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120. 先ずは準備!

 文化祭イベント当日。八時に精霊学園のグランドにやってきたけど、私達パルフェサンデーの出店スペース以外は、他のギルドの人達が忙しそうに準備を進めている……、なんて事はなかった。


 クラフトモードを使えば、そんな準備なんて直ぐに終わっちゃうからね。周りの飲食店系なんかは、アイテムボックスのお陰で作り置きが出来るからか、既にのんびりモード。


 こんなんだから、私達も前日を商品の準備に費やして、店舗の設置は朝からやることにしたんだよね。イベント開始は十時からだから時間の余裕は十分にある。事前にどんな店があるか見て回るのも良いかも。


 忙しそうなのは射的なんかのゲーム系の屋台の人達かな。私達のスペースの両隣は、どちらも射的屋さんだから良く分かるけど、主にレイアウトに拘っているみたい。射的って、的の配置が大事らしいからね。


「百平方メートル、三十坪程ね。コンビニと同じくらいかしら」


 一緒に来たトヤマさんが、私達の出店スペースを見てそう教えてくれた。それなら外観はコンビニ風で良いかな。店名は既に決めてあるから、看板だけは立派にしよう。


「スイーツクイネか、これで彼奴も、浮かばれるな」


 早速出来か上がったコンビニ風に建てられたら店舗。その看板を見てヨーナがしみじみ呟くけど、浮かばれるって言うより、浮かれると思う。


 この店名はクイネさんたっての希望だからね。これを期に、自分の店の宣伝をしたいみたい。


 と言うのも昨日、皆で集まって商品を創っている時の事。私一人が創り、皆がひたすら味見している状況に嫌気がさしてきて、店名をどうするかって話を振ったのが始まり。


 それに反応したクイネさんが、自身の店であるスシクイネが隠れ家として人気が出ていることが不満だと言い出した。

 それで、ネタが劣化しないのを良いことに、周りの土地を買取、店を大型化して回転寿司店に改装してしまった事を打ち明けたんだよね。


 何も知らなかったらしいトヤマさんは、少し呆れ顔だったのが印象深い。でも、そこは二人の関係だから突っ込んだりしないよ?


 そんな訳で、宣伝がしたいというクイネさんの要望に応えて、彼の名前を入れた店名にしたの。


 お陰でオーナーみたいなイメージが着きそうだけど、そんなクイネさんは一人でビラ作りに励んでる最中。来店した人全てに貰ってもらえるように、一皿無料券を付けるみたいだし、私もこっそり貰っとこうかな?


 さて、そんな外観も満足いくものになったし、後は内装、って言うかテーブルや椅子の配置だね。


 お隣さんに自慢のサンデーをお裾分けして中へ入ると、トヤマさんが早速張り切りだした。ウィンドウを開いてテーブルのデザインから始めてるみたいだけど、それ開店前に終わるのかな?


 そんな彼女をよそに私達は専用のレジとそれを置く為の会計用カウンターを設置。そして、機能が解禁された店舗用アイテムボックスへ、商品のスイーツを詰め込んでいく。


 この専用レジは、運営のメールに添付してあった物なの。出店するギルドのマスターに送られる物で、このレジに入れられた売上でランキングが決まるから大事な物だよね。これはフラグの匂い。


 となると、一発逆転の大チャンスはこれの奪い合いって事なのかな?


「終わりっと、これでなくなったら補充頼むぜ」

「うん。で、今からどうする? スラミとムラマサは遅れるみたいだし」

「校舎の方でも見に行きましょうか。お化け屋敷があるか楽しみですわ」


 暗いところが苦手なくせにって思うけど、サクラはそれ以上にヨーナの驚く所が見たいんだと思う。だから、抱きつく気だぜって耳打ちするヨーナの言葉は、絶対に間違ってる。


 そんな自分の中で、サクラと行動しようか悩んでいる時、自動ドアが開く音と共に、元気な声が店内に響き渡った。


「「どもー! おっはよー!」」


 見事にシンクロした挨拶をしたのは、ウミとミウだった。ジョンのギルドのメンバーだけど、会うのはイザナギと会った時以来かな。


「おはよー、何か用?」

「用がなくても会いたいけどね」

「今日はちゃんと用があるんだよねー」


 そう言ってウミとミウは私に近寄ると、一枚の紙を手渡してきた。そこには業務提携願いと書かれているけど、何のことか良く分からない。


「業務提携って何ですの?」


 隣に立ち、私の手元を覗き込むサクラがウミとミウに疑問を告げると、運営メールにも書かれていない、このイベントの隠れた要素を教えてくれた。


 業務提携はいわば同盟の様なもの。簡単に言えば、違うギルド同士が協力して一位を目指そうって事だね。

 この用紙は、受け付けの人に他のギルドと協力出来ないか、って質問すれば貰える物らしい。って事は、場所取りの段階から、水面下で各ギルドの協力体制が組まれていたって訳だね。


「話は分かったけどさ、何で今になってその話を私達に持ち掛けるんだ?」


 そんなヨーナの疑問も当然だね。時間はあったんだし、ジョンのギルドとは知らない関係でもない。事前に話があっても良いと思うんだよね。


「それはね」

「私達のギルド、最後まで何をやるか決まらなかったんだよ」


 何か問題でもあったかな、と思うけど、そんな心配はするだけ損だった。


 ジョンが推すヤマト写真展と、お兄ちゃんが推すコスプレ衣装貸出屋。その対立は最後まで決着が着かず、それに怒ったメニドがどちらの案も採用しないことにして、私への協力を提案したそう。


「どうせ、大量の在庫があるんでしょ?」

「私達にも恵んでー」


 恵なんて、そんな事出来るのって思ったけど、提携すると専用のアイテムボックスが共有されるみたい。いっその事、写真展をしながら衣装の貸し出しもして、スイーツを売るとか全部やればいいのに。

 

 この件はトヤマさんも呼んで、四人でどうするか相談するとして、私としては問題ないかな。勝てる要素が増えるのは歓迎だし。


 それは皆も考えてた事だったらしく、反対意見もなく手渡された用紙にサインして業務提携完了。これでアイテムボックスが共有されたみたいだし、いちいち譲渡する手間がなくて良かったよ。


 提携祝いも兼ねて、設置されたテーブルでケーキを食べながら、お互いフレンド登録をしていると、新たな来客がやって来た。


「アオイ! お願い、業務提携して!」


 自動ドアを潜って入店したのはモフラブとビルだった。どうやらこの二人もジョンとお兄ちゃんの様に対立したらしく、ウミ達と同じ様に私に頼みに来たみたい。


 牛肉料理専門店と動物カフェの対立だと言うけど、それって両立出来るじゃんとは、きっと言わない方が良いよね。どちらかの案が通るくらいなら、全く別のものが良いって事らしいし。お兄ちゃん達もそんな感じだったのかな?


 まぁ、断る理由もないし、皆も大丈夫そうだし提携しよう。


 一気に三店舗に拡大したスイーツクイネ。これなら売上自体も期待できるんじゃないかな。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] そうして、話題になりそうなコスプレと、腹減り対策になる肉料理が、減り、あちこちに同じスイーツが売られる混沌が生まれた……………ww
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