125. どうしてこうなった!
どうして、こうなってしまったんだろう? 作戦も上手く行き、皆も店のレジを守りきる事が出来た。そして、大チャンスの時間が終わった今、売上ランキングの一位は揺るがないと思う。
「なぁー、早く勝負しよぜー」
再び客で賑わうようになった屋上、そこでご当地焼きそばスタンプラリーを再開した私達に付きまとう一人の少年。違った、少女だ。はぁ、まさか文化祭イベントが終わる前から、付きまとわれるとは思わなかった。本当に、どうしてこうなった。
あの後、無事に逃げ切った私達だけど、今思えば業務提携する必要はなかったよね。だってあの森なら、鬼ごっこしてればトヤマさんがサポートしてくれただろうし。
なんで律儀に提携なんて誘ってしまったのか。きっと調子に乗ってたんだよね、だって考えた作戦が上手く行ったんだもん。
「あ、早食い勝負もしようぜ! 先ずはお前だ、ちびっ子!」
「……!」
負けないぞ! って感じに、サイファードに向かって指を指すフィナが可愛い。
業務提携の用紙に名前を書いて貰ったから覚えたけど、名前からして男の子だよね。ローブ姿だったから胸の膨らみなんかは確認できなかったけど、恥ずかしそうに顔を赤らめる男の子は気持ち悪いったらないよ。その反応は、見た目可愛い女の子の特権だと思う。
問題は大チャンスの時間が終わってから。てっきり自分の店を再開するかと思ったら、ずっと私に着いてくるんだもん。
お陰でムラマサから神様を見せて貰うこともせずに、フィナとアマテラスを連れて屋上へ逃げ込んだけど、そこまで付いて来るから困りもの。イザナミや師匠達と一緒に、ログハウスへ戻れば良かったかもね。
唐突に始まった、幼女と少年の焼きそば早食い対決。幼いフィナが必死に焼きそばを啜る姿は、なかなか見応えがあるらしく、周りのプレイヤー達は固唾を飲んでその勝負を見守っている。ロリコンばっかか!
でも触発されたのか、焼きそばを買う人も増えたみたいだから店に貢献出来てるかも。売上を奪っちゃった身としては、繁盛してもらえれば良いなって思うしね。
「お前らって仲良いんだな」
意外なところで、フィナの特技が判明した焼きそば早食い対決。フィナの勝利で早々に決着が着いたため、負けて若干落ち込んでいたサイファードだけど、いきなり私に向かってそう言いだした。
まぁ、大抵一緒に居るんだし、仲が良いのは当然だろうけどね。でも、何でそんな事を言い出すんだろう?
「友達居ないの?」
「うるせー! リアルじゃいっぱい居るし! そうじゃなくてさ。このイベントで勝つなら、お前かあの情けない男を倒せば済む話だっただろ?」
クイネさんの評価は置いておくとして、その考えはなかったよ。確かにそうすれば手っ取り早いし、勝つためって事なら私は気にしないしね。まさか、ヨーナのあの適当な作戦って、その考えがあっての事だったのかな?
『ヨーナ、今良い?』
『どうした? 寂しくなったか?』
『違うよ! ただ、もしかして私とクイネさん倒すつもりだったか、って聞きたかっただけ』
『ああ、それな。確かにお前とクイネなら、気にせず倒させてくれると思ったけどさ。味方殺しとか、碌な称号出ないだろって事で諦めた。お前の作戦はラッキーだったよ』
そっか、称号の事もあるのか。味方を倒しちゃうとどんな称号が出るのかな? バーサーカー的なやつかな? 攻撃力は上がるけど、デメリットがあるようなの。
「で、何時勝負すんの?」
「だから、気が早すぎるって。そこはあれじゃない? パワーアップフラグじゃない? 先ずは強くならないと」
見たところ、神様をテイムしてる訳じゃなさそうだし。こう言っとけば時間を稼げるかな? 後は適当に、私はもっと強いとかって言っとけば良いし。
「おお! それありだな! よし、手伝ってくれ」
「待って! 何でそうなるの!?」
「え? だって、敵に塩を送るパターンだろ?」
なんなの、夕日を見て赤く燃えてるとかって言えばいいの? それはちょっと違うのか。
むー、どうしたものか。こうなったら、私の都合に付き合って貰おうかな? チートプレイヤーなら戦力的に問題ないし。
「アンドロイドの種族特性って知ってる?」
「う? 知らん。それにアンドロイドって何だ?」
うん、この子は私と似たタイプかなって思ったけど、私よりも酷そう。私も最近知った事なんだけど、種族には種族特性って言うのがあって、それが公式ホームページに書かれているんだよね。
私もホームページは見たことはあるけど、狐獣人が選べるって分かって満足してそれっきりだったんだ。だから種族が増えたなら、公式ホームページも更新されてるのかなって思って、改めて見てたらその項目に気付いたって訳。
因みに獣人の種族特性は、全身に武器が装備できる。私が足に攻撃用の甲懸を装備出来たのは、その特性あっての事だったんだよね。
そして人間は、ヨーナが持ってる【力天使の加護】みたいな、加護系の称号が入手しやすくなる。エルフは魔法にボーナスがつくって感じかな。
それで、肝心のアンドロイドの種族特性は、機械化したゴーレムと同じ様にチップで強化出来ると言う物。
敵を倒してレアドロップを狙うって言う手間があるし、魔法が使えなくなるって言う、ゲーム的に大丈夫? って思うデメリットがあるけど、使うチップによってはかなり強力になると思う。それに、太極図持ちには関係ないデメリットだろうしね。
おまけに、ゴーレムを機械化した時と同じ様に、レベルによって得られるボーナスポイントで、自分をカスタマイズ出来る機能もある。好きな人には嬉しい仕様じゃないかな?
そんな事をサイファードへつらつら説明していると、本人も直ぐに乗り気になって来たのか、顔に興奮と喜びの色が見て取れる。この子ちょっとチョロくない?
「直ぐ行こう! 今すぐ行こう!」
「今日は、打ち上げとかあるからやだよ。明日以降にしよ」
「じゃあ、明日の夜にお前の家行くからな!」
まぁ、それでいっか。って、ログハウスの事知ってるの?
「観光客も来てるくらいだもの、有名よ」
アマテラスの耳打ちに、軽い衝撃を受けてしまった。観光客って、家は動物園にでもなったのかな?




