榛名対ビスマルク(その5.7)
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4月1日午前11時45分、八郎丸提督が榛名・ヴァルキリーを追跡しようとした矢先、思わぬ人物の足止めを受ける事になった。
その人物とは、花江提督である。彼はオレンジ色のARガジェット『スレイプニール』に乗り、ある目的の為に動いていたのだが――。
『これ以上の歴史を繰り返すようであれば――こちらも奥の手を使う!』
花江提督は、あるプログラムをアカシックレコードを通じて送信する。そのプログラムとはアカシックレコードを知る物にとっては、オーパーツと言うべき物だ。
「これ以上、お前達の思うようにはさせない! アカシックレコードの私物化――」
八郎丸が日本刀型のARウェポンをスレイプニールに向かって投げつける。
実際、八郎丸提督と花江提督の距離は5メートル以上離れており、近接戦闘が不利と考えての判断だが――。
『コンテンツの私物化を考えようとしたような勢力――超有名アイドルがコンテンツ展開をしようとする物に商標権、更には超有名アイドルが地球全土を都合よく征服できるような――』
「それはサバイバー運営が以前に起こした事件の焼き直しに過ぎないだろう!」
『確かにその通りだ。それは否定しない。しかし、それを黒歴史とする事や都合よく一部勢力を叩く為の炎上案件にするようなまとめブログ勢と同じにしてもらっては困る』
「理屈を――!」
八郎丸提督は、次にハンドガンで応戦するのだが、その銃弾は花江提督のスレイプニールに命中する事無く消滅した。
その原因として、スレイプニールが拡散している粒子に秘密があるようだが。
『――ARゲームに関して言えば、あの当時に限れば素人同然だったのかもしれない。だからこそ、見えた物もある』
「今になって批評家の様な事を言うか!」
『最初からARゲームに精通しているというのは――ある意味でのチートに該当する。知識チートと言うべきか――』
「今の日本には超有名アイドルの様な100%無敵のチートコンテンツが必要なのだ――まとめサイトにも、そう明言されている!」
2人の対話が続く中、突如としてビームの閃光が八郎丸提督のARウェポンの一つを消滅させた。
その光の放たれた方角を花江提督がモニターで確認すると、そこに姿を見せていたのはビスマルクだったのである。
午前11時46分、ビスマルク肩アーマーの主砲で攻撃をしていたのだが――。
「気でも狂ったか? ARシティフィールドでバトル解禁がされていない状況でのARウェポンの行使は――!?」
八郎丸提督は、ようやく自分が犯したミスに気が付いた。
『このフィールドはシティフィールドのテリトリーではない。ARウェポンが使用出来た段階で気づくべきだったな』
そして、花江提督が右腕の装備をパイルバンカーに換装、その一撃は八郎丸提督を吹き飛ばす。
吹き飛ばされた八郎丸提督は気絶し、アキバガーディアンへと引き渡される事になる。
「花江提督――あなたは何者?」
『ビスマルク、今のお前に話した所で――レースの展開に水を差すだけだろう』
ビスマルクは花江提督を呼び止めて話を聞こうとしたのだが、その時には姿がなかった。
「今ならば、先頭グループにも――」
そして、ビスマルクは走り続ける。先頭グループに何とか追い付く為に。