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榛名対ビスマルク(その6.4)

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 4月1日午前11時57分、レースの方も佳境に差しかかっている。トップは榛名はるな・ヴァルキリーで、有名な上級ランカーがそれを追跡している状態だ。


 ビスマルクの姿は、この段階では確認できず、榛名の背後から200メートルほど離れた位置にいる。



 ―貴様は言ってはいけない事を口にしてしまった。お前は個人の善意でさえも超有名アイドルの宣伝材料と断言すると言うのか?―


 

 レースに集中するべきビスマルクだったが、唐突にあの時の発言を思い出していた。その発言とは、物の勢いで発言してしまった桜野麗音さくらの・れいねに対する物である。


「結局、あの時の発言が拡散される事はなかったようだが――今を思えば軽率だったと」


 あの発言を踏まえれば、榛名の事を言い返す事は出来ないと思われる。結局、同じ人種だったとネット上で叩かれてもおかしくはない。



 ―資格を持つ者が発言する事で、その言葉は重要な意味を持つ。資格を持たない人物がつぶやきサイト等でつぶやいても、タダ乗り勢力に悪用されるだけだ―



 榛名があの時に言った資格と言う単語、それにはいわゆる『超人』や『超能力者』、ましてや『異世界転生』やネット上でも話題になっている『俺TUEEEE』も含まれないだろう。


 それに加え、榛名は芸能人等のある程度知名度を持つような職業の人物でもないと言った。


 それを踏まえれば、あの時に言った『実況者』や『歌い手』、『踊り手』と言った単語が関係するのだろうか。


 しかし、榛名は歌手ではなく『歌い手』と言った。ダンサーやパフォーマーではなく『踊り手』と言った。


 あの場面で『歌い手』と言った理由、それはネット的な意味合いもあるのかもしれないだろう。おそらく、榛名の言う歌手とは超有名アイドルを指し示すのかもしれないが。


 それを踏まえれば、榛名は禅問答を避けるために意図的な発言を――と考える事も出来るかもしれない。それは、あくまでも可能性の話である。



 しかし、彼女はARゲームに革命を起こすと断言した。ARゲームのユーザー層を考えると、そのユーザー層に集中するであろうキーワードを――と言う可能性もあるだろう。


「超有名アイドルだけが勝利者だという世界は終わりを告げた。我々は、コンテンツ産業に新たな革命を起こす為に行動する――」


 ビスマルクは榛名があの時に宣言した事を小声で復唱する。


 榛名の言う超有名アイドルだけが勝利者の部分は、超有名アイドル商法や超有名アイドル以外のコンテンツを炎上させ、日本で唯一の神コンテンツと言える存在にする事で間違いはない。


 こちらに関してはネット上の考察記事等でも他の説が出ない程に一本化されている。


 しかし、新たな革命とは何だろうか――。


「コンテンツ業界を変えるような――既存のコンテンツをリバイバルさせる事、漫画やアニメ作品の実写化、パチンコやパチスロ分野への進出――それではありきたりすぎる」


 ビスマルクは新たな革命と言う単語に何か引っかかるものを感じつつも、マップに表示された最適化されているコースを突き進む。


 幸い、最適化されているコースにはビル等の建造物はなく、道路だけと言うコースを選択しているのだが――突然の自動車やバイク等に警戒する必要がある位で、特に危険性は高くないだろう。


「ARゲームのリアルドラマ――それもあり得ない。しかし、超有名アイドル商法を排除すると言うのであれば――?」


 考え事をしながら走っている訳ではないのだが、ビスマルクの目の前を別のプレイヤーが追い抜いて行く。


 その装備は軽装型アーマー、ブーメランに変形できそうな翼を装着したバックパック、シャープなデザインのARメット――パルクール・サバイバーで一時的にみられた装備に類似している。


 サバイバーの方では安全性の関係で危険と判定されたが、シティフィールドでは重装備のガジェットが逆効果と見るプレイヤーも多い。


 それを踏まえれば、目の前の人物のような軽装ガジェットに偏るのも納得出来る。重装備でジャンプ力が落ちたり、スピードが遅くなるわけではないが。


「そう簡単に――抜かせない!」


 ビスマルクはAガジェットの別システムを起動させ、ハイスピードモードへとガジェットを変形させた。


 エクスシアや一部のARアーマーでもみられた、いわゆる覚醒モードであり、これはチートに含まれない。



 同タイミング、ビスマルクのハイスピードモードを目撃し、次々とプレイヤーを抜き去る様子を見ていたのは――大和やまとアスナだった。


 今回のレースに関しては、特に収穫がないと考えていたりしたのだが、ビスマルクのハイスピードモードを見て驚きの声を上げる。


「アカシックレコードのフルアクセスとは異なるみたいだけど――」


 大和が考えていた事、それは別の人物が使用可能なフルアクセスと呼ばれる物だった。


 アカシックレコードのパワーを100%に近い状態で引き出せるモード、それがフルアクセスとネット上でも言われている。


 しかし、フルアクセスはもろ刃の剣――それこそまとめサイトの信者と化した強化人間を生み出す原因とも噂されているが、リスクに関しては99%以上がまとめサイト勢によるデマという認識だ。


 それでも、フルアクセスに耐えられるARガジェットも非常に少ない、検証できるような環境が少ないのもデマが拡散する原因なのは間違いない。


「とにかく、今回の一件は榛名一人だけの手にあまるのは――」


 ふとタブレット端末を立ち上げ、ブラウザでインターネットにアクセスしようとしたが、その前に謎のメッセージを端末が受信していた。


「これは、どういう事だ?」


 そのメッセージには八郎丸はちろうまる提督の正体と何かが記された文章、それに動画のアドレスが書かれていた。


 そして、大和が動画のアドレスをチェックすると、そこには――。

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