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17. 大きいは良いこと?

 昼食後、ログインしてリビングに行くと皆が双六をやっていた。


 このゲームオリジナルのそれは、自らのアバターのミニチュアが駒となる、臨場感ある作りになっているの。


 だから当然、触手が飛び出し襲い来るなんていうユーモア溢れるお題のマスもあるのだけど、それに絡まれるトヤマさんは全然えっちくない。


 だって、何故か全身鎧を着込んでいたし。


 あ、ヨーナがトラックに跳ねられて装備が豪華になった。


「それ面白いの?」

「見てる分には面白いんじゃねーの」


 うん、確かに面白い。サクラなんて、まん丸なスライムになってうにうにしているし。


 でも私はやりたくないかなぁ、危険な水着マスが危ないしね。


「アオイちゃんも来たことだし、私は素材集めに行くわね」


 そう言って席を立つトヤマさんは、二人の暇つぶしに付き合っていただけみたい。


 朝昼晩と、それぞれの時間でしか入手出来ない物もあるみたいで、有給が終わる前にある程度集めておきたいんだそう。


「私たちはどーするよ? モンスターをテイムしまくるか?」

「それ、やるの私だよね? 私に称号つけようとしてるよね?」

「先ずは、進化を進めた方がいいですわ。ボスモンスターがトリガーになっていてもおかしくないですもの」


 はぁ、もうこの際、強くなれる事を喜ぼうかな。


 いや、どうせ強くなるならこのまま行きたい。でも、この二人は止まりそうもないしなぁ。

 

 現実逃避気味にゴールデンゴーレム三人娘の方を見てみると、どうやらレースゲームで勝負してるみたい。


 意外にもフィナが一番巧く、次いでもち。そして小豆は一番ビリだけど、勝負事には拘らないタイプなのか、その表情は楽しそうに緩んでいる。


 そんな和やかな空間を邪魔しても悪いし、助言役に先生だけを連れて外へ出ようか。


「先ずはどれからだ? ミスリルゴーレムからいっとくか?」

「融合進化は条件に入りませんよ」

「あら、残念ですわ」


 そりゃ、何度でも出来る融合進化がありなら簡単すぎるよね。


 あと、サクラ的にはコカブロイラートリスのビッグと、角ウサギのイースは駄目だそう。イースターまではそのままでいて欲しいみたい。


「ワタシープを進化させてはどうでしょう? 大きくなるものを食べさせると、進化いたしますよ」

「大きくなるもの? キノコか?」


 流石にそれはないと思いながらも、試して悪いことはないとキノコ炒めを作って食べさせてみる。


 やっぱり進化はしなかったけど。


「駄目か、此処の運営ならやりそうなんだが」

「此処の運営なら、こんな行動を見て笑ってると思うよ?」


 先生なんて親指を立ててにっこりと微笑んでいるし、モンスター達も多分グルなんだろうね。


 はぁ、なんだかお化け屋敷にでも入ってるような気分だよ。


「チバ領に巨大なスイカがあるそうですわ。行ってみませんこと?」


 確かに、実を付けるものなら大きくなると言えるよね。でも、巨大なスイカって嫌な予感しかしないんだけど。大丈夫?


 そんな疑問に誰も答えないまま向かった、カーズサの街から馬車で三十分ほどの場所。それが巨大なスイカのある所だそう。


 ゲームをしている幼女達の邪魔をするのは悪いので、その代わりにグリンブルスティのベイを連れてきたんだけど、これが吃驚!


 この子は空を飛べるし、水中も行けるんだよ!


 連れて行こうとした時に、一緒に行くのが嬉しいのか敷地内を爆走しだしたから分かったの。

 

 ただ、そのことを知っていたくせに、黙っていた奴が一人いるの。許せないよね、サクラめ!


「おっ! 見えてきたなって、デカすぎだろ!?」


 そんな未だに恨みを込めた視線をサクラに送っていると、窓の外を見ていたヨーナが急に大声で突っ込みだした。


 何かと思い、つられて私も馬車の窓から外を見てみると、そこに映るのは三百メートル位の巨大なスイカ。


 うん、称号を手にした今の私なら分かる。あれはガスイカと言うモンスター、って、あれモンスターじゃん! 食べさせられないじゃん!


 あ、いや、ドロップがスイカってことなのかな?


「攻撃すると爆発するそうですわ。そうなってしまうとドロップもなしだそうで」

「え、じゃあ、どうやって倒すの? テイムはヤダよ……、って、そのために来たの!?」

「ああ、そう言うことか。良いじゃねーか、夏なんだし」


 人事だと思って陽気なこと言わないでよ! くそう、嵌められた。進化を目的としながらも、しっかり数を稼いでくるなんて!


「アオイさん。言っておきますけど、このまま強くなっていきますと尻尾、無くなりますわよ。妖狐というのはそう言うものですもの」

「ええ!? それは嫌だよ! 折角、狐獣人になったのに!」

「ならテイムしなさいな。もしかしたら、九尾になれるかもしれないですわ」


 なら、頑張るよ! サクラ、教えてくれてありがとう。スイカだろうが何だろうが、どんな奴でもテイムしてやるんだから!


「お前、チョロすぎだろ」


 いや、だって尻尾はアイデンティティだもん。


 そんな欲望のままにテイム完了です。ボスだったらテイム出来ないんじゃないかとも思ったけど、デカい割に普通のモンスターだったみたい。


 名前はスイカの品種から、黒部にしよう。外に出した黒部の姿はスイカで出来た雪だるまの様で、ハロウィンのカボチャみたい顔になっている。

 

 そんな黒部はどこから取り出したのか、スイカを此方に差し出してきた。


 これは有り難く貰っておくけど、家の敷地内をスイカで埋め尽くしたりはしないでね?


「折角だからスイカ割り行こーぜ」

「あら、良いですわね。ここからなら九十九里浜も近いですもの」

「自分のスイカでも割ればいいのにゃぎゃ!?」


 良いフックを貰いました。


 ゲーム世界なのを良いことに過激な突っ込みしてくれちゃってさ、私じゃなかったら変な趣味に目覚める人が出ても仕方がないと思うよ?


 そんな性癖すら解放されそうな程、清々しさのある砂浜へとやってきた私達。


 其処で海水浴やサーフィンをしている人がちらほらいる中、私達はしっかり注目の的になっていた。


 黒部が射出したスイカを、ヨーナが大剣で真っ二つにするという、よく分からない事をしているのが原因なんだけどね。


 本人はこれでスイカ割りをしているつもりらしいし、なんというか、夏の日差しに当てられたらお馬鹿みたい。

 

 しかもスイカは爆発するため、黒いビキニを着た女がスイカの汁を浴びながらスイカを切ってる光景になっている。


 うん、なんか怖くて馬鹿にできないかも。


「アオイさんもやったらどうですの?」

「折角白いビキニ着たんだし、やらない」


 水着は仕様のお陰で汚れないけど、汁が体に掛かるのは避けられないしね。


 相変わらずスク水のサクラと、黒部のスイカを食べるだけで十分なのです。うん、このスイカ普通に美味しいし。


 そして一通りヨーナの気が済んだところでログハウスへ戻り、ジープと黒部を対面させてみる。端から見たら未知なる遭遇だけど、本人たちは私の意図が解っていたみたい。


 全て察していると言わんばかりに、黒部が取り出したのは食べやすく半月型に切り取られた赤色が綺麗なスイカ。それを同じく察しているかのように、バクバクと食べ出すジープ。


 一見微笑ましい光景だったのだけど、ジープを包み込んだ光が晴れたらあら不思議。……二階建ての家と同じくらいの大きさになった。


 いや、いくら大きくなることを夢見てこの名前を付けたと言っても、これは大きくなりすぎではないですか?


 それに、ジープのモコモコした毛からは、子犬大のワタシープが十匹ほど出てきたしさ。


 そんな突っ込みどころ満載になったジープを称号の効果で見てみると、ワタシープから、マザーシープと言うものになっていた。


 なる程、お母さんなら仕方がない、母は偉大だから大きくなっても仕方がないもん。私のお母さんも段々横に大きくなってきているしさ。


「マザーシープから出てきた小さなワタシープは爆発します。ジープが空へ舞い上がることで、地上を爆撃する事も可能ですよ」


 怖いよ、それだと無敵の浮遊要塞みたいだよ。魔法が効くだけましなんだろうけど。


「触ったら爆発しちゃう?」

「敵以外に爆発することはないので、安心してください」


 ほっ、それは安心だね。


 ならばと、一匹抱いてみるとその抱き心地は最高だ。モコモコの羊が子犬大って良いものだね。嫌なことなんて、忘れてしまいそうだよ。


「気合い入ってた割に現実逃避はするんだな」

「単に、気に入っていた巨乳じゃなくなったのが嫌なのですわ。でも、思ったより早かったですわね」

「お伊勢参りの事忘れてんのか?」


 良いじゃん現実逃避したってさ。増えるのは尻尾だけで良かったんだよ。


 そう、自分に起きた変化は九本になった尻尾と更に大きくなった胸。天然物のヨーナより大きくなったかも。ってそうだ! お伊勢参りがあったんだ!


「なら、別に尻尾が無くなっても元の本数に変えれたじゃん!」

「では、モンスター達は進化させたくないのですわね」


 いや、それとこれとは話は別だし。はぁ、これは起こるべくして起こったことなのか! 


 仕方がない、気持ちを切り替えて称号の確認をしとこう。 

 

 得た称号は【強欲な九尾の狐】で、金も戦力も何でも欲しい、そんなあなたに送りますって書かれているけど、胸は望んでないよ。


 でも、効果は破格のMP+10000なのはなんか凄すぎる。

 

 この力で何でも手に入れろってことなのかもしれないけど、運営のことだからそう一筋縄では行かないと思う。そんなイメージが、私にはあります。


「普通の強欲じゃないのか」

「金銭とモンスター関連で、二通りの取得方法があるんです。ご主人様は両方満たす可能性があったので、こうなったのでしょう」

「こうなったって、称号は誰かが決めてますの?」

「部署がありますので」


 部署って言われると急に現実感が出てくるから止めて欲しいけど、称号の取得や効果はプレイヤーのプレイスタイルによってある程度調整されているらしい。


 それは気持ちよくプレイして欲しいからだそうだけど、私は運営にどう思われているんだろう? 確かにMPは多用してるけどね。

 

 それより先生は、いつまで私の尻尾に埋もれているんだろう。変化してからずっとだし、そろそろくすぐったくて堪らないのだけど。


「私は、好きで毒を使った訳じゃないんだがな」

「ヨーナさんもゴールデンゴーレムを倒したなら、強欲の可能性もありますのよ」

「いいさ、どうせ外見は変えれるんだ。それならメリットだけだろ。でさ、アオイも今の姿は不満みたいだし、行くしかないよな!」


 そんなこんなで、最北端からのお伊勢参りが決定です。


 こうなったら、トヤマさんにも連絡しておこうかな。強力な称号も貰えるって言ってたし、道連れは一人でも多い方が良いだろうしね。


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― 新着の感想 ―
[一言] 妖狐が進化したら九尾になるんじゃないんだ?
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