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97. 訓練での出会い

 隠れたところで成人向けのお楽しみ要素を発揮するこのゲームには驚きだけど、思い返せばカジノなんて成人万歳な所もあったもんね。ゲームタイトル通り、ホントに暮らしていけるんじゃないかと思っちゃうよ。


「武器と防具に関する質問も出たことですし、お得な戦闘訓練を紹介致しましょう」

「お得?」

「はい。スロットもセットも解放できるお得な戦闘訓練です」


 面倒臭い修行をしなくてすむなら確かにお得、でもデメリットもあるみたい。本来武器と防具、それぞれの称号が手に入る筈が、この戦闘訓練を受けるとそれ専用の称号一つになってしまうんだって。


「それはデメリットですの?」

「はい。実は称号には隠しステータスがあるんです」


 称号にはステータスをアップする物もある。私の【闇払う英雄】みたいなやつだね。サクラが言うには、基本的には特化型の人が取りやすい物みたいで掲示板にもよくあがってるみたい。

 でも、セリンが言うにはどんな称号でも隠しステータスとしてステータスアップの効果が備わっているそう。その存在を感じさせないために、ニーネーゼのモンスターは大抵弱く作っているみたい。 


「称号によってその効果は違いますから一概にデメリットととも言い難いですが、ちりも積もればとも言います」


 強制はしないけど、お得と感じるなら受けるのがお勧めみたい。私は受けようかな、高天原を使えば時間の問題はクリア出来るけど、その時間を他の事に使えばもっと強力な称号が手に入るかもしれないしね。


「皆さんご参加ですね。では、体育館へ参りましょうか」


 ヨーナはタケミカヅチの件もあるし、地道にやるかと思ったけどやっぱり面倒臭さが勝ったのかな? 他の皆は一芸特化みたいな所があるし、自分達の長所を生かす方を望むのかもね。サクラなんて武器を使うっていうより魔法メインだしね。


「ねぇスラミ、スライムの武器化ってどんな感じなの?」


 体育館への移動途中、ふと気になったことをスラミに聞いてみた。あのプルプニなスライムが武器になるって言うのがちょっと想像出来ないんだよね。ゴーレムを武器にしている私が言えた事じゃないかもしれないけど。


「アオイのゴーレムと同じ感じかな。ただ、どんな武器にしても弾性の効果が付くけどね」


 弾性って言うと、弾き飛ばしたりするのかな? ホームランバッターのスラミが誕生しちゃうのか。胸は熱くならないよ? 微笑ましい絵しか思い描けないし。


「ねぇ、セリン。念動力とかで操った武器にステータスが反映されるようにしたり出来ないの?」

「魔法を組めば出来ますよ」


 それ私に効果ある? 皆、なる程って顔でウィンドウ開きだしたけど、トヤマさんとスラミも念動力持ってたんだね。いや、それより私の事だよ。太極図でも同じ様な事出来るのかな。


「太極図は意識しなくても反映されるようになってますよ」


 ちょっと安心。でもそれってあの時のマスドライバーも反映されてたのかな? 数値が見えないから何とも言えないけど、それがリアルって事で諦めるしかないかな。検証するほど勤勉ではないのです。


 体育館に着くとセリンが入り口の扉に触れ、現れたウィンドウを操作し始めた。体育館には複数のサーバーがあって、それぞれ中身が違うみたい。その中の一つが今からやる戦闘訓練だね。


「既に使用中の方々がいらっしゃいますが、構いませんか?」


 流石に個人で使用なんて事は出来ないみたいだね。私も別にそこまで人見知りって訳でもないし大丈夫。皆も大丈夫みたい。

 ただ、トヤマさんが張り切って公共マナーについて話す辺りやっぱり教師なんだね。私達は愛され生徒な模様。


 セリンが開けてくれた扉を潜ると、そこは大小様々な岩が転がる荒野だった。所々に様々な武器が転がっていて、戦場跡って感じもしてちょっと物々しい。

 そんな場所で戦いを繰り広げている人達もいるから余計にだよね、十人くらいかな? 統一感の無い様々な防具を身にまとって、棒人間の頭が茄子になったモンスターと戦闘を繰り広げている。


 あっ、防具が変わった。重厚な兜と鎧を身に纏っていた人が、その場に刺さっていた槍を手に取ったら一瞬で水着姿の女性に変わっていた。鎧姿からは想像できなかっけど、そのグラマラスなスタイルにちょっと吃驚。


「見ていただいた様に、このフィールド内にある武器を手に持つと自動で防具が変わります」


 確かに武器と防具の機能解放にぴったりの訓練だね。注意点は自前の武器は使用できない事、達成目的はボウナスの百体討伐。此処では自由にログアウト出来、ログインしても此処に現れる様になってるそう。のんびり自分のペースでやれって事だね。


「それでは、各自自由に頑張ってください」


 セリンのその言葉に、とりあえず近くにあった刀を手に取ってみる。すると私の防具が甲冑姿に変わった。何時もみたいに身軽じゃないからちょっと勝手が違うかな。


「なんか変な感じ」

「動きにくそうだな」

「武器選びも肝心かもしれませんわね」


 私達がそんな確認をしている間にも、スラミは弓を手に取り毛皮を背負ったマタギのような格好で、トヤマさんは苦無を取り忍者のような格好でボウナスに向かって駆けていった。


「私達も行こっか」

「だな」

「槍がお勧めですわよ」


 サクラは水着で戦えっていうの? でも動きやすそうなんだよね。鎧なんかの動きにくそうなのが多いようならそれも選択肢かもしれない。


 刀を手に取り、甲冑姿でボウナスへ駆けて行くサクラとヨーナを見送り、近場で見つけた気になる武器の所までてくてく歩く。

 歩くだけでもボウナスが襲いかかってくるのは楽で良いよね。それに対して強くないのか一振りで消えてくれるし。


 私が気になっていた武器、それはモーニングスター。はぁ、やっぱり格好いい。このトゲトゲ感が良いよね。でもちょっとトゲトゲ過ぎな気がする。まるでウニみたい。


 鎧になったらちょっと嫌だなぁ、なんて思っていたからか、手にして変わった防具はひらひらした可愛いアイドル風な衣装。気分はスターだ! って意味なのかな? 胸元がシースルーっぽくなってるからちょっと恥ずかしい。  


 折角持ったんだからと、襲いかかるボウナスにフルスイングすればなかなか気持ちいい。これで弾性があったら本当にホームランが打てそう。


「噂のチート狐は撲殺アイドルだったのか?」


 後ろから聞こえた声に振り向いてみると、そこには褌姿のマッチョな人がいた。少し焼けた肌がジョンとはまた違う海の男感を出している。


「なんで褌?」

「いや、メリケン取ったらなっちまった。悪いなすぐ変えるよ」


 襲いかかるボウナスを殴り飛ばしながら、近くにあった斧を手に取り木こりのような格好になる男性。マッチョな割に動きが素早い、結構強い人なのかな?


「俺は開拓団ってギルドを率いてんだがな、お前さんを見込んで少し頼みがある」


 なかなか急な話しにちょっと戸惑う。とりあえずサクラに開拓団ってギルドについて聞いてみよう。


『サクラ、開拓団って知ってる?』

『ホッカイ領や第二大陸を開拓している集団ですわね。無料のホテルを建てたりってお人好しって話ですわ』


 それなら信用できそうかな。頼み事を断るほど野暮じゃないしね。でも開拓してる人からの頼みってどんな物なのかな? ホッカイ領の開拓は手伝おうかとも思ったことがあるし、そう言うのちょっとやってみたいな。


「私に出来ることなら頑張るよ!」

「あ、ああ、助かる。だが、その台詞はモーニングスターぶん回しながら言わん方が良いぞ?」


 敵が居るんだから仕方ないでしょうに。ノルマもあるから出来るだけ手を止めたくないしね。


 そんなモンスターの外見、弱さもあって殺伐にもなりきれない状況な為のんびり自己紹介。チート狐とは呼ばれ続けたくないしね。


 開拓団のマスター、ビルの頼み事は第二大陸に鉄道を造って欲しいと言う物だった。なんでも最近スベガに居る社員さんが大陸縦断鉄道がどうとかって五月蝿いらしい。


 うん、心当たりがある。確かそんなクエストメールが届いていた気がするもん。特に鉄道に興味は無いからタイトル見ただけでスルーしてたけど、社員さん以外にも頼まれたならやるしかないかな。


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