祭りが好きだったのかな?


 私のお祭りでの思い出なんて、移動中も何するときも、サクラがずっと手を握っていたことぐらいしか憶えていないんだけど。


 迷子にならないように、とかって言っていたけどさ、私はそこまでアホではなかった筈なのです。


 まぁ、そんな話は兎も角、その浮かせたジープを引っ張るジーヌは流石のパワーだね。


 私が飛ぶよりだいぶ早いと思うし、ここはあの台詞を言う場面かな?


 てか、もし樹海を探索しているプレーヤーの方がいらしたら、苦情はサクラに言ってください。


 いや本当に、このゲームにPKのシステムがなくて良かったよ。


 そんな調子であっさりと村のすぐ側に着いたところで、ジープを石に戻しそのまま飛び降りなんなく着地。


 この辺りのジュカスネークも、爆撃で消え去っただろうから安全に村へ入れるよ。

 

 まぁ、そんな事をしていたのだから、祭り村の前に設置された木製の門を潜る時、社員らしい女の人にひきつった笑顔で迎えられたのは仕方のないことだよね。


 とりあえず、心の中でごめんなさい。


「よ、ようこそ! この村では、様々なゲームが楽しめます。五つのゲームで勝利致しますと、豪華な景品を差し上げます。勿論、ゲーム自体にも景品が御座いますし、団体での挑戦も可能ですので、奮ってご参加下さい」


 へぇ、それは良いことを聞いた。景品があるなら頑張らなくちゃね! 


 説明を終えたお姉さんに、ゲームの一覧と地図が書かれたパンフレットも貰ったし、何から始めようかな? 


 ゲームは人型の召喚獣なら一緒に参加できるみたいだし、今度は来る時は先生も連れてこようかな。


 あっ! 温泉もあるんだ。休憩にはもってこいかもしれないね。


「あら、射的の屋台があるじゃない。挑戦してみようかしら」


 そんな数あるものの中からトヤマさんが最初に目を付けたのは、村に入って直ぐの所にある射的の屋台だった。


 景品は駄菓子から能力アップのアクセサリーまで様々あり、目玉は駄菓子の列の真ん中に鎮座したオリハルコンのインゴットかな?


「おう、嬢ちゃんやってくかい? 一回五発だ。オリハルコンを落とせば、嬢ちゃんの勝ちだぜ!」


 なる程、これもゲームの一つなんだね。


 弾で撃ち落とすのなら魔法は使って良いみたいだし、それなら射的をやったことのない私でも勝ちを狙えそうかな。


 それでもやり方はいまいち分からないし、今から挑戦するトヤマさんをじっくり観察して参考にしようか。


 そして、みんなが見守る中、トヤマさんは真剣な表情で銃を構え、風を纏わせた弾をオリハルコンに向け発射させた。


「痛いっ!?」

「はははっ! ナイスだアオイ、跳弾が眉間に当たるとかすげーな!」

「ふふっ、流石アオイさんですわね」


 笑い事じゃないよ! 痛いよぅ、PKだったら絶対即死とかするんじゃないかな、これ。


 アナウンスまで出て【不運】なんていう効果のない称号が出たし、運営にまで遊ばれてるよぅ。


 ぐすん、心配してくれるのは頭を撫でてくれてるジーヌだけだよ。トヤマさんは、次は絶対に当てて下さい。私以外の人に是非!


「なら、これでどうかしら!」


 そんな私の願いは届かず、トヤマさんの撃ち放った弾は真っ直ぐに景品の方に向かい、盛大に突き刺さった。


 そう、盛大に景品が乗せられた台を破壊し、景品もろとも崩れ落ちた。


 いや、えっと、これありなの!?


「やるねぇ、嬢ちゃん。嬢ちゃんの勝ちだ! 落ちた景品持っていきな」


 ありらしい。


 私だけ痛い目にあってなんだか悔しいけど、景品の駄菓子をくれたトヤマさんは許そう。でも笑いまくっていた二人は許さな……、あっ! ホームランだ! おっちゃん、もう一本頂戴!


「次は、サバゲーやってみないか? 景品が状態異常無効アクセサリーとか、魅力的だろ」


 あの、このゲームの世界観ってファンタジーだったよね? それなのにサバゲーって、世界観が樹海で迷子になってしまったんだろうか。


 でも、その景品は魅力的だね。それがあれば樹海でジュカスネークをテイムするのも楽になるし。


 あの能力は、ゴーレムに融合させると面白そうだもん。これは欲しい。


 早速そのサバゲーの受付がある家屋へ向かい、受付のお姉さんに話を聞いてみると、それは樹海で行われるフラッグ奪い合いがメインの銃撃戦みたい。


 そして、対戦相手は運営チーム。運営も遊びたいのかな?


 運営が絡むと途端に不安になってくるけど、報酬は魅力的だからさっそく参加を伝えると、武器であるハンドガンを人数分と、スナイパーライフル、マシンガンを二丁渡された。


 スナイパーライフルはトヤマさんで、マシンガンはなんとなくヨーナが良いかな。


 その際一緒に渡されたルールが書かれた紙にも目を通してみると、弾の防御は禁止で、攻撃に関しては銃のみ。


 弾はペイント弾で、撃たれたらフィールドから排除される。


 味方全員が撃たれるか、フラッグを取られたら敗北、と。あちゃー、あの狐火は使えないか。残念。

 

 それなら仕方がない、あの手でいこう!


 受付の隣に設置されていた転移装置で専用の樹海フィールドへと送られた後、開始の合図が鳴ったところで行動開始。


 フィールドはサッカーコートと同じくらいで、作戦としては私とヨーナ、ジーヌが突撃で、サクラとトヤマさんが防衛。


 ふっふっふ。ではでは、神速通でささっと終わらせちゃいますかねっ!


 はい、撃たれました。


 そりゃ、敵陣ど真ん中に行けば当然狙い撃ちされるよね。フィールドから戻され、通信で皆に怒られた私は、一人で金魚すくいでもやってますよ。

 

 水槽の中を泳ぐ尾ひれの長い金魚は、優雅で可愛らしい。あぁ、癒されるなぁ。


 しかし、こんな可愛らしいモンスターでも、種族はアイアンキンギョと言うみたい。強そうだなぁ。


「五匹すくえば、嬢ちゃんの勝ちだ。やるか?」


 射的やサバゲーもそうだったけど、お金を使わなくていいのは良心的だよね。ここはボーナスステージみたいなとこなのかな?


 とりあえず試しにと、一回目は普通にやってみたけど、やっぱり無理だった。


 アイアンキンギョは固くて重いみたいで、直ぐにポイが破けてしまう。これは、多分魔法を組んでやらなきゃ駄目だよね。

 

 麻痺効果の付与と、ポイの強度を上げる魔法を組んで再び挑戦してみたけど、アイアンキンギョは状態異常に掛からないみたい。


 それ以前に、重くて持ち上がらないや。

 

 麻痺を外して、サクラがジープにしたように浮遊効果でも付けてみようかな? 


 よし! 作戦が当たったのか一匹ゲット。この調子なら楽に行けるね。


「おめでとよ、嬢ちゃん! 景品はそのアイアンキンギョだ。そいつは一日一回、ランダムで金属を産み出すからな、大事にしろよ!」


 おお、それは良いね! もしかしたら楽してオリハルコンがゲット出来るかもだ。


「ご主人様、サバゲー終わったよー。負けちゃったよ、悔しいよぉ」


 そんな喜び溢れる私と違い、ジーヌがしょんぼりした感じで迎えに来てくれた。どんな感じで負けたのかな? 戻って詳しく聞いてみようか。


 そして、みんなが待っていたラムネ屋の前にあるベンチに座り話を聞いてみると、その負け方は想像以上に酷い物だった。


「アオイさんは、早々にリタイアして良かったですわね。あれは恐ろしかったですわ」


 運営チームは、縦横無尽に空を飛んで攻めてきたみたい。


 木々を縫いながら迫り来る奴らは、その装備から真っ黒でテカテカして触角の長い嫌な虫みたいだったとか。


 うん、装備を見る暇もなく、早々にリタイアして良かったよ。


「私は金魚すくいクリアしたよ! 凄いでしょ」

「ええ、凄いわね。良くやったわ」


 いやトヤマさん、馬鹿にしてない? 頭撫でないで……、って子供扱いしてるでしょ!? これ凄い金魚なんだからね!


「まあ、金魚の事は喜ぶとしてだ、次に何をするかは決めておこうぜ。後、三勝だからな」

「縁日の方が簡単そうですわね。そちらを攻めませんこと?」


 むぅ、あっさりしすぎで私はとても悔しい思いをしていますよ? ふんだ! 明日になったらこのアイアンキンギョの力を見せてやる!


 いやいや、なに子供っぽいことを考えているんだろう? うん、ラムネを飲んだらちょっと冷静になれたよ。


 その後は屋台を渡り歩き、テイム石すくいにフリスビーの的当て、スマートボールの三つで勝利を得ることが出来た。


 何故か水に浮いてるテイム石すくいでは、紛れるようにしてゴッドテイム石もあったけど、あれは絶対すくえないようになってるよ。


 挑戦してみたけどすくえなかったもん。嫌な奴らだなぁ、もう。

 

 でもこれで五勝したから、村にある冒険者ギルドで景品が受け取れるみたい。


 何が貰えるかな? これでサバゲーで運営チームが使っていた装備をプレゼント! なんて言われたら、怒るどころか呆れてしまう自信があるよ。


「団体様ですね。メンバーを確認させていただきます。……はい、プレーヤー四名様とドラゴンメイドですね。五回の勝利、おめでとうございます。景品はこちらになります」


 なにが貰えるか不安もあるけど、一応、私が家主なので代表で受け取る。


 アイテムボックスに入れられたそれは、ハイパー合成君という物だった。説明を読んでみると、複数の素材を合成する事で別の素材に変える事が出来る装置みたい。


 私にはあまり価値を見いだせないものだけど、トヤマさんはこれで幅が広がると喜んでたから、ログハウスにでも置いておこうか。


 この後、私以外の三人とジーヌはサバゲーへリベンジしに行くみたいだけど、私はゴッドテイム石に挑戦したいから別行動。


 今度は絶対に取ってやるんだから!


 なんて意気込んだものの、結局は無理だった為に癒やしを求めて温泉に向かうと、疲れた顔をしたサバゲー組に遭遇した。


 お疲れ様です。これはもう、殺虫剤でも持ち込んだ方が良いんじゃないかな?


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[一言] 運営が虫扱い(笑)
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