106. 機械文明は偉大
ログハウスとは門を挟んで、反対側に造ったモフラブの家。要望通りに創ったそれは、その外観は高さ五メートル、直径十メートル程の巨大な切り株。リアルな切り株じゃなくて、玩具みたいな感じだけどね。
中は拡張されているし、間取りも自由自在。窓だって自由に付け替えられるし、外には梯子が付いていて、断面である屋上へ上ることも出来る。なかなかファンタジー感溢れる仕上がりになったんじゃないかな?
既にモフラブも内装を造り終わり、屋上で蕎麦を食べていた時にヨーナからの連絡が入った。サクラも入れたグループモードで入った通信で、隠し里へと続くワープ装置の場所は、ヨーナの予想通り山にあった崖の先端の事だったみたい。
そんな場所にあったため、ワープ装置に乗るのが怖かったそう。空を飛べるからって、怖くないとは限らないんだね。私は行かなくて良かったよ。
『それじゃあ、直ぐに行くね』
『ご褒美確定ですわね』
『それはもう貰った』
どういう事ですのって目で見てくるサクラだけど、それは本人に聞いてみるといいよ。忘れられない出会いになるだろうから。
「ごめんねモフラブ、私達第五大陸に行くけど、モフラブはどうする?」
「私は此処でモンスターの世話でもしているわ」
そう言うモフラブだけど、緩みきった顔を見ていると世話ではなく、遊ぶって言うのが正しいと思う。まだ付き合いも浅いし、口に出すことはしないけどさ。
「アオイ、さっさと終わらせてくるのじゃぞ」
「分かってる、マルンが五月蝿かったもん」
朝、サクラとヨーナと集まる前のログインしたばかりの時の事。マルンからクエストメールを見ろ、早く行けとハイテンションな通信が来て、少しげんなりしたんだよね。
クエストの内容はテレビ機能の解禁。これはゲーム内のテレビで、現実のテレビ番組と同じ物が見れると言うもの。
ただしリアルタイムで見れる訳じゃなく、毎週月曜日に先週一週間分の番組が届くようになっているみたい。それも国内にあるテレビ局全局分、国営はなくて民放だけだけどね。
リストで届く為、番組を検索したり、自分だけの番組表を作る事も出来たりと、運営の熱の入れようを窺える。どうせAI達が熱心に要求したんだろう。
「アオイさん、どうしましたの? 早く行きますわよ」
「う、うん!」
ちょっと朝の事を思い出していたら、サクラに怪しまれてしまった。この事は二人には絶対内緒にしたい。だって驚かせたいもん。特にサクラなんて、地方だからアニメが見れないって、何時も落ち込んでたしね。ネットじゃなくて、テレビで見るのが良いんだそう。
タツノとモフラブに見送られ、サクラと二人でヨーナの下へ転移すると、そこは黒い空と、現実と変わらないような街並みが広がる場所だった。
「よっ! 此処、凄いだろ」
「ホントだね、何処にあるんだろう?」
「マップで見ると海の位置ですわね」
海って事は深海にあるって事なのかな? 確かにマップで見ると、第二大陸と第五大陸の間辺りに現在地のマーカーが表示されている。
早速ヨーナにどんな村、と言うか街なのか聞いてみたら、ここはアンドロイド達の街なんだとか。都会のビル群って感じの街を見渡す限りでは、その人達を見ることは出来なかった。
ビルの中に居たりするのかな? 視界を飛ばせば見れるだろうけど、流石に覗きは良くないもんね。今更だけど。ヨーナは社員さんに会ったそうだけど、その外見はアンドロイドと言うより、機械的なロボットだったみたい。
「此処の試練で貰える称号の効果は、ゴーレムの機械化だってよ」
「おお! なんかロマンがある!」
あれかな、ガトリングとかロケット砲とか付けたり出来るのかな? それよりお腹からビーム出した方が格好いいかも。
「早く試練受けに行こっか!」
「私は遠慮しとく」
「私もですわ。一人でもクリアすれば、テレビも解禁されるでしょうし」
ちょっと残念だな。ヨーナはプラモデル作ってたりした時もあったし、受けると思ったんだけど。って、ん?
「何でサクラ知ってんの!?」
「クイネさんから聞きましたわ。言いましたわよね、朝会ったって」
なんてこった。クイネさんってクエストやってるイメージなかったし、メールなんて見てないかと思ってたのに!
「テレビって何のことだ?」
「そうですわね、アオイさんが試練を受けている間に説明しますわ。ついでに、剣の事も教えて貰いますわよ」
くそう! こうなったら試練さっさと終わらせて、実際に番組見せて驚かせてやる!
そう意気込んで受けた試練。動物が変形してそうな機械の体を持った社員さんに、鬼ごっこの開始を告げられたその瞬間。イザナミを憑依させ、NPCに反応するレーダーを造りだす。レーダーには複数の反応があるけど、建物以外にある反応が正解だと思う。それが合ってれば、標的を間違える心配はない筈だよね。
結果的にその考えは当たっていて、あっという間にクリア。こんなに早く終わるなら、獣人の村でもこうしていれば良かったな。
捕まえたNPCは耳がアンテナ状になっただけで、機械っぽさのない人だった。社員さんは一目でロボットって分かる見た目だったけど、そこはやっぱり趣味の領域なのかな?
称号貰えたら、プレイヤーもアンドロイドになるのだろうか。尻尾を残したままでなれるのなら私もやってみたいけど、やったらタツノ達に恨まれそうだから止めておこう。
「ちょっと反則気味だけど、まぁいっか。ゴーレムの機械化について説明するよ」
NPCを捕まえ、称号の入手を確認したところでさっきの社員さんが現れた。彼の言葉には少しだけ申し訳なさも感じるけど、今は早くテレビを見て驚く二人が見たいし、気にしないようにしておく。
ゴーレムの機械化についての説明は簡単なもので、機械化させるには第五大陸にいるマシンゴーレムを倒した際にドロップする、ゴーレムコアが必要だと言うこと。そして、機械化したゴーレムは、融合進化が出来なくなるという点も注意との事。
その代わりに第五大陸にいる機械系モンスターを倒した際、稀にドロップするチップを組み込む事で強化出来るみたい。ショックウルフみたいな事が出来るのかな? あれにはちょっと憧れちゃう。
とりあえず、機械化するならある程度は融合進化させたモンスターが良いって覚えとけば良いかな。よし、大事な話しも終わったし、早速テレビを見に行こう!
テレビと剣についての説明が終わったらしい二人を連れて、真っ先にログハウスへ戻る。そこでは飲兵衛達がバラエティー番組を見ているのか、異様な程笑いに包まれた空間だった。元々、此処でテレビを見るつもりじゃなかったけど、此処にいたら絡まれそうで怖い。
外に出てツリーハウスを目指す途中、キボリに抱きついて幸せそうなモフラブを誘うのを忘れない。まだヨーナに紹介してなかったしね、ヨーナと自己紹介させながらも歩みを進める。
何故ツリーハウスなのかと言えば、単純に彼処にテレビを置いたらならのんびり見れそうだなってだけ。でも、そんな考えを読んでいたのか、そこにはウォンと相棒が待ちかまえていた。この子達も、テレビ番組に興味があるのかな?
「運営厳選アニメ専門チャンネルがある! うっは、懐かしすぎ、古すぎ! さいっこう!!」
「あ、これ良いな! これ見ようぜ」
モフラブにウォンを渡し、相棒を抱き抱えている間に、設置したテレビから番組リストを調べていたサクラが、運営が厳選したゲーム内オリジナルチャンネルを見つけテンションを上げていた。そのチャンネルは、運営が選んだおすすめアニメのラインナップが見放題だったみたい。
サクラとヨーナの驚く、いや嬉しそうな顔が見れて良かったよ。でも、厳選が古すぎて私はついて行けないや。ギリギリ懐かしいのもあったけどね。




