114. 襲い来る白
動物で癒され、美味しいハンバーグで元気を取り戻した午後。流石、ハンバーグだよね。あの溢れる肉汁が、悲しさまでも洗い流してくれるようだった。まさしく、師匠と言っても過言じゃないよ。
あの醜態なんて忘れたかのようにご機嫌になり、ログインしたらベッドで丸くなるシンラを一撫でしてリビングへ。今の私は何も怖くない、そんな自信に満ち溢れているよ!
「聞きましたわよ、面白いことしているそうですわね」
リビングでお茶を飲んでいたサクラの一言に、思わずドキッと心臓が高鳴る。共にいたヨーナをチラリと見ると、首を振っていたのであの事とは違うみたい。そもそも、しているって言ってたから、多分レンチの事なんだろうけど、タイミングが悪すぎるよ。バレたかと思ってドキドキしたよ。
「マオとイザナミが空飛ぶ島で待ってるってさ。大変そうだって言うから、私達も助っ人を頼まれた」
ヨーナが教えてくれた伝言で、なんとか心を落ち着かせる。空気を読んでくれたのか、尻尾も動いてない感じだったし、サクラに不審に思われることはなかったと思う。
ふぅ、今はマオ達の事だね。待ってるってことは、準備は終わったって事かな。それにしても大変そう、か。もしかして、宴会の場が空飛ぶ島へ移ったのも関係してたりして。
詮索しなくても行けば分かる事だし、待ってるって伝言だから早く行かないとね。テイム自体はゴッドテイム石のお陰で直ぐに終わるだろうし、今日中に終わらない、なんて流石にない、よね?
空飛ぶ島の茅葺き屋根の家の前へ、丁度縁側が見える位置に転移すると、縁側にはマオとイザナミ、ジーヌの他に、宴会をしていたであろう師匠とレンチ、タツノ、そしてタツノに抱かれたぬーちゃんと、タケミカヅチが待ちかまえていた。
「やっと来たね、ご主人様。早くやっちゃお!」
ジーヌは私達を見て、待ちきれないとばかりに直ぐ後ろの部屋の中へ入って行く。チラリと見たその囲炉裏のある部屋には、堆く積まれた何かが存在感を放っていた。
「なにあれ?」
「ジグソーパズルだ。あれを完成させる事で、機械神ワンダフルコアゼータを呼び出すことが出来る」
二千ピースも集めるのは大変だったと、疲れた様子を見せるマオ。労いたい思いもあるけど、そのピースの数を聞いて私の頭はパンクしそうだよ。
「一人でやったら、一日は掛かる代物ですわね」
「あら、真っ白だからもっと掛かるんじゃない?」
イザナミが絶望を突きつけてきた。
「私、帰って良いか? 皆の為に、限定ルームアイテムゲットしてくるぜ」
「戦いから逃げ出すなら、テイムはなかったことにするぞ」
あんまりなジグソーパズルに、たまらず逃げ出そうとするヨーナだけど、タケミカヅチに逃げ道を塞がれ肩を落として諦め模様。
その間にも師匠はお酒を飲みながら、堆く積まれたピースの中から角を探す作業に入り、ジーヌとタツノは適当にピースを組み合わせて正解を探している。前足を器用に動かして手伝うぬーちゃんが、凄く可愛い。
「さぁ、気合い入れて行くぞ。中継される仮装コンテストも見たいからな、夜までには終わらすぞ」
そう私達に声を掛け、現場へ向かうマオの姿を見て覚悟を決める。これだけの人数が居れば、直ぐに終わる。前向きに行こう。
防具を私服モードに変え、ぬーちゃんの隣に座り目の前で存在感を放つ山から一掴み分のピースを取り、どう組み合わせれば良いんだと、改めて絶望感に襲われる。これを一人で完成させる人って凄いよね、尊敬します。私は五分程で、この真っ白が憎らしくなってきたよ。
「ヨーナはキャンディ、集め終わったの?」
「ああ、タケミカヅチとゴビンスレイヴが居れば、余裕過ぎるくらいだった」
皆の分を集めてくる、って言ってたから聞いてみたけど、その返答に思わず、あれは儂が創った。なんて言いたくなってくる。
こんな無駄話もパズルに飽きたとかじゃなく、集中力を切らさないために大事なことだからね。
「この中で、ジグソーパズルが得意な人って居るの?」
「レンチじゃないか? 真面目に取り組むって意味ならな」
制作リーダー的なマオに聞いてみると、隣で真面目に取り組んでいるレンチの名をあげた。確かに、ジグソーパズルは集中力を切らさないのが大事だろうしね。
真面目に長時間取り組めるって言うのは、それだけで強みになる。本人も周りが見えてないかのように、真剣に向き合ってるもん。
開始十分経って、既に飽き始めている師匠とジーヌとは大違いだ。師匠はお酒を飲むのがメインになってるし、ジーヌはぬーちゃんにちょっかい出し始めてる。
師匠は兎も角、ジーヌは元々アクティブな子だしね。じっとしてるのは性分じゃないだろうから仕方がないかな。
ぬーちゃんにちょっかいを出すと言えば、タツノなんかは真っ先に構い出しそうだけど、意外にも直向きに頑張っている。真剣な表情を見るに、ぬーちゃんに良いところを見せたいのかも。
でも残念、ぬーちゃんは私に組み合わせたピースを見せるのに忙しいみたいで、タツノの方は一切見てないよ。
開始一時間を経過した辺りで、サクラの隣に座るヨーナがおかしくなった。ピースをドミノの様に並べようと、必死になって立たせようとしている。楽しいのかな? あ、タケミカヅチに叩かれた。
「サクラは大丈夫?」
「私は、アオイさんがピースに絵を書き出さないかが、心配ですわ」
まさか行動を読まれているとは思わなかった。パズルを組みながらも、案外周りは見ているんだね。こんなに真っ白なのが悪いと思いつつ、静かに手に持つ創り出したペンを消し、息抜きついでに皆の状況を見渡してみる。
ピースの山を中心に、その周りの思い思いの場所で組まれ、塊になっていくピース。脱落者はまだ三人だし、順調に来ていると思う。
特に、レンチのペースが速いかな。私の反対側に座っているから確認しやすいけど、明らかに他の人より塊が大きくなってる。私とサクラ、ぬーちゃんが協力して出来たものより大きいのは、ちょっと悔しい。
「レンチ、頑張ってるね」
「そうだな。マオ様から聞いたが、これは私の為にやっている事なんだろう? それが嬉しくてな、私一人でもやり遂げてみせるさ」
チラリとレンチの隣に座るマオを見てみると、必死で笑いを堪えている姿が確認できた。マオはレンチにどんな風に言ったんだろう?
確かにレンチの為だけど、どうせまんまみーやの事や、面白がってる事は言ってないんだろうし、少し可哀想に思えてきた。
この輝かしいはにかみ笑顔が、曇るんじゃないかと不安だよ。いや、レンチがまんまみーやを教育する可能性に賭けてみようか。それに、これが終わったら豪華な食事にしよう。勿論レンチのリクエストに応えてね。
師匠とジーヌ、ヨーナは脱落したけど、イザナミとタケミカヅチのコンビのペースもいい感じだし、ぬーちゃんの隣に座るタツノも頑張っている。
何とか夜までに終わるよう、頑張ろうか。




