124. 最後の詰め!
校舎同盟にチートプレイヤーを倒させ、その上で膨れ上がった売上を奪うという私の作戦。それを事後報告で悪いと思いながらも、怪訝な視線を放つサクラとクイネさんに説明すると、一転して笑顔を浮かべ始めた。
「てことは、後は守りきるだけでいいって事か。よし、しっかり守ってくれ」
「あのチートプレイヤーも、守らないといけませんわね」
クイネさんには頑張って、と言いたい。けどサクラに言われて気付いたけど、あの男の子が倒されちゃったら、それだけで売上を奪われちゃうことになるのか。うーん、もう少し制限時間ギリギリでやれば良かったよ。
「ねぇ、ムラマサ。校舎同盟の中に強いプレイヤーでも居たの?」
あの男の子を守るって言うなら、聞いておきたいんだよね。少なくとも校舎同盟は、私が売上を奪ったって言うのは分かってるだろうし、残り時間は十分程だから守りも考えずに攻めてくると思う。
師匠にも聞こうと思ったけど、既に遊び足りないらしく飛び出して行っちゃったし、せめてムラマサは何か知っていたら良いんだけど。
「強いって言うか、厄介な奴なら居たよ」
「強くないって事ですの?」
そこは気になる。厄介って言葉を聞くと強そうに聞こえるからね。
ムラマサの答えは肯定。強くないけど厄介って事みたい。その理由は防御無視攻撃。防御しても回避したとしても、相手の間合いで攻撃モーションさえ取らせてしまえば、固定ダメージを受けてしまうらしい。
「厄介どころじゃなくない?」
「ダメージ自体は100程度なんだよね。あたしは距離を取るようにしたし、厄介程度にしか思わなかったけど」
「囲まれればって訳か、蟻みたいな奴らだな」
蟻と言うか蜜蜂と言うか、でもクイネさんが言うことは的を得てるかもね。十人と同時に戦えば、それだけで1000のダメージ。校舎同盟の中に、使える人が何人居るかは分からないけど、脅威って事には変わりないよね。
「其奴等が攻めてくるとなると、脅威ですわね」
「キングでも防げないかな?」
『防げるわよ。幻影や、幻惑の攻撃じゃなければね』
答えは私の中のイザナミから返ってきた。幻影ってさっきの草原にしていたやつだよね? 幻惑はマオがよく使っているから特に気にしてなかったけど、やっぱり対策は必要かも。
「キングなら攻撃は防げるけど、幻影や幻惑は防げないって」
「そこはセバスチャンに期待ですわね。アオイさんはチートプレイヤーの事を頼みますわ」
お兄ちゃんも、イザナギのお陰で天沼矛が使えるからね。それで、私はチートプレイヤーの相手か。戦う訳じゃないけど、戦闘になったら困るしね。
「そう言えば、他にチートプレイヤーって居るの? 校舎には居なかったと思うけど」
「一人知ってるけど、其奴はこのイベントに参加してなかったと思うよ」
ムラマサは知ってるみたいで、それを聞いたサクラは少し驚いている様子。掲示板では話題になってなかったのかな? それなら今、会場に他のチートプレイヤーは居ないって考えても良いのかな。それなら好都合だね。あの男の子をなんとかすれば良いだけだし。
「これを渡しておきますわ。あの人は、個人ギルドで鯛焼き屋をやってるそうですし」
そう言ってサクラに手渡されたのは、業務提携の用紙。何で持ってるのって聞けば、メニドが念の為と用意しておいた物みたい。なる程、これで仲間に引き入れろって事だね。こんな事もあろうかと、が猛威を振るってるよ。
「それじゃあ、私はあの子を探しに行くね。チートプレイヤーのクイネさんはどうする?」
「俺は自分の名を守るぜ!」
それって店の事でしょ? 決め顔してるけど格好つかないよ、それじゃあ。
標的を分散させる為に、空を飛び回りながら探そうと外に出てみれば、遠くの方に森を発見した。グラウンドに森って、流石精霊学園。って違うよ最初からそんなのなかったはずだよ。
「何で森があるの?」
「トヤマの仕業だ」
キングを壁に、フィナとプレイヤーを倒していたレンチが教えてくれたけど、あれはトヤマさんが神様を憑依させて生み出したものみたい。ビルから救援を受けて助っ人に行ったみたいだけど、自分のフィールドにしちゃうとか、スケールが凄い。
「見つけたぞコラッ! よくもハメやがったなコラッ!」
森を見ていたら、捜索対象の方から来てくれた。ラッキーだけど、場所を変えようかな。折角、標的を分散させようと思ってたのに、これじゃ台無しだもん。
「ふははっ! 相手をして貰いたかったら追いかけてみよ!」
「言ったなこの野郎!」
そう挑発して、空を飛んで向かったのは森の中。この中なら、きっとトヤマさんが守ってくれるからね。多分一番話しがしやすいと思う。
雷光を避けながらもトヤマさんに通信を繋げ、あの男の子を攻撃しないように頼み、ついでに拘束できたらしてほしいと告げて、森に入ったところで急ブレーキ。
後ろを見てみると、男の子は顔を出した状態で、すっぽりと木の幹に覆われていた。
「お話しよ?」
「脅迫じゃね?」
失敬な。でも攻撃出来る筈なのに攻撃してこないって事は、状況は分かっているのかな。
「くそっ、なんなんだよ、俺だって格好良く、ズバッと勝ちたいのに、くそっ……、うわーん!」
「止めて、泣かないで! 私が悪者になっちゃうから! 男の子でしょう!」
「こう見えても女だよバーカ!」
すっごい衝撃なんだけど!?
見た感じもう戦う気はなさそうだし、トヤマさんに頼んで拘束を解いて貰う。先ずは話を聞いて落ち着かせないと、こうも泣かれていると提携の話どころじゃないしね。
「なんか、ごめんね」
「いいよ、別に。はぁ。俺さ、覇王に憧れてたんだ。我が道を行く傍若無人な感じにさ。女を侍らして、ニヒルに笑って敵を打ち砕く格好いい男にさ。だからこうしてアバターを男みたいに弄ってさ。勝ちに拘ってたんだよ。俺の名を上げてやるぜ! ってさ」
「もしかして中学二年生?」
「何で分かんだよ! ストーカーかこの野郎!」
唐突な自分語りには驚いたけど、やっぱり二年生は多感なのかな。って其処までアバター変えれたんだね。私は殆ど弄ってないから気付かなかったよ。
「男みたいにって事は、アバターは女なんだよね? そこは男にはしないの?」
「あんな汚いもんぶら下げたくない」
「男を何だと思ってるの?」
あれこそ男のシンボルだと思うけど。……、駄目だ顔が赤くなってきた気がする。こんな事考えちゃ駄目だよね。くそっ、風呂場でお兄ちゃんが振り回してるのを見ちゃった事、思い出しちゃったよ。
「良かったら提携しない? 今なら勝てるよ、ランキング一位だよ?」
「お前を倒せば済むことだろ」
「この状況で?」
「やっぱり脅迫じゃん!? うわーん!」
私も泣きたくなってきた。
「私に任せておきなさい」
そんな私にはどうしようもない状況に気がついたのか、トヤマさんが何処からかやってきてくれた。初めてトヤマさんが格好いいって思ったよ。
「落ち着きなさい。ほら、ここは受けておいて、借りは返すぞって言う場面でしょう? そうすれば、改めて戦って勝った時、すっごく格好いいわよ」
「ぐすん、何それすっげークール」
なんか余計な事も言っているけど、見事にあやしたのは流石、先生かな? でもこれ、後で面倒な事になるよね? 絶対付きまとわれるよね?




