115. 機械神
辺りがすっかり暗くなった頃、漸く真っ白地獄も終わりが見えた。最後まで集中力を切らさなかったレンチと、意地を見せたタツノのお陰だけどね。でも完成の目処が立った時、私の腕の中で眠るぬーちゃんを見たタツノの顔は忘れないと思う。
「さて、最後のピースを嵌めたら出現だ。どこで出そうが、時間が経つと面倒なことになる。テイムは早めにな」
後一つピースをはめれば完成。そんな時にマオから声が掛かった。
「最初はコアの状態で現れるのだけど、直ぐに機械で装甲を創り出すの。無尽蔵に機械を生み続けるし、コアに攻撃しないとダメージが入らないから厄介なのよ」
イザナミが詳しく説明してくれたお陰で、なにが面倒なのか理解できたよ。つまり、コアの段階でテイムしろって事だね。
タケミカヅチは戦えば良いのに、と残念そうだけど、私達にそんな体力はもうないよ。あれ、精神力かな? 兎も角、さっさとテイムしてレンチにご馳走創ってあげよう。
腕に抱くぬーちゃんは横に置き、念の為、防具を通常の戦闘用の物に変えておく。そして、皆が固唾を飲んで見守る中、最後の一ピースをはめてジグソーパズルを完成させた。
すると、真っ白だったパズルに歯車の絵が浮かび上がり、回転を始めた。それは速度を増す度に火花を出し、カチッとした音と共に歯車が動きを止めると、絵から真っ黒な球体が浮かび上がるようにして徐々に姿を現し始めた。
そんな浮上を邪魔するように、ゴッドテイム石を押し付けてテイム完了。名前はワンダフルで良いとして、やっと一息つけるよ。
「終わったな。なら、早速私の強化を始めてくれ」
一息つくのはお預けみたい。レンチがやる気に満ちていたのは分かっていたけど、こうも直ぐに始めることになるとは思わなかった。
「強化祝いにご馳走創るよ? ゴーレム化前の最後のご飯」
「そんなものは要らない。それに強化祝いならした後で良いだろう」
慰めの会にならなきゃ良いけどね。どのみちゴーレムコアを用意してないから機械化はまた今度だし、楽しく祝うなら時間があった方が良いかな?
「強化を始めるなら、これを渡さないとな」
そう言ってマオから手渡されたのは、機械で出来た手の平大のボールだった。これってゴーレムコアだよね? 称号で見ても確かにそう表示されているし、なんでこんなに準備が良いの? こんな事もあろうかとなの?
「やるなら早くやっちゃえよ。当然ロケットパンチは着けろよ?」
「あら、目からビームも良いですわよ」
ヨーナとサクラも楽しみにしているみたいだし、やってしまおうか。マオとイザナミは仕掛け人みたいものだから、早くしろって言わんばかりに見つめているし、タケミカヅチも全身に剣を仕込むのも良いな、とノリノリ。
お酒を飲みながら、タツノを慰めている師匠とジーヌは放っておくとして、寝ているぬーちゃんを一撫でして縁側へ向かう。ムーンゴーレムは大きいからね。
縁側に座り、外にムーンゴーレムを出してみると、その目は私のある部分に固定されたまま動かない。マオが隣に来ると其方に釘付け。ふむ、谷間が良いのか。それじゃあ、バニースーツには勝てそうもないかな。
「おっぱい魔神か?」
「女の子が好きみたい」
後ろに座るヨーナに答えながら、石に戻そうとレンチの方を見ると、とても微妙そうな表情をしていた。ごめんね、まだ序の口だよ。
レンチを石に戻し、ムーンゴーレムに与えて融合進化。
「はぁはぁと五月蝿い奴だな、こいつは」
「次はこの子ね」
名前をレンチに変え、不満を漏らすレンチに構うことなく、龍星、原初の澱み、ワンダフルと次々に渡していく。そして最後に渡すのは、まんまみーやが入った石。それを取り込んだレンチは顔をしかめ、耳を手で塞いでうずくまった。
「早く機械化した方が良いわね。設定している間に大人しくなるでしょ、ゴーレムコアを渡せば機械化が始まるわ」
後ろから見守るイザナミからそんな声が掛かり、頑張ってねと伝えながら、うずくまるレンチにゴーレムコアを渡す。すると、レンチが光に包まれ、徐々にその形を球体へと変え、最終的に拳大の光の玉となった。
「あ、ウィンドウがでた。これで設定できるんだね」
私の前に現れたウィンドウには、さっきまでのレンチの姿が映っていて、右上には250ポイントと表情されている。これがボーナスポイントだね。下の方には入力フォームみたいなものがあるし、ここに入力すれば色々弄れるのかな?
「なら、先ずはこれかな?」
「角ドリルって、ベタですわね」
折角頭に角があるんだからと、角ドリル、飛ばせる、と入力すると、後ろからウィンドウを覗き込んでいたサクラは少し不満そう。てか、私の後ろが凄いギュウギュウ詰めになってるよ。
私の隣を陣取るマオとヨーナは普通に覗き込んでいるけど、後ろはイザナミを真ん中にその横にサクラ、反対の横にはタケミカヅチ。さらに後ろにはさっきまでお酒を飲んでいた三人が並んでいる。
「だって角があるんだし」
「なら、次はおっぱいミサイルと、股間ミサイルだな」
なんでマオは、そう言う方向に行こうとするのか。胸を開いて無数のミサイルを飛ばすのは良いけど、胸が飛んでくのはちょっと嫌だ。
「やっぱり仕込み刀だろ、手足から刀を出せば接近戦は事足りる」
「なる程、股間に槍を仕込めばいいのか」
だからなんでマオはそう言う方向に拘るのさ。折角、師匠が良い案出してくれたのに。
戦闘には真面目な師匠とタケミカヅチの意見を参考に、おっぱい、おっぱいと五月蝿い提案は無視して格好いいレンチを造るために設定していく。
角ドリルは10ポイント、仕込み刀は肘と膝から突き出るタイプと腕に格納して、取り出せるタイプの二種類を設定。それで50ポイントだった事から、元々あるものを活かすと、ポイントが少なくて済むのかな?
脇に抱えて撃つ、そんな感じのガトリングを追加してみたら50ポイント消費したし、多分そうだよね。おっぱいミサイルを搭載したらお得になるなんて、……やらないけどね。
足に飛行用のジェットを取り付けて10ポイント、背中にフライングユニットを出し入れ自由で搭載して50ポイント。
飛行効果は重複しているけど、足に飛行用のジェットを搭載するのは外せない。でも、背部にくっ付くフライングユニットも捨てがたい。だから足のジェットには、攻撃にも利用できるバーナーも兼ねる様にしてみた。それで10ポイントならお得だよね。
そして、50ポイントで胸の前に構えて撃つ、大型のレールガンを追加。此処まで追加して、あることを失念していた事に気付いた。
「外付け武装って、機械神の特性でいくらでも創れるんじゃ」
「だから、おっぱいミサイルを推してたんじゃないか」
マオに突っ込まれるとは思ってなかったから、少しへこむ。一度入力して決定したものは変更できないみたいだし、残り30ポイント、ここからは慎重に行こう。はぁ、決定押す前に気付けばよかった。
先ずは10で装甲、と言うか見た目だね。青と白を基調にしたカラーリングで、機械の雰囲気を持たせたボディスーツのようなデザイン。見た目は女性のシルエットだけど、エロくはならないようにイザナミに頼んで決めて貰った。
このまま人に見せても大丈夫なデザインだけど、後から服も着せれるし、その事も考えて少しおとなしめな感じになっている。
そして、目からビームを出すのに10ポイント。サクラも提案していたけど、私もこれの魅力には勝てなかった。やっぱり良いよね、目からビームって。
最後10ポイントで搭載したのは、マオの意見を尊重したある物。それはおっぱいミサイルでも、股間ミサイルでもなく、通常通りに飲食が出来るという機能。
そうだよね、そりゃ機械がそう言う機能も付けず、飲み食いなんて出来ないもんね。戦闘の事ばかり考えていた自分が恥ずかしい。やっぱりマオは、レンチの事をよく考えているんだね。
「酔って恥ずかしがる姿が見れないのは、やはり勿体ないからな」
前言撤回。やっぱり面白がってしかないや。
最終的な設定項目の確認も済ませ、決定をタップすると、目の前の光の玉が徐々にに人型となっていき、新しくなったレンチが姿を現した。
「主よ、ありがとう。強化してくれた事に感謝する」
設定通りの姿になったレンチは、どこか落ち着いた雰囲気を醸し出していた。
「レンチ、ちょっと変わった?」
「ああ、まんまみーや諸共少し、な」
少し疲れた様子が見て取れるけど、レンチの中で何かあったのかな? まさか、融合したモンスターの中に、レンチやまんまみーやを同時に矯正できる猛者が居たって事?
この状況にマオが舌打ちをしているけど、何でも言うことを聞いてくれるような存在じゃなくなったのが、残念なのかな。私はまともになってくれて良かったけど。
これなら、普通に飲食出来るようにして良かったよ。って、あぁ、酔った時の事は流石にどうにもならないよね。下手したら余計からかわれそう。
まぁ、お酒を飲まない私が気にしても仕方ないか、とりあえず、私達がログアウトする前にご馳走を用意しておこうかな。




