アンリミテッドスピード(その2)
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4月1日午後1時12分、各プレイヤーが所定のラインに立つ。ポールポジションはあってないような物だが、その立ち位置にいるのは――黄金のARガジェットと言うプレイヤーだ。
「あの手のガジェットは――チートでなくても、別のネームドプレイヤーのかませ犬にされるのが目に見えている」
「黄金のガジェットと言えば、別のARゲームでは強いネームドだったが――アレは金メッキか?」
「超有名アイドルのプリントがされたARガジェットと言う――痛車ならぬ、痛ガジェットをやっている勢力もいたが」
「オチは見えたな」
「かませ犬の可能性は95%か」
周囲のギャラリーからは、あまり期待されていない声が上がる。黄金のガジェット使いは、別のARゲームであれば勝利フラグの可能性もあるが――。
黄金のガジェット使いの後ろ、2番目の位置にいたのは大和アスナである。
装備ガジェットは普段使う様な重装甲ではなく、軽装+アーマーと言う仕様だった。何故か、今回はアガートラームを使用していない。
アレを使用してしまうと、勝負にならないのが理由だが――それ以上に、シティフィールドではアガートラームが使えないというのもある。
「あれが大和アスナか――」
「あれほどの実力がありながら、何故にアスリートを目指さないのか?」
「アスリートで、あれほどの実力があれば金メダルは揺るがないだろう」
「国際大会に切り替えるべきでは?」
「どうして、ここまで小規模なARゲームにこだわる?」
周囲の声を気にする訳ではないのだが、大和としては――。
「私はアスリートをやる気はない! あくまでも――ARゲームランカーは、ゲーマーであって――プロではない」
大和は力強くアスリート転向を否定する。それだけではなく、ARゲームランカーにはプロアスリートの様な実力はないとも言及した。
「ARガジェットを用いれば国際大会の金メダルも量産可能と考えるのは――チートを持ちこむのと同じ! 陸上競技にARガジェットを持ち込めば、それ位の影響は出るだろう」
大和の発言を聞き、周囲も黙り込む。どうやら、彼女にとっての地雷を踏んでしまったという流れか。
「アスリートが手を出すドーピング、それに危険薬物――それらよりもARガジェットの方がリスクが少ないから、陸上競技に投入――そう言っているのと同じ理屈だ」
更に大和は、ARガジェットを国際大会等で投入する事は、ドーピング等を使用するのと変わりないとも言及した。
周囲の人物は薬物リスク等がない分、ARガジェットは秘密裏に投入できるとも言うのだが――。
「あくまでもARゲームはARゲーム内でルールが成立している。超有名アイドル勢が強引にコンテンツ支配をおこなっている方法と同じ事を――」
大和は他にも言及しようと考えるのだが、これ以上はまとめサイト勢に発言を改変される可能性があり、あえて途中で発言を区切るような事をした。