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榛名対ビスマルク(その2)

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 4月1日午前11時35分、シティフィールドの第3レースは予想外の展開を迎えようとしていた。


 何と、先頭グループを走っていたプレイヤーがコースアウトでリタイヤとなったのである。


 これには周囲のギャラリーも驚きの声を上げていたのだが、これがシティフィールドの日常茶飯事とも。


 現在、事故が発生したエリアでは車両通行止めとなっているが、レースの方は続行である。


 他のARゲームでもコースアウトの事故ガジェットの回収を行いつつ、コースを変更してレース続行と言う対応は行われている実例はあるのだが――。


 その様子は、競艇で転覆失格したボートを回収しつつ、それを避ける形で他の選手はレースを続行――という具合だ。


「ARゲームで大事故が起きない――それは、結局夢物語なのか?」


「何事にも絶対という物はない。それを踏まえれば、サバイバーで起きた事件も起きるべくして起きたと言うべきだ」


「100%事故は起きない――それをPRに使うのも炎上する理由を作る事になる。その為、ARゲームのメーカー側が膨張表現などを禁止した」


「それは過去にも何度か言及されていた。それを踏まえると、結局は事故が起きてしまうと言う事の――」


 先頭グループのクラッシュを目撃していたのは、提督服姿の花江はなえ提督と阿賀野菜月あがの・なつきである。


 しかし、阿賀野に関してはARゲームのアバター投影を応用したCG映像である。いわゆるフェイク画像と言う物に該当する技術だ。


 実際、阿賀野に関しては途中から別行動をとっている。花江提督も本来であればレースの観戦をしている余裕はないはずだが。


「サバイバーで発生した事故はパルクールとフリーランニングの境界線を理解していなかった――それが原因と聞く」


「パルクールとフリーランニングは、元々が同じ物を指している。過剰に分ける傾向になったのは、アクロバットのようなパフォーマンスを行う団体の仕業だろう」


「結局、必要以上に隔離を行おうとしている一部ファンが――コンテンツ流通を駄目にするのか」


「歴史は繰り返される。その原因は分かっているはずなのに、何度も同じ原因でネット炎上を起こし、超有名アイドルコンテンツが唯一神と一部ファンが主張する――」


「そうした連中を別の単語で表現するまでもない。彼らは、コンテンツクラッシャーとも言うべき存在になった」


「花江、お前はアンチとか厨という単語を意図的に避けたがる傾向がある。その単語に、何を思っている?」


 2人の対話が続く中、阿賀野は花江提督にある疑問を投げかけた。


 それは花江提督が別の造語を作り、意図的にアンチや厨等に代表される単語を使わないこと。その表現を避けるのは、一部の特殊ランカーや別勢力も同じ。


 疑問を投げられた花江提督は、しばらく考える。そして、彼の目の前を後方の位置で苦戦するビスマルクが通過――。


 ビスマルクの武装は、仕様的にエクスシアに類似するような装備をしていたが、エクスシアが複数もいるわけがない。そう、花江提督は考えていた。


「特に理由はないと思う。その言葉が頻繁に使われる内に価値が下がり、安売り化しているのが――。敢えて理由を作るのであれば、そうなるだろう」


 ビスマルクの後ろにも逆転を狙うプレイヤーがいた。どうやら、リタイヤしたのは先頭グループの一人だけのようである。



 午前11時36分、実況の太田さんにも事故の状況が届く。それによると、事故の原因はお決まりの物と言う訳でもないらしい。


『先頭グループで発生したクラッシュですが、これはトップ争いによって発生した物ではないようです』


 この実況を聞き、周囲のギャラリーで動揺する人物が出始めていた。


 トップ争いの末にバトル突入というケースもシティフィールドでは存在し、バトル禁止ルールの時に監視の目が届かない所でバトルを行う例もある。


 それが極まった一例では、別のARゲームから腕利きのハンター等を雇い、物理襲撃、狙撃、事故に偽装というケースまである位だ。


 こうした行為に対し、ARゲーム運営も黙って見ている訳ではなく、リアルマネーの取引に応じない等の警告も行っているのだが――目立つような成果が上がっていないのが現実。


『周囲にスナイパー、ハンター等を確認はしていませんが――観戦をしている皆様は、十分に周囲の警戒を行うようにしてください』


 下手に煽るような事をすれば、せっかくのレースが中止になる可能性もある。それを踏まえて、観客には落ち着いて見て欲しいと太田さんは呼び掛けた。


 それに加え、つぶやきサイト等でネット炎上を誘導するような発言を投稿しないようにも呼び掛けた。



 同刻、草加駅近くにある別のアンテナショップで近辺ではARサバゲ―が展開されていた。


「こちらに有名プレイヤーを引き寄せるはずが、裏目に出たのか――」


 ロボットアニメに出てきそうな重装備ガジェットを装備し、ガトリングガンを発砲していたのは北条ほうじょう提督及び八郎丸はちろうまる提督の指示を受けた部隊だ。


 彼らの目的は周囲のかく乱、超有名アイドル勢力をおびき寄せる事――メインとしては、この2つだ。


 しかし、有名プレイヤーをおびき寄せて作戦を遂行させやすくするはずが、八郎丸提督が呼びだしたプレイヤーのレベル的な意味もあり、経験値目当ての初心者狩り等に利用されている。


 初心者狩りをおこなうプレイヤーは、チートガジェットを使うプレイヤーに対抗する為、レベルを上げて物理で殴る的な流れで経験値稼ぎをしているのだろう。


 こうした行為に関してはARゲームでは禁止行為にはなっていないのだが、ジャンルによってはモラルやマナー的な観点で禁止やペナルティを追加するARゲームも存在している。


 特に対戦格闘やシューティングでは顕著、イースポーツ化されているようなジャンルでも八百長やマッチポンプ的な部分で歓迎はされていない。


「このままでは、逆に――」


 北条提督が何かを言おうとした矢先、蒼い光と共にフルアーマー状態のARガジェット使いが現れる。


 その姿を見て、エクスシアの本物と分かったギャラリーは少ない。エクスシアがARサバゲ―に参加していない、あるいはプレイを始めたばかりというのも理由の一つだが。


『やっぱり――この連中は何かを狙っている』


 エクスシアは相手の行動パターンを読み、ピンポイントにソードビットを展開、即座に乱入してくるプレイヤーを撃破していく。


『それに、遊戯都市で大きな事件が起こるのは――これで確定したと言えるかもしれない』


 エクスシアの懸念、それはアカシックレコードの記述変化とも関係する出来事であった。



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