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アンリミテッドスピード(その1)

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 4月1日午後1時10分、運営の放送で自分のレースが近いと判断したのは、既にガジェットを装備して準備完了した蒼空そうくうナズナである。

「全ての準備は整った。後は――」

 蒼空はARバイザーを装着していない。バイザーで顔を隠すという方法もあるが、この場所で逆にバイザーのままだと怪しまれる可能性もあるだろうか。


 天気予報では雨と言う予報ではない為、この後のレースも予定通りに続行される。コースの整備に関しては一部エリアで遅れが出ているが、コースの変更で対処出来ると判断したようだ。

『第6レースに関しては、一部コースを変更して行います』

 今回のコース変更を受けて、別のレースへ変更希望のプレイヤーも出ているらしく、30人ほどの参加者が――10人以下に絞られていった。

最終的にはコースの変更のみで、5人まで減るとは予想外と言うべき状況になっている。

【ここまで減るとは予想外だ】

【コースとしては直線+カーブの様な構成なのに、どういう事だ?】

【ビルの間を飛び越えていくようなコースはないはずなのに】

【参加者を見れば――!?】

 あるつぶやきユーザーはエントリーされているプレイヤーの名前を見て驚いていた。

【エクスシア? まさか、あのARサバゲ等で猛威となったエクスシア?】

【さすがに、そのエクスシアとは違う。ガジェットの装備も微妙に違うし、カラーリングが違う】

【あのエクスシアだとしたら、棄権するプレイヤーが増えるのは分かるが――逆に、それは自分が芸能事務所関係者や超有名アイドルファンだと自白するに等しい】

【自白と言うのは言いすぎだが、コースの変更で距離が大変な事になっているから変更希望を出したプレイヤーもいる】

【どれくらいの距離が変わった?】

【2周ルールを1周に変更するレベルで距離が変わったらしい。3キロだ】

 これは、別の意味でも辞退するプレイヤーも増えるわけだ。


 2周ルールの場合、大体が2キロ×2周だったりするケースが多い。そうでなくても2周と1周では逆転のチャンスも減るというリスクがある。

シティフィールドの場合はエリアが設定されており、そのエリア外に出ると失格扱い――俗にいうコースアウトである。

それを踏まえると、今回の3キロと言うのは難易度が高いと言われる理由が分からないというアスリートやARゲーム初心者が多いのも――。

【半径3キロ以内のエリアで展開され、チェックポイントを通過、スタートとゴールは同じ場所――トラック競技風にすると、かなり厳しい設定か】

【確か、シティフィールドでは一定の距離を走らないと失格になるケースも存在するとか】

【その通りだ。それを踏まえると、今回のコース変更はプレイヤーにとっては試練になるだろう】

 半数近いプレイヤーが辞退したのは、超有名アイドル投資家と言う訳ではなく、コースの変更に伴う再セッティングが必要と考えての物と言うのが有力らしい。


 午後1時11分、谷塚駅近辺のアンテナショップ前に姿を見せたのは蒼空ナズナを含めて7名である。

「まさか、ここまで到達するとは予想外と言うべきか」

 背後から聞き覚えのある声がしたので振り返ると、そこにいたのはインナー+アーマーという装備のエッジのあるバイザーメットをした人物だ。

しかし、聞き覚えのある声なのだが――ボイスチェンジャーを使われたら、別人だと言う可能性もある。

「その声は――」

 蒼空は声の主に関して、あの人だと考えていた。そして、目の前の人物はバイザーメットを脱ぐのではなく、右腕のタブレット端末を操作する事でバイザー部分をオープンにする。

「人数は少ないが、モブに邪魔されたり超有名アイドルの宣伝と言う理由でレースを妨害されるよりは――若干マシと言うべきか」

 声の主、それは大和やまとアスナである。彼女も実はシティフィールドのランカーと言われるほどの実力者であるのだが、蒼空と同じレースに当たる事はなかった。

「あなたもシティフィールドのプレイヤーだったとは」

 蒼空も思わず驚くのだが、今更驚いても――という反応であり、すぐに慣れてしまった。


 大和が今まで蒼空とマッチングしなかったのには理由がいくつかある。それは参加していたエリアにもあった。

「今まで当たらなかったのは、こちらのレベルと蒼空のレベルが開き過ぎていたのもある――それを踏まえれば、短期間でレベルアップしたのは相当な事だろう」

 そして、最大の理由はレベルである。レベル1とレベル10が対戦を行えば、レベル1のプレイヤーがリアルチートでもない限りは、覆す事は不可能だ。

そうした事情を踏まえ、同レベル同士やレベルの幅が開かないマッチングを行うように調整されている。シティフィールドの場合は、レベル10と当たる為にはレベル7辺りまで挙げなければいけない。

「それを踏まえれば、あのエクスシアと言うプレイヤーが一番のブラックホースと言うべきか。ARサバゲ等のエクスシアとは別人なのは分かっているが」

 大和の方も準備がある為、所定のスタートラインにまで移動する。

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