117. ハロウィンの次は文化祭
マルンに先導されて入ったタワーマンション。そのエントランスはカボチャのランタンで照らされ、少し不気味な雰囲気を醸し出していた。
でも、集まって踊る子ども達と、それを見守る大人達の姿はどこかほのぼのするもの。大人達がべろんべろんに酔っ払っているのは、見てはいけない。
「あ! お菓子だ!」
「わーい! お菓子が来た!」
子供達に混じって踊っていたテルンとチルンが、私達に気付いたのかお菓子呼ばわりして駆け寄ってきた。だけど、それに突っ込む余裕もなく、それに釣られた他の子供達も駆け寄り、瞬く間に飢えたゾンビ達に取り囲まれてしまった。
何も、子供達全員がゾンビメイクをしなくても良いんじゃない?
尻尾や袴を引っ張ってくる子供達にお菓子を配り、十五人居たおかげで、サクラもイベントミッションを無事クリア。サクラとヨーナはスカートを捲られまくって大変そうだったけどね。
配ることも考えて、小さめのバケツにクッキーや飴、チョコレートを詰め込んだ物を用意した物は大好評だった。貰えて嬉しいからってより、皆で中身を交換しあえるのが受けた理由だと思う。でも、こんな光景を正月過ぎのニュースでよく見るよ。
「元気良すぎだろ、こいつら」
「スカートは大変だね」
「スカートじゃない巫女服なんて、あり得ないですわ」
逆に、袴じゃない巫女服の方があり得ないと思うけど。いや、二次元ならその方が当たり前なの?
「私は正統派だから!」
「武闘派の間違いだろ」
そもそも、巫女じゃないだろって突っ込みはないのかな?
ともかく、私はスカートを履く気はないんだけどさ、ヨーナはスパッツとか履いた方が良いと思う。本人はスカートを翻さずに戦うぜ! とかって思ってそうだけど。
でもこれ以上装備の話しを続けると、明日辺りアイテムボックスに変な装備が入ってそう。だから話題を変えるないとね。
「私達はエードに行くけど、マルン達はどうする?」
エントランスの隅にある、バーカウンターの一角を陣取り、お菓子を交換しているマルン三姉妹にそう聞いてみる。マルンは少し考えてる素振りを見せるけど、テルンとチルンは首を振っていて、行く気はなさそう。
「我もやめておく。今彼処は、ロリコン共が盛り上がってるそうだからな」
その言葉を聞くと、私も行きたくなくなってくる不思議。
因みに、ロリコン共が盛り上がっていると言うのは、エードで起こっているイベントの所為らしい。
そのイベントは、迷子の座敷わらしを探せ、と言うもの。エードの冒険者ギルドに行くと参加できるもので、各街のギルドに住んでいる座敷わらし達がお祭りに出掛けたものの、いつまで経っても帰ってこない。だから探して欲しい、って内容みたい。
「上手くいけばテイム出来るからな、血眼になって探しててちょっと怖い」
マルンがどん引きしているのを見るのは、初めてな気がする。サクラは座敷わらしに興味があるみたいだけど、ヨーナは完全に行く気なくなってるよ。椅子に座ってコーラ飲んでるし。
「アオイは行った方がいいぞ?」
座敷わらしは三人もいるから十分だと思うけど、マルンが言いたいのは、その話しではないみたい。
私が行った方が良い理由。それはエードの冒険者ギルドで、文化祭イベントの場所取り受付が始まったからだそう。
文化祭イベントは、出店した店の売上を競うイベントみたいだけど、それだけでは終わらないのが運営。一発逆転の大チャンスがあるらしく、それには出店場所が重要になってくる。そのため、早いうちに受付を済ませた方が良いみたい。
「アオイさんが行くって事は、ギルド単位での参加って事ですわね?」
「ギルドバトルのイベントだからな、っと、これは言ってはダメだった」
慌てて口を抑えるマルンは可愛いけど、それって絶対バトル展開じゃん。って事は、店が拠点になるって事かな。防衛しやすい場所を選ばないと、四方八方から襲撃を受ける事も考えられる。でも売上を競う以上、ある程度お客さんが来そうな場所じゃないと駄目だよね。あれ? ちょっと難しくない?
「どの場所に出店出来るか、それを見てから考えた方が良いですわね。ヨーナさんは行きますの?」
「そう言う事なら行くぞ」
トヤマさんやスラミの意見も聞きたいけど、それはどこに店を出せるか聞いてからでも遅くないからね。よし、魔境に出掛けようか。
雰囲気だけでも楽しもうと、エードの広場へ転移した私達。そこでは思い思いの仮装をして楽しむ人達と、血眼になって座敷わらしを探す変態の二種類が居た。
「屋台なんかは縁日みたいなのに、街を歩くのはゾンビや魔女か、変な感じだな」
「ロリコンは仮装に入る?」
「アオイさんは私と手を繋ぎましょうか。攫われてしまいますわ」
私はそこまで小さくないよ? 百五十はロリじゃないよね? ロリってなんなの?
問答無用で左手を掴まれ、一人だけそのままってのも可哀想だから右手はヨーナに差し出す。
「仲間に入れてあげる」
「仕方ない、文化の日にハンバーグな。勿論お前家で」
ヨーナの手は有料だった。
冒険者ギルドに入ってみると、そこにはそこそこ人で混んでいたものの、受付に並んでいるような人は殆ど居なかった。
ラッキーと思い、三人で受付へ行って社員のお姉さんに話しかけると、まず始まったのは座敷わらしイベントの話。
「それより、文化祭イベントの、場所取りの事を聞きたいんですけど」
「ああ、そっちですか。あそこに張ってあるポスターに触れれば、専用のウィンドウが表示されます。そちらから選択が出来ますが、冒険者ギルドの中でしか表示されませんので、お気をつけください」
お姉さんが指さした先、入り口の隣に張られたポスターをよく見れば、今言われたことがそのまま全部書かれていた。だから、受付に並んでいる人が居なかったんだね。
早速、ポスターの所まで行ってそれに触れ、ウィンドウが表示された事を確認して、併設されている酒場の空いた席へ。
「体育館は休憩所になっていて、選択出来ないみたいだね」
「流石に、狙い目は潰されていますわよね」
カウンター席に私を挟んで手を繋いだ時のように座り、ウィンドウに表示された見取り図をチェックし始める。
体育館は、中が自由に設定できるため入り口が一つしかない。だから狙い目だったんだけど、そこには休憩所に使用、と欠かれ選択できなかった。
「私は現場を見てみる。良さそうな場所があったら言ってくれ」
ヨーナは【プロビデンスな目】の効果で、実際の立地を確認してくれるみたい。
「トヤマさんとスラミは、私達に任せると言ってますわ。二人とも忙しいそうですわね」
サクラは二人に連絡を取ってくれたみたいだけど、その答えは責任重大なもの。スラミはどうせ、あのスライムを自慢しているんだろうけど、トヤマさんは何をしているんだろうね。
「場所で言うと、庭やグラウンドがある外か、教室なんかの室内か、だよね」
「外が良いかもしれませんわね、キングを呼ぶなら室内では無理ですわ」
そっか、守ることを考えたらキングを呼ぶのは優先したいもんね。となると、ある程度の広さと攻めにくさが有るところか。
「寮の側はどうだ?」
「駄目、埋まってる」
寮の側は森を遮る壁もあるし、後ろは海だからいい場所なんだけど、当然そんな所は既に別のギルドが選択済み。やっぱり、少し出遅れたのが悪かったかな? 日が暮れた頃から始まってるみたいだし。
「いっそのこと、グラウンドの真ん中で良いんじゃなくて?」
「そうだな、アオイが要塞を創れば済む話しだもんな」
今まで悩んでた時間は何だったのか。まぁ、いいや、その方が楽だし、其処に決定。どんなんイベントになるか分からないけど、楽しめればそれで良いかな。




