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パルクール・オブ・シティフィールド  作者: 桜崎あかり
ステージ1
9/95

エントリー前

>更新履歴

・2月10日午前1時46分付

誤植修正:8月→3月

###


 3月4日午前11時、蒼空そうくうナズナはエントリー受付の入っているビルへと入った。


 ビル内では既に数十人規模のエントリーを捌いているのだが、その光景は想像を絶している。


 上手く表現できる言葉は見当たらないが、このような対応をグッズ列の整理などで……という考えが思い浮かぶ。


 それ位、見習ってほしい対応をシティフィールドのスタッフは行っているのだ。


 一部の転売屋が商品を買い占め、大手オークションサイトへ流して利益を得て――その後は推しアイドルのCDを百万枚単位で購入し、CDランキングで1位になった事をつぶやきサイト等で自慢する。


 そうした超有名アイドルファンを、アカシックレコード上ではアイドル投資家と呼んでいる。超有名アイドルを株式に例えた勢力であり――吐き気を催す邪悪ともネット上では言及されているのだ。


「レースのエントリーをしたいのですが――」


 蒼空は受付の近くにいた男性に対し、エントリーについて尋ねる。他のスタッフは忙しそうだったので、彼の手が空いていると判断しての行動だ。


「レース? シティフィールドのエントリーか」


 身長は170位、細マッチョに見えるようなアスリート体格、服装はスポーツウェア、どう考えても運営とは異なる外見なのは明白だ。


 スタッフと思った理由の一つに、彼が身につけているインカムもあるのかもしれないが……。


「スタッフはインカムをしているようだったので、スタッフと思ったのですが」


 しかし、この人物がスタッフではないと気付いたのは彼が名乗る前に――。


桜野麗音さくらの・れいねだと?」


「あの天才アスリートもシティフィールドに参戦するのか?」


 周囲のマスコミは、別のスキャンダルを取材するはずが、予想外の人物を発見したと驚いている。


 桜野麗音さくらの・れいね、彼は指折り数えるほどのランカーと呼ばれる人種――。別の職種で言うとハンターとも例えられる人物なのだ。


 桜野は過去に重大な事件へ関わったとされ、それが解決後に蒸発、姿を消していたのだ。


 最近になってARゲーム関係で姿を見せるようになったのだが――彼が行っているのは超有名アイドルファンのハンティングだった。


「ここではマスコミが邪魔だ。別の場所へ移動しよう」


 桜野は蒼空の手を引っ張るかのようにして、別の場所へと向かった。


 途中でマスコミが追っかけてくるような様子がなかったのは、彼らが本来取材するはずのターゲットが発見出来たからだろう。



 午前11時10分、2人は2階にあるカフェコーナーへ到着し、そこで蒼空はチョコレートサンドとホットコーヒーをおごってもらっていた。


「あのマスコミは別のスキャンダルを追っていたはずなのに、どういう風の吹きまわしなのか」


 桜野は自分の事を覚えているマスコミはいないと考えて行動していたが、服装が裏目に出てしまったようだ。


「あなたは一体、何者ですか?」


 蒼空も彼が何者なのかは興味がある。知らない人物に付いて行く事は、色々な意味でも危ないのだが……。


 しかし、彼がARガジェットに登録されている事もあり、そこからのデータで危険人物ではないというのは調べられた。


「ARガジェットを持っているのであれば、話が早い――」


 コーヒーを1杯飲みほした所で、桜野が本題に入る。そして、彼は自分の経歴を話すのだが――どれもがARガジェットのデータやネット上で調べられる範囲だ。


「桜野と言えば、数年前の――」


 蒼空は何かの記述をタブレット端末で発見し、それについて尋ねようとしたのだが、その時には桜野がコーヒーのおかわりをする為に席を外していた。



 5分後、色々な話を桜野から聞くのだが、そのどれもが一般人にはどうでもいいような知識ばかりだ。


「連中はパルクールをテレビ局の宣伝材料か何かだと考えている。シティフィールドもサバイバーも――私物化出来るような物ではない事を、彼らは知らないはずはないのだが」


 桜野の言うサバイバーとは、同じパルクールを題材にしたARゲームだ。こちらは大型ユニットを使う等の違いが存在し、シティフィールドよりも有名にはなっている。


 ARゲームでパルクール自体、リズムゲームやトレーディングカードゲームと違って、発展途中と言えるのだが。


「私物化出来ない? 大手企業の買収が?」


「その通りだ。サバイバーも、その辺りの騒動に巻き込まれ、再生するのに半年はかかったという」


「大手企業の買収自体、ネガティブに考え過ぎな意見も――」


「それによって規制が多くなれば、全くの意味はない。コミックイベントで二次創作が盛り上がっている場所で、一次創作だけになったとしたら……?」


「人が圧倒的に少なくなる……ですか」


「そう言う事だ。下手に大手が介入し、それこそ修復不能なほどに改悪したら、それこそ終わりだ」


 話の方は10分ほど続いた。その間に、桜野はコーヒーを2回、それとは別にコーラも飲んでいたが。


「今位のタイミングなら、すぐに受け付けが出来るはずだ。お昼前はレースプログラム的な部分もあって、混雑しやすい」


 そう言い残すと、桜野はレジカウンターへ支払いに行く――ように見せかけて姿を消した。


 考えてみれば、ここは先払い方式だ。おごってもらったと言っても、500円にも満たないのだが。


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