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榛名対ビスマルク(その3)

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 4月1日午前11時37分、草加駅から少し離れた交差点では右矢印の書かれた電光掲示板タイプの看板が置かれている。


 この看板はシティフィールドプレイヤー向けの看板であり、この先はコース外を意味していた。


 しかし、シティフィールドやパルクール・サバイバーではARガジェットの方でも、変更されたマップが自動更新されるはず。


 それでも、一般自動車やバイク等のARゲームに関して無関係の市民向けに電光掲示板タイプの看板も用意されているのだ。


「これでもARゲームに興味がない市民向けに配慮していると言うのに――反ARゲーム勢力は何を狙うのか?」


 掲示板を設置していた男性スタッフの一人がつぶやく。彼は遊戯都市奏歌ゆうぎとし・そうかの所属であり、ARゲームの運営サイドではない。


 反ARゲーム勢力は、ぶっちゃければARゲームのアンチ勢力である。


 彼らは超有名アイドルコンテンツが唯一神と断言している勢力であり、芸能事務所からの裏金で活動しているらしい。そう、アカシックレコードには書かれている。


 この記述を断言出来る理由は色々とあるが――アカシックレコードには与党と絡んでいる、超有名アイドルのCDを大量に購入してCDランキングを水増しする等の断片的な情報しか存在しない。


 断片的な記述しかないという事、それはアカシックレコードが万能の予言書ではないという証拠でもあり、意図的に悪意を持った編集者が記述を改ざんしているとも言える。


 遊戯都市奏歌のスタッフ、ARゲーム運営、その他の一部勢力でもアカシックレコードの名称は知っていたとしても、それが正確に何かを説明出来る人物は少ない。



 同刻、看板の目の前を通過し、その看板をぶち破る勢いで突進してきたのは先頭グループのプレイヤーだ。


 さすがに看板を破壊すれば、建造物損傷と同じでペナルティが与えられる。それを知っていて、数メートル程でブレーキをかけ、直角に曲がるようにして矢印の方角へと走って行った。


 先頭グループに続くのは、軽装ガジェットを装備していた女性プレイヤーだ。彼女はシティフィールドでは初参戦だが、他のパルクール系ARゲームには複数参加している。


 ただし、サバイバーで彼女の姿を見た者はいないと言う。その為か、エントリーネームはアンノウンと表示され、各メンバーのARガジェットに表示された順位表でも同表記になっている。


「あのアンノウン――動きに見覚えがあるように思える」


 アンノウンの背後、順位としては8位に該当する位置にいたのは、榛名はるな・ヴァルキリーだ。


 彼女の装備はアンノウンよりも重装備と言える。それでも、五十歩百歩と言われるのは間違いない。


 本来の意味で軽装備と言うのは、衝撃吸収用のインナージャケットにARメットのみという1ミスが命取りと言う縛りプレイ――そちらの方を指すと言っても過言ではないだろう。


 その為、アンノウンの様な脚部と腕のアーマー、ARメット、ブレストアーマー位では標準装備に近いと識者は言うだろう。



 同刻、榛名のグループに遅れるような位置にいたのはビスマルクだった。距離としては榛名以上の距離を走っているかもしれない。


 実際に距離部門ではビスマルクがトップであり、タイム部門では大きく遅れている。


 シティフィールドは距離とタイムで獲得したスコアの合計を争うルールが基本であり、フライングやコースアウト等のペナルティがなければ、特に順位が大きく影響する事はない。


「――バトルルールが適用されていない事で、完走を目指して進むプレイヤーが多いのは救われたと言うべきか」


 バトルルールが適用されていた場合、バトルによる撃墜数スコアも影響する為、速攻でゴールしないと標的にされる可能性が高い。


「しかし、先頭グループの事故を考慮して迂回した結果が――これか」


 ビスマルクとしては先頭グループの接触事故に巻き込まれないように距離を取っていたのだが、次第に迂回ルートを通るようになり、気が付くと後方グループである。


 事故に巻き込まれ、リタイヤになる方が逆に痛手となる。


 ARガジェットの軽い損傷であれば影響はないかもしれないが、中破クラスとなると運営判断でストップがかかる可能性が高い。


 バトル系では中破や大破と言う状態は日常茶飯事だが、レース系やエクストリームスポーツ系は大破になると競技によっては選手生命が絶たれる可能性もないとは――。


 そうした事を考慮し、ARパルクールでは大破ガジェットでのレース続行は不能となっている。


「下手にスピードを上げて先頭グループとの接触になっては、元も子もないか――」


 ビスマルクは慎重にレースを進める一方、他のプレイヤーは積極的にスピードを上げるプレイヤーもいた。

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