99. 危ないテスト走行
ゲームセンターで時間を潰すと言うサクラ、ヨーナを空飛ぶ島へ送り、イザナミを迎えにログハウスへ寄った後、喫茶店で待っていて貰ったビルを加えて三人でやってきた第二大陸の荒野。
ビルに指定されて転移したのは、スベガの街から北へ一キロ程離れた所で、此処が駅の建設予定地になるみたい。
「駅も造っちゃう?」
「そのくらいは俺達でやるさ」
クリエイトモードなら一発だし、材料さえあれば簡単だよね。レールだって造るのだけなら簡単、だけど距離があるから大変ってだけ。
終着駅は大陸反対側の先端に造ることになるんだけど、山脈の関係で真っ直ぐには造れなさそう。渓谷になっているところが若干東よりだし、緩くカーブを描く感じになるかな。
「終点まで何日くらい掛かるのかな?」
「一週間くらいね」
「シベリア鉄道と同じくらいか、景観は期待出来ないだろうがな」
一面荒野ばっかりだしね。でも街が出来れば楽しめるようになるんじゃないかな、駅弁とか作ったり、特徴ある街並みにしたりとか。
そこは私が考えることではないだろうし、開拓団におまかせかな。私の仕事は鉄道を造ることだし、早速イザナミを憑依させて取り掛かろうか。
「いくら何でも速すぎだろう」
そんな感想が言えるって事は、ビルも【プロビデンスな目】を持ってるのかな? イザナミの力は絶大で、レールを敷くのは一瞬だった。こんなルートで行けばいいかな、って思えばその通りにレールが敷かれていたから楽なんてもんじゃないね。
「そして肝心の蒸気機関車と客車は此方です」
「何時の間に造ったんだよ」
ビルが呆然としている間に見えない位置に造りだしたんだけど、驚くと言うより呆れの方が上回ってるみたい。ビルもチート仲間に引き入れようかな?
「運転方法は現実と変わらないはずだよ。それと客車の方は内部右側が廊下にしておいたから」
客車はとりあえず一両だけ。長さは二十メートルで部屋数は十部屋、全ての部屋が内装も広さも弄れるようになっているから快適に過ごせるはず。
「要望があれば展望車や食堂車、温泉搭載まで何でも造っちゃうのです!」
「いや、それは有り難いんだがな」
有り難いと良いながらも言葉を濁すビル、その表情はどこか複雑そう。理由を聞けば一週間も蒸気機関車を運転出来るような暇人は居ないらしいし、そもそも運転出来る人も居ないという。
「変なとこでリアルなの忘れてたぜ」
『心配ないわ、そのくらい社員がやってくれるもの』
「社員さんがやってくれるって」
ホント、運営の仕事って何なんだろう? ビルもそんな暇があんのか、って呟いて微妙な顔をしているけど、社員さんがやってくれるって言うなら報告に行った方が良いよね。手っ取り早くベガスの街の冒険者ギルドまで転移しよっか。
「ありがとう! 本当にありがとう!」
転移先の冒険者ギルドで待ちかまえていたのは、既に車掌スタイルの社員さん。直ぐにでもテスト走行をするから、と言い残して何人かの同僚を連れて走り去って行ったしまったけど、私達も乗って良いんだよね? それが目的で造ったんだけどさ。
「燃料とかってどうすんだろうな」
『そのくらいあの人達が用意するわ』
「あの人達が用意するって」
そこまでするなら鉄道も用意しとけば良いのにね、って私の中のイザナミに言うと、運営はあくまでプレイヤーのサポートだとか。プレイヤーが楽しめるようにって事らしいけど、頼めば機関車運転させてくれるのかな?
折角造ったのに乗せてくれないって事は無いだろうと、暇そうな仲間を連れて行くと言うビルと別れ、ログハウスへ戻ると言うイザナミを送ってから空飛ぶ島へ。
ゲームセンターの中を二人を探して歩いていると、エアホッケーで遊んでる二人とマルン三姉妹を見つけた。なかなか白熱してるけど、私はこれ苦手なんだよね。当て所が悪いのか大抵横にカンカンってなっちゃうや。
「テスト走行始まるよ」
「早かったな。そうだ、マルン達も行くか?」
「我らは行かんぞ、あれはきっと怖い」
「私、行きたくなくなってきましたわ」
なんだろう、ハプニングって私達が考えているのとは違うような気がする。怖がるってことはホラー要素でもあるのかな? まさか、ハニンが大活躍でもするのかな?
若干不安になりつつもサクラとヨーナを連れて駅建設予定地に行くと、既に汽車はレールの上に配置され、煙突からは煙が上がっていた。
「よう、さっさと乗り込んじゃってくれ! 他の奴らはもう乗ってるぞ」
機関車の側に立つ車掌スタイルの社員さんに告げられ客車へ乗り込むと、廊下にはビルが待っていてくれた。
「テスト走行だからあんまり長い距離は進まないってよ、気楽に楽しもうぜ」
もしかしたら、ビルはテスト走行だからハプニングが起こらないって思っているのかも。そんな陽気なビルに気を付けて、と忠告して適当にドアを選んで普通電車のボックス席のような造りに設定。
「冬休みになったら電車でどっか行くか?」
「良いかもね、動物園とかどう?」
「それならログハウスに一杯居ますわよ」
私とサクラ、ヨーナと別れて座ると久し振りの電車の感覚に少し気分が上がる。何時起こるか分からないハプニングにドキドキしてても仕方ないしね、それまでこの感覚を楽しんでてもきっと大丈夫。
『それでは、テスト走行開始します』
もっと鉄道アナウンスに似せてくるかと思ったけど、聞こえてくるアナウンスは結構普通。景色は当然の如く荒野だけど、遠くの方にはバッファロー型モンスターの群れが見えるからそこまでつまんなくはないかな。
「あ、駅弁食べる?」
「早すぎだっての、先ずはポテチとコーラだな」
「食べながらトランプでも如何?」
それならおしぼりを用意した方が良いかな。ポテチとコーラ、おしぼりを人数分用意すると、サクラもトランプを切り終わり配り始める。先ずはババ抜きだよね。
「勝った人にはバニラアイス上げる」
「最高だな、容赦しねーぞ」
「コンソメ味のポテチも用意して下さいな」
配られたカードから揃っているカードを抜いていくと、妙に二人の視線が此方に向いているのを感じた。もしかしてジョーカー持ってるのバレたかな? 顔には出てないはずだけど。
「耳と尻尾動きすぎだぞ?」
「五本の尻尾がうねうね動くのは、ちょっと怖いですわよ」
私はもうババ抜きで勝てないかもしれない。現実なら勝ち目はあるだろうけど、なんで私の尻尾と耳はこんなにも感情豊かになっちゃったんだろう?
結局手を抜いてくれた二人のお陰で、私もバニラアイスにありつく事が出来た。出すのは自分だけど、勝った人って言った手前普通に食べるのもなんか嫌だしね。
ポテチにバニラアイス、個人的には最高の組み合わせだけど、砕いてコーンフレークの代わりにしてパフェにしたら美味しいのかな? それを試そうと実際に創ってみた時、車内に車掌からのアナウンスが響き渡った。
『本日は大陸縦断鉄道にご乗車、ありがとうございます。おおっと、汽車が暴走した。皆さん気を付けてください』
「おわぁぁぁ!」
それは果てしなく棒読みだった。でも突っ込む余裕すらなく、急加速した汽車に背もたれに張り付けられたように動けなくなってしまった。目の前に座っていたヨーナの背中が、私めがけて飛んでくると言うおまけ付けで。そっちの方が怖くて声も上げれないよ!
「痛いよ、ヨーナ! っああ! パフェがぁ」
「くそっ、動けねぇ! 加速しすぎだろ!」
「これ罰ゲームですの?」
楽しみにしていたパフェはヨーナが私に向かって飛ばされる際、手が当たったようでサクラの顔面に向かって飛び、衝突。無残な姿になってしまった。ごめん、サクラ。私が創ったばっかりに。
『おおっと、レールがループしているぞぉ』
もう帰りたい。




