113. 因果応報?
スラミとムラマサも出掛けていき、二時間ほどお菓子を作り続けて、これで良いかとひとまず満足。若干創りすぎたかもって思うけど、笑顔でカボチャプリンを食べるもちを見ていると、なんだか不安に思えてくる不思議。
「あのバケツの中身は食べ終わったの?」
「はい、でもバケツの中身はプリンが良いです」
それって創れって事だよね。ハロウィン用のお菓子を創っている間、何時の間にか下りてきてパフェを食べて待っていたもちだけど、やっぱりプリンが好きなのかな?
そうだ、まだパフェブームは続いているみたいだし、プリンアラモードみたいにした方が良いかもね。カボチャプリンの物も創っておこう。
バケツサイズのプリンアラモードを、カスタードとカボチャ、それぞれ十個ずつ創ったところで流石に飽きてきた。
「もちはずっと此処にいるの?」
「いえ。小豆と先生が戻ってきたら、フィナも連れて精霊学園に行く予定です」
小豆が精霊学園に行くって珍しい。と言うか初めてだよね? 何しに行くのかと思えば、精霊学園で宝探しをやっているみたい。スラミが言ってたのもこれかな?
隠されている宝はお菓子みたいで、もちが誘ってみたそう。小豆がそれを受けるくらいだし、姉妹の仲は思ってたよりも良いみたい。先生も行くって聞くと、遠足みたいに思えちゃうけどね。
先生に迷惑かけないように、ともちに言って外に出たけど、あの楽しみな気持ちが溢れている顔を見ると、やっぱり少し不安。先生は引率って言うより、子連れのお母さんの方だったかな。
ツリーハウスへ行くと、そこではサクラとヨーナだけではなく、タマと白い蛇も一緒だった。見ているアニメは妖怪が出てくる映画みたいだけど、あのでっかい鯨は何なんだろう?
「カボチャプリン食べる? ヨーナへのお土産も兼ねて」
「お、サンキュー。お土産も兼ねて二つくれ」
「ありがとうですわ」
タマと白い蛇も食べたいみたいで、こっちを見ながら尻尾をゆらゆら、舌をチロチロとアピールしている。なかなか蛇も可愛いもんだね。
「白い蛇って神様だよね? 私が見えるってことは、依代の称号のお陰かな?」
「そうですわね、私もアマテラスが見えましたもの」
「蛇居んの?」
カボチャプリンを手渡しながら、白い蛇に付いて聞いてみると、やっぱり神様だったみたい。ヨーナが見えてないって事は、やっぱり称号かな。
イザナミとイザナギは見えていたけど、あの二人は特別って事なんだろうね。イザナギなんかはシナリオにも関わってたみたいだし、当然かな。
「紹介しておきますわね。大物主ですわ。気軽にぬっしーと呼んでくださいまし」
「よろしくー」
「あ、喋るんだね」
喋る事には驚きだけど、カボチャプリンで顔中汚してる姿はやっぱり可愛い。昨日チラッと見たときは、豪快に瓶を咥え込んでお酒を飲んでいたけど、甘い物も好きなのかな?
そんな顔を舐めてあげてるタマも可愛い。でも、頭ごと咥えるのは駄目だよ、もう狩りみたいになってるよ。
「そうだ。アオイ、勝負しようぜ」
羨ましさの余り可笑しくなったかと心配したけど、ヨーナにも考えがあっての事みたい。
タケミカヅチは戦闘を観戦している時がある。それなら、AI達も注目している私と戦闘すれば寄ってくるんじゃないかという事。
「寄ってくるかなぁ?」
「面白そうだし、寄ってくるんじゃありませんの?」
チラリとぬっしーを見てみると、あらぬ方向を見つめビタンビタンと体を動かしていた。何をしているのかは分からないけど、ホントに来そうな状況になってきた。
「分かった。それじゃあ、ついでに冒険者ギルドに行って、キャンディ貰ってこようか」
「ああ、そうするか。サクラはどうする?」
「私はパスですわ」
サクラは映画を見続けるそうで、イベントは余裕があればお菓子を配るくらいだそう。十人にお菓子を渡せばいいから、タワーマンションに行けば直ぐに終わるもんね。もちもそうだけど、NPCが対象になっているかは分からないけど。
スールガへ転移でひとっ飛びし、冒険者ギルドへ行ってキャンディを貰った後は、空飛ぶ島へ再び転移。やっぱり転移って便利だよね。
PvPの設定が出来る場所が理想だから、場所は高天原でも良かったんだけどね。高天原を利用するほど時間がない訳じゃないし、午後までの時間潰しも兼ねてのんびり戦闘も良いと思う。
「ルールは、HPがなくなったら負けね」
島の中心から離れた森の中を対戦場所として、先ずは対戦ルールの設定。これを求めたのは、死に戻りが嫌だから。イベントのルールだと、倒してしまうと死に戻りになってしまうみたいなんだよね。ノット殺伐、なのです。
その点、この島でPvPの設定をしとけば、死に戻りは回避出来るようになっている。そこが結構便利なんだよね。高天原も同じ仕様だから、時間を気にせずみっちりやりたい時はあっちが便利。
「ああ、いいぞっと!」
そんな設定をしている時、ヨーナが何かを投げる動きをしたのが見えた。どうやら本当に見に来ていたみたい。
「タケミカヅチ、ゲット! 名前はそのまま、タケミカヅチだ。ふっふっふっ、これで私が勝つ確率も上がるな!」
「私はそんなに甘くないもんね!」
ふふん、多分私はヨーナにとって相性が悪いタイプだからね。そう簡単にいかない自信があるよ。
準備時間として、ヨーナがタケミカヅチを出すのを見ていると、ゴッドテイム石から現れたのは小学生くらいの幼女だった。それも、低学年くらいの身長で、可愛らしいセパレートタイプの水着を着ている。ショートカットにした髪型の所為か、やたらと活発そうな見た目をしているけど……。
「ホントにタケミカヅチ?」
「失敬だな。隠しボスとしては立派な姿になるぞ、それもムキムキだぞ? ふふっ、これは世を忍ぶ仮の姿なのだ!」
やっぱり、隠しボスにまともな奴なんて居ないんだ。マルンはギリギリかな? 本人的には、この姿なら誰もタケミカヅチとは思わないからな、って胸を張っているけど、何も幼女じゃなくても良いじゃん。趣味なの?
「見た目が気になるか? これはな、戦闘中にこの姿を見て、注目してしまうようなロリコンプレイヤーを見て笑うためだ!」
趣味だった。それも悪い趣味だった。
「ま、強けりゃ見た目なんて関係ないさ。アオイも準備しろよ」
ヨーナが良ければ良いけどさ。はぁ、勝負って事で切り替えよう。ヨーナがタケミカヅチを憑依させたのを見て、私はアマテラスに連絡を取り憑依させる。一緒に居たフィナも戦いたいみたいってアマテラスが言うから、転移させて刀へと武器化。
「準備は良いか?」
「大丈夫!」
ヨーナは既に右手にゴビンスレイヴを持ち、左手にはそれよりも少し長めの剣を持って準備万端な様子。左手に剣を持ってるのは多分、タケミカヅチ関係の武器だと思う。気を付けた方が良いかも。
それに、十メートルの間隔で離れて待機しているのは何か作戦かな? いや、そっちはヨーナの事だし、単にその方が戦いっぽいってだけだろうけど。
開いていたPvPの設定を完了させ、辺りに五秒前からのカウントダウンが響く。それを聞いて、刀を中段に構え、何時でも振れるようにと心を落ち着かせる。
「森だからって、逃げ隠れ出来ると思うなよ!」
「ぶった斬るにー」
カウントがゼロになって直ぐ、ヨーナが信じられない速度で私に迫る。ゴビンスレイヴの語尾に少し力が抜けそうになるけど、今の私には関係ない。
「食らえ! って、あっづっ! おま、熱すぎだろ!」
「いやー、溶けるまー」
思わず自分から距離を取るヨーナに、内心上手くいったとほくそ笑む。刀を構えたからって、打ち合う訳じゃないんだよね。
「私の光輪は熱を発するのです! ふはは! 来ないなら、こっちから行くのです!」
「おい、止めろ! 来んなよ、こっち来んな!」
伊達や酔狂で、こんな光輪背負ってるんじゃないのです。イザナミの矛が強いように、この光輪にもちゃんと意味があるんだよね。
森の中を逃げ惑うヨーナを、付かず離れずの距離を保って追いかける。ふへへ、悪役みたいで体育祭の時は出来なかったけど、個人的な対戦なら許されるよね。
ふふっ、このまま午後まで、追いかけっこをしようではないかー!
「こっち来んなよ!」
「へっへー! トリックオアトリー、ぷひゃ!」
ドシャッ! とした音を立てて、盛大に地面を滑った時、調子に乗ったと激しく後悔した。まさか木の根に足を引っ掛けて転ぶなんて、恥ずかしいよう。顔を上げれないよう。
「ぷっ、わ、私の勝ちで良いか?」
「こ、この事を黙っててくれるなら」
上から聞こえる笑いを堪えた声に、私の恥ずかしさが鰻登り。勿論、私の中の悪魔、もとい神様は大笑いだ。人型に戻って、私の背中をさするフィナの優しさが身に染みるよう。
もうログアウトだ。ヨーナにキャンディを渡して、フィナと未だに爆笑しているアマテラスをログハウスに送って、逃げる。うぅ、お昼まで癒し系の動物映像でも見て過ごそう。




