118. 張り切るレンチ
ハロウィンが終わり、迎えるハロウィン。現実での話しなんだけどね。実家のあおいせ食堂でも、パティシエのお母さんがカボチャを使ったスイーツを作っていたし、朝から持ち帰り用に買っていくお客さんも多かった。
学校で仮装している人が居たのには、ちょっと吃驚したけどね。
「それで、エードなお祭りはどうだったんですか?」
「ロリコンと、ショタコンの熱気が凄かった」
ログインした時は夜だったけど、時間が出来たのかログインしていたユイナと、僅かに残ったハロウィン用のお菓子でお茶会タイム。
ユイナは昨日のエードで行われたお祭りについて聞きたいみたいだけど、私達は文化祭イベントの場所取りが終わった後、空飛ぶ島のキャンプ場でバーベキューをしたんだよね。
だから行った時の事しか分からないけど、掲示板をみていたれサクラによると、無事テイム出来たロリコン達もいるみたい。こんなプレイヤーは嫌だの本が増える予感。
「暑苦しそうですね。仮装コンテストの方は見たんですか?」
「見なかったけど、メニドが優勝したらしいよ。ジョンのギルドの人なんだけどね」
中継を見ていたマオ達によると、見事なクレオパトラだったみたい。本当に男なのかって思う程だったそうだけど、女性アバターを使ってるって事はないのかな? 称号に性別を変えるものがある、って話だし。
「でも、アオイちゃんが来てくれて良かったです。だって誰も居ないんだもん」
ユイナが何時からゲーム内に居るかは分からないけど、確かに私達を除けばログハウスには誰も居ないからね。モンスターだと、ユイナのオロチと田子作くらいかな?
普段、ユイナがログインした時はスラミが居るみたいで、大抵彼女と行動しているそう。私がログインしてリビングへ下りた時も、少し寂しそうな顔をしていたし、こう誰も居なかったって言うのは初めてだったのかも。
「昨日あおいせ食堂国にね、映画館を創ったの。多分、皆そこに行ってると思うよ」
バーベキューをやっている時に、マルンから連絡があったんだよね。映画館で映画が見たい、あと美味しいポップコーンもって。百人くらい収容できる物でそれ程大きい建物ではないけど、変わりにスクリーンは大きくしたから迫力は満点だと思う。
でも、小豆まで行くのも珍しい気がする。よっぽど映画館でみたいものがあったのかな?
「サクラちゃんとヨーナちゃんは、今日は来ないんですか?」
「もう少ししたらくると思うよ。漫画を読んでるだけだから」
今日はこれから行きたいところがあるからね、私とサクラ達の目的地は別だけど。
「サクラ達が来たら第五大陸へ行くけど、ユイナはどうする? 私はダンジョンで、サクラ達はアンドロイドの街が目的なんだけど」
ユイナを誘いながらも、ちゃんと私達の目的も一緒に告げておく。別行動になったのは、アンドロイドの街で貰えた【機械の心】と言う称号の効果が、結構魅力的だったからだなんだよね。
その効果は機械化したゴーレムと同じ様に、第五大陸のモンスターからドロップするチップで強化出来ると言うもの。ただし、称号の効果だと一回だけみたいだけどね。
チップはステータスを強化する物から、モンスターが持つ特性を使えるようになる物まで様々。バーベキューの最中に改めて見てみたら、そんな効果があるって気付いて、社長の所でお勧めのチップを聞いたの。それで、今日は私がチップの回収に、サクラ達は試練を受けに行くって訳。トヤマさんも欲しがっていたから、その分も確保しないとね。
「それなら、私も試練を受けたいです」
「じゃ、早速行こうぜ!」
ユイナの返答を聞いた時、丁度よくやってきたヨーナが張り切った様子で声を掛けてきた。サクラはユイナに今晩は、と挨拶をしている辺りなんか温度差が凄い気がする。
「サクラ、ちょっとテンション低い?」
「うちの親が変なコスプレしてたんですわ。あんなの見たら……、はぁ」
よっぽどのを見たんだね。触れないでおこう。どうせあの人達だし、カボチャパンツとか言ってカボチャを履いてたりしたのかな? 流石にないか。
試練で発散して貰おうと、直ぐにユイナ達をアンドロイドの街へ転移。その後は、今日の同行者を迎えにあおいせ食堂国の映画館へ行かないとね。だって、私一人じやっぱり寂しい。
映画館の前に転移すると、既に入り口前で待っていてくれた。
「お待たせ、それじゃあ行こうか」
「ああ、そうだな」
「この子、早く戦いたくてうずうずしているのよ」
待っていたのは、レンチとイザナミ、フィナ。レンチはイザナミに図星を指されて顔を赤くしていて、着ている青みがかった白いホルターネックのワンピースと相まって少し可愛い。でも膝丈の裾にロングブーツだと、格好良さが勝っているかな?
それよりもフィナが早く行こうと手を引っ張るから、早速ダンジョンがある場所まで転移しようか。普通だったらかなり面倒なダンジョンらしいけど、レンチが居れば楽勝だってイザナミが言うし、気楽に行こうか。
「此処を飛び降りれば良いんだよね?」
「ちょっと待て、そりを作らないとはぐれるぞ」
そうか、皆揃って動けるって訳じゃないもんね。
目的のダンジョンは、木の虚から入れる地下空洞で、蟻の巣のように入り組んだ構造をしている。厄介なのは、空洞が傾斜を付けるように下に向かって延びている事。しかもボスへ辿り着く空洞は一本だけで、ルートを外れると行き止まりにぶつかって死に戻りになってしまうみたい。
だからそりで纏まって動くのが良いんだよね。
そんな厄介なダンジョンだけど、レンチが事前にルートを割り出しておいてくれたそう。私がぐっすり眠っている夜中、小型の偵察機を飛ばして調べたんだって。やっぱりモンスターは有能だよね。
「それじゃあ行こうか」
フィナを先頭にレンチ、私、イザナミと座り、そり毎浮遊させて木の虚へ突撃。紐を巧みに動かし、舵を取るレンチの肩越しに見えるフィナは、そりのスピードに嬉しそう。
「どのぐらいで着くの?」
「五分くらいだ。ボス部屋に着いたら、直ぐに戦闘が始まる。準備しておいてくれ」
案外早いなって思うけど、戦闘については心配してない。だってイザナミが耳元で、レンチに任せておけば大丈夫って囁くから。ちょっとくすぐったくて耳をピクピク動かしちゃったけど、そんな耳を摘まむのはやめて欲しい。
そんなこんなで、あっという間に着いたボス部屋。レンチが巧みな操作でそりを止め、降りて辺りを見渡してみる。そこはある程度戦いやすい空間になっている所で、奥には銀色に光る機械の蜂が羽音を発てて滞空していた。
ボスの名前はハニーホーミング。三メートル程の大きさな割に、ハニーってちょっと可愛い。私がそんな事を思っている間に、レンチが足を変形させてジェットを点火。
そのまま加速し、膝から刃を上にして突き出した刀を、ジェットの勢いそのままにサマーソルトの様に宙返りして、ハニーホーミングを斬りつけた。
レンチはそのままガトリングを構え、ハニーホーミングへと連射。そんな苛烈な攻撃には耐えきれなかったのか、瞬く間に光となって消えていった。
「これなら早く終わりそう」
アイテムボックスを見れば、ちゃんとチップが入っている。いくらレアドロップといえども、フィナに掛かればこんなのは量産品なのです。
チップの効果は、自分の攻撃に自動追尾能力を与えると言う物で、本来はハニーホーミングもそんな攻撃をしてくるんだと思う。見られなかったのは別に残念でも何でもないけどね。
本来は厄介だろうけど、私達に取ってはラッキーな事に、このボスは時間が経つとどんどん増えるらしい。今も段々と増えてきているけど、張り切っているレンチの活躍でどんどんと数を減らしている。
戦闘の準備をってレンチは言ってたけど、私達の出番ってあるのかな?




