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榛名対ビスマルク(その5.9)

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 4月1日午前11時47分、アンテナショップに併設されたピットでARガジェットの修理を待っていた榛名はるな・ヴァルキリーだったが――。


「ここまで損傷が激しいとは想定外としか――」


 そこで男性スタッフから告げられたのは、ガジェットの修理に時間がかかるとの話だった。悠長に待っている余裕は、榛名にはないだろう。


 ガジェットの修理しているガレージへと案内された榛名とシヅキ=嶺華れいか=ウィンディーネは、目の前にあるガジェットの状態を見て驚いていた。


「ARガジェットの弱点を知っているとしか思えないようなピンポイント射撃――これは、明らかに機密情報が流出している証拠か」


 シヅキはガジェットの損傷個所を見て、相手が弱点をピンポイントで撃ちぬいている点に疑問を持っていた。


『機密情報の流出と言うよりは――別のARガジェットにおける弱点をそのまま利用されたという事か?』


 榛名はARガジェットの情報流出よりも、アカシックレコードに記載された別のARガジェットにおける考察記事等を利用されたと考える。


 確かに、シティフィールドで使用されているガジェットの機密情報を手に入れるよりも、こちらの方が難易度は低いだろう。


 それでも、それこそ1万以上は存在すると思われるARガジェットの情報からピンポイントで探るのも至難の業に違いない。


「汎用のARガジェットであれば、入手難易度を考慮して弱点を解析するのも可能でしょう。しかし、このガジェットはワンオフ――1点ものです」


 男性スタッフの発言を聞き、シヅキは何か引っかかるような物を感じた。


 榛名のARガジェットがワンオフであるのならば、類似したARガジェットやエクスシアが現れる理由が分からない。


 仮に機密情報の流出であれば、週刊誌やニュースで報道されるような規模やネットのまとめサイト等でも炎上するはずだ。


 そうした動きもネット上に存在しない以上、疑問はますます深まるばかりである。


「榛名――あのARガジェットはどこで手に入れた?」


 シヅキは疑問をぶつける事にした。榛名の使用しているARガジェットの入手ルートである。


『あのガジェットは偶然目撃した設計図をベースにした――カスタムガジェットだ』


 予想外の発言である。設計図とはアカシックレコードだろうが――汎用ガジェットの改造に関しては大きく制限されているはずだ。


「カスタムガジェット自体は合法的に認められている。しかし、それはアンテナショップ等のプロがカスタムする場合に限られるのは、知っているだろう」


『それはアンテナショップでも言及された以上、知らないとは言えない。実際、設計図とカスタマイズ用のパーツはアンテナショップに提供――』


 榛名の発言を聞いたシヅキは、何か引っかかるような部分も今の発言で外れたように思えた。


「なるほど。パーツに関しては違法パーツでなければ――問題はないという事か」


『しかし、それはARサバイバルゲームや一部ジャンルに限られる。パルクールに関しては把握していない』


「だが、警告は一切受けていない。違うか?」


『後出しジャンケンの様な物と分かっていたが、問題がないという事でそのまま使い続けた――そう言う事だ』


 話の方は続くのだが、それでも修理が完了するような流れにはなっていない。


 そんな中で、男性スタッフの一人が、別の場所から青色のコンテナを牽引車付きで引っ張ってきた。



 午前11時50分、男性スタッフがガジェットの在庫から発見した物、それは青色のコンテナである。


 その形状は長方形の物であり、SFアニメ等でも見かけるような外見をしていた。


 ただし、普通のコンテナと違い、このコンテナは強力なロックが施されているような形跡はない。厳密にはロックがされていたが、勝手に解除されたという解釈が正しいのかもしれない。


「実は、貴女のARガジェットですが――タブレット端末部分が生きていたので、代用品を探していたら、このコンテナのロックが勝手に――」


 スタッフが慌てているが、彼が言うには榛名のARガジェットのタブレット端末部分を、コンテナの中にあるARガジェットに移植すればすぐにレース復帰出来るとの事らしい。その形状は、北欧神話に出てくるようなデザインをしている。しかも――。


『レースに復帰できなければ、リタイヤも同然だ。すぐに行えるのであれば、行って欲しい』


「分かりました。急ぎで仕上げを――」


「ちょっと待て。損傷したARガジェットの修復は認められているが、全く別のガジェットを使用するのはルール違反なのでは?」


 パルクール・サバイバーではARガジェットの修復後復帰は認められている。その一方で、全く別の未登録ガジェットを投入するのは反則。


 シヅキとしては非常事態とはいえ、全く別のARガジェットを投入して反則判定で失格にならないのか――と心配をしていた。


『シティフィールドでは、ARガジェットの完全交換でなければ問題はない。修復不可能と判断されれば、失格にはなるが』


 今回に限っては、シヅキよりも榛名の方が上手のようだった。ARパルクールは数多くあれど、全てがルールを統一化している訳ではないらしい。


『ARガジェットのARアーマーは拡張現実の映像に過ぎない。損傷個所がARガジェットのコアパーツであれば、致命的だったが――』


 今までは素顔の見えなかった榛名のARガジェットのバイザー部分、それが若干ノイズ交じりではあるのだが素顔が若干見えるようになっていた。


 そして、それを見たシヅキは驚きのあまりに声を失った。


「榛名の正体は――あの人物だと言うのか」


 アカシックレコードにも世界線を生み出すきっかけになったとされる人物に関して、記述自体は存在する。


 しかし、その素顔は資料によっては全く明らかにはされていない。一部ではイメージ映像位はあるかもしれないが。


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