112. ハロウィンの始まり
ある夢を見た。ログインしてリビングへ下りていくと、皆がまんまみーや! って叫びながら万歳してるの。そして、階段から下りてきた私をじっと見つめて……。
「お前をまんまみーやにしてやろうか!」
「なに言ってるんです?」
ログインしてみると丁度もちがベッドに座っていたので、夢の中で皆に言われたことをもちに向かって言ってみた。物凄い不思議そうな顔をしているから、正夢にはならなかったみたい。逆にダメージ食らったけど。
「そんな事より、トリックオアトリート!」
「はいはい、待ってね今創るから」
テンションの上がったもちに尻尾を引っ張られながらも、バケツにクッキーやチョコレートたっぷり詰め込んで手渡し、落ち着かせる。
今日は機械神とやらの事もあるけど、先ずはお菓子を量産した方が良いかな。そう思いながらも、ログイン時に届いていた運営からのメールに目を通すのを忘れない。だって、イベントについての事だもん。参加出来るようなものならしたいもんね。
メールを読んでみると、ハロウィンイベントは二つあるみたい。一つは、トリックオアバトルロイヤル。運営ってこう言うの好きだよね。
これは冒険者ギルドでキャンディを貰うことで参加できるもので、参加するとアバターの頭上に専用のアイコンが表示される。後はそのアイコンを目印にプレイヤー同士で戦闘して、勝てばキャンディを奪い取れるって言うもの。
そして、キャンディを十個集めると、ハロウィン限定ルームアイテムが貰えるみたい。戦闘したくない人用に、お菓子を十人にプレゼントする事でもルームアイテムは貰えるそうだし、今日の予定次第で戦うかお菓子をあげるか決めようかな。
いや、私が戦闘するとして、相手をしてくれる人は居るのだろうか? 只でさえ、ギルドバトルもゴーレムコロシアムも避けられているのに。
想像してみよう。アイコンを表示させ、プレイヤーを探してさ迷う私。逃げ惑うプレイヤー達。問答無用で襲う私。阿鼻叫喚。
うん、大人しくお菓子を配ることにしよう。悪名なんて要らないもん。
もう一つは仮装コンテスト。これは夜の開催で、王都エードの劇場で行われるみたい。優勝者には称号が与えられるそうだけど、私はコンテストに出るような度胸はないからパス。でも、エードでは街全体を使ってお祭りをやるみたいだから、そっちは見に行ってみようかな。
「もちは、どんなお菓子が食べたい?」
「カボチャプリンが良いです」
どうせお菓子を創るならリクエストには応えようと、もちにどんなものが食べたいか聞いてみる。目の前のお菓子に、夢中になりながらも答えてくれたのはカボチャプリン。やっぱりハロウィンを意識したいのかな? よし、一杯創ってあげよう。
午前中はお菓子づくりに励むとして、機械神の事は午後からにしようと思い、マオ達に相談するためリビングへと階段を下りていく。
「おはよー」
「おはよう、アオイちゃん。悪戯して良い?」
リビングに居たのはスラミとムラマサだけだった。何時もは座敷でお酒を飲んでいる人達も、小豆すらも居ないし、何時も先にログインしているサクラも居ない。
ユイナは今日、ライブがある為ログイン出来ないって言うのは知ってるけど、他の人はどうしたんだろう? 後、ムラマサの手の動きが怪しい。
「悪戯させてくれたら良いよ」
「カモンッ!」
ノリで答えたら、その返答は失敗だったみたい。いくらでもどうぞと言ったように、胸を張って静止するムラマサは無視してスラミの隣に座ると、スラミが気になっていた皆の行き先を教えてくれた。
「先ずはマオとイザナミから伝言。件の計画は午後からだってさ、準備があるみたい。ジーヌも一緒だって」
三人掛かりでの準備ってなにしてるんだろう? でも午後からって言うのは、願ったり叶ったりだね。ハロウィン用のお菓子の創り置きが出来るし。
そして、他のモンスター達の行方。小豆は先生と共にカジノに行き、ミスノは何時も通り鍛冶に勤しんでいるそう。フィナとアマテラスはクジとジラの所で、師匠とレンチ、タツノは空飛ぶ島の家で、鍋を囲んでお酒を飲んでいるみたい。
「精霊三人は、学園でもイベントがあるみたいでそっちに行ってる。トヤマとクイネは王都デートだってさ。爆発しろ」
最後に言葉に怨念が込められていた気がするけど、触れたら火傷するだけだからスルー。それにあの二人がデートするのも何時もの事だし。
「そんで、ヨーナとサクラはアニメ鑑賞。あれって凄いよね、厳選のチョイスが」
スラミに続き、ムラマサが教えてくれたヨーナとサクラの居場所は、昨日と同じ場所。ムラマサの言うようなチョイスだから飽きないのかな? ある程度お菓子を創ったら、様子を見に行ってみよう。
「二人は何処かに出掛けたりしないの?」
早速カボチャプリンの量産を始めながらも、二人にこれからの事を聞いてみた。でも、二人の視線はカボチャプリンに釘付けな為、味見用に一つずつ手渡す。ガラスの器に乗ったそれには、生クリームもトッピングされていて見た目も良いと思う。味も良いと思うけどね。
「やっぱ、美味いねぇ。これを待ってたんだ」
「そうそう、ハロウィンと言えばカボチャスイーツ。アオイを待ってればありつけると思ってね」
街に行けば、もっとお洒落なやつが売ってるんじゃないかと思うけど、こうして家で食べるのが良いらしい。この二人は、フォトジェニックみたいなのには興味ないのかな? 興味のない私が言うのもなんだけどさ。
「これでアオイちゃんは二人に、いや三人にお菓子をあげたって事だね」
三人と言うのはもちを入れて、って事だね。一瞬もうカウントされてるのかなって思ったけど、サポートAIの事を考えると不思議でもないか。二人はこの事を知っているのかな?
「二人は、サポートAIの事しってる?」
聞いてみても二人の反応は同じ、首を振って知らない模様。イザナミに聞いたことを話してみると、ムラマサが身を乗り出して迫ってきた。
「お姉ちゃんって言って! 私のムラマサお姉ちゃんって!」
「む、ムラマサお姉ちゃん」
この反応にはなんとなく予想は付くけど、ウィンドウを開いて確認しているムラマサの顔は、若干気持ち悪いく思う程ににやけている。AI空気読み過ぎでしょ。
「スラミはいいの?」
「私はもう持ってるから。そっか、AIがね」
その顔はどこか切なそうだけど、付けられた称号が思ったのとは違ったのかな?
「そうだ、スラミは探してる神様見つかったの?」
「まだ。スライムの神様って聞いたから、張り切って探そうと思ってたけど、もう社長に聞こうかなって」
やっぱりスライム関係だったんだね。スライムの神様か、髭とか生えてるのかな?
プリンを食べ終わったら喫茶店まで聞きに行くそうだし、ムラマサもキャンディ求めて冒険者ギルドまで行くみたい。
私も切りの良いとこまでお菓子を創って、ヨーナ達はイベントどうするのか聞きに行こうかな。




