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アンリミテッドスピード(その3)

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 4月1日午後1時14分、大和やまとアスナと阿賀野菜月あがのなつきの言い争いが展開されている頃――。

「なるほど――そういう手はずだったのか」

 ボロボロのマントに提督服、眼帯と言う異色の提督である佐倉さくら提督は、谷塚駅と草加駅の間にある店前にいた。

何故、ここへ来たのかと言うと別の指示を受けた為と言う訳ではない。彼女の独断である。後に花江はなえ提督には確認を取っていたらしいが。

「貴様は――パルクール・サバイバーの提督!?」

 何かの計画を行おうとした黒服の男性が佐倉提督の存在に気付き、ARウェポンのハンドガンを構えるのだが、その引き金を引くよりも速く佐倉提督はビームチェーンアンカーを展開する。

アンカーがハンドガンを弾き飛ばすと、瞬時にハンドガンが消滅する。本物と思われたソレは、実際にはCGだったようだ。

ARウェポンである以上、CGではあるのは間違いなく、それを踏まえての行動だったのだが――黒服が相手だっただけに本物と言う可能性も否定できない状況である。

仮に本物だった場合は銃刀法違反で逮捕されるのは間違いないだろう。そういった事情があるだけにARウェポンで本物の重火器をデザインした武器を所持する事は禁止されていた。

「こちらとしても、タダ乗り便乗勢力を放置しておくと思うか?」

 佐倉提督は次々と時代劇の如く、襲い掛かってくる黒服を手持ちのビームサーベルで次々とみねうちにしていく。

これはARゲームとしてフィールド展開されている物であり、ARガジェットの軍事転用等に関するガイドラインには引っかからない。

「馬鹿な――既にARゲームフィールドが展開されていたと言うのか?」

 周囲の黒服も戸惑いを隠せないような表情をする。一体、何が起こったというのだろうか?


 佐倉提督は今回の黒服勢が襲撃してくる前、既にARゲームフィールドを展開していた。そのジャンルはFPSである。

黒服の勢力はシティフィールドのレースが開始されたと同時にレースを妨害しようと考えていたらしい。

そして、その襲撃の様子をインターネットで配信し、超有名アイドルの神コンテンツ化を妨害する勢力に対し、容赦のない制裁を加える計画を立てていた。

その計画は――まるで、メシウマ勢力等と同じような発想であり、正しい意味でのコンテンツ流通とは全く違う構図を生み出すとサバイバー運営は考えていたのである。

超有名アイドルを神コンテンツ化し、ありとあらゆる世界で超有名アイドルを絶対神とする構図――それはアカシックレコードでも何度が言及されており、それらの行動を起こすアイドル投資家や芸能事務所は――。


 午後1時15分、黒服の勢力を全て鎮圧した佐倉提督の前に、エクスシアが姿を見せた。

『これはお前がやったのか?』

 エクスシアの外見は、シティフィールドのレースに姿を見せた方とはデザインが異なり、こちらが本物と言うオーラを周囲に発している。

「だとしたら、どうするつもりだ?」

 佐倉提督の方は臨戦態勢は取らないが、エクスシアの方は右腕に固定されたソードユニットを構えていた。

『変な勘違いをされると困るが――こちらとしては黒服の勢力に話を聞きたかっただけだ』

「それがアイドル投資家と言う名の――新たなジャパニーズマフィアだとしたら?」

『その認識こそがディスコミュニケーションを生み出し、超有名アイドルとそれ以外のコンテンツで抗争が起こるようになった』

「ディスコミュニケーションに関しては否定しない。しかし、抗争を起こそうとしていると考えているのならば、それは間違いよ」

『人は誰でも間違いを起こす。その間違いを反省し――新たな道へ進む為の手段を取る事も出来るはずだった』

「超有名アイドルファンは、誰もが全ての世界を超有名アイドル一色で塗りつくし、その他の色を認めない。だからこそ、そう言った悪しき勢力を完全排除するべきだと」

 2人は戦うような気配は見せないのだが、周囲は2人を戦わせてまとめサイトに記事として載せ、アフィリエイトで一山当てようと言う考えである。

そうした勢力は、大抵が超有名アイドルのCDを1万枚以上買い占めてCDランキングを争うと言う勢力であり、アイドルのCDを株式と勘違いしているような投資家まがいの存在だ。


 2人の話をしている途中、何者かの放ったビームライフルのビームがエクスシアのメットをかすめ、AR画像の投影システム異常が起こる。

「今のタイミングで――誰だ?」

 エクスシアは投影システムが停止する寸前でビームライフルを撃った人物を特定し、そこに向かってソードビームライフルを撃つ。

そのビームは見事に命中し、相手のガジェットも機能を停止する。その犯人の正体は別のビジュアルバンドをプロデュースしている有名プロデューサーだったのだ。

「貴様――音楽業界を血で染める気か?」

 佐倉提督が血相を変え、プロデューサーのいる所まで瞬時に移動、そして――。

「奴の正体が――大手有名アイドルの事務所社長というネットのまとめサイトを見て、何としても見返したかった!」

 この人物は、その数分後に逮捕される事になった。

「――誰だ!? この人物に見覚えがないぞ!」

 プロデューサーの断末魔と言うべき一言、それは自分が想定していなかった人物がエクスシアの正体だった事への絶望感であふれていた。

彼の放った一発は、コンテンツ流通の中で行われるメシウマ勢等によるマネーゲームを加速させる可能性が高かったのである。

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